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降りてもいい?

やっぱり途中で降りるべきだったよ。見慣れた場所はとうの昔に通り過ぎていて、もう随分と遠いところまで来てしまった。だけど、大きな看板を掲げて、旗を振りながらここまで乗ってきたのだから、今更降りれるわけもないよね。そもそもこれは何?何に乗っているんだっけ?気球?電車?ボート?自転車?馬?象?この乗り物が動いているということは分かるのだけど、前なのか後ろなのか上なのか下なのか、どこに進んでいるのかが分からない。たまに起こる唐突な揺れを除けば乗り心地はまあ悪くないし、ここからの眺めも気に入っている。だけど、不意にこの乗り物から飛び降りたくなる時がある。どこか怖いところに着く前に早く降りてしまいたいと思う。しかし、そう思いながらも本当は私にはこの乗り物を降りる勇気がないということも知っている。降りる勇気がないから、今までもずっとここに乗っていたんでしょ。降りるタイミングは沢山あったけれど、少しだけ身を乗り出してみてはすぐに席に戻って、ということを繰り返して乗り過ごしてきたんだったっけ。だから、今回もこのまま乗り過ごそうよ。怖いところが終点にならない様にずっとここに乗っていたらいいんだよ。降りたくなったら前みたいに身を乗り出してみたらいいよ。そしたら席に戻りたくなるから。身を乗り出してみたら、ここは私が降りれる場所じゃないって気がつくはずだよ。大丈夫、この乗り物に乗り続けることができたら一番勇敢な奴になれるはずだよ。よし、乗り続けると決まったら話は早い。早速、衝撃に備えて沢山のふわふわと温かいご飯と猫を用意しよう。ふわふわと温かいご飯と猫でバリケードを作り、どこが怖い場所なのか分からなくなるぐらいに楽しい場所にしようよ。じゃあ、とりあえず私は黒猫の赤ちゃん探してくるわ!!


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