見出し画像

97/* 発音と快楽についての話

僕は生まれつき皮膚が弱く、夏は汗で、冬は乾燥で、とにかく一年中体がかゆい。にも関わらず、病院がとにもかくにも苦手だから、必死にかゆさを我慢して、市販の薬でごまかしてしまい続けることが多い。とはいえ、ごまかしきれずに、市販の薬ではどうにもならなくなってしまうことが何度かあり、今日も悪化しきった体で病院に行ってきた。

たまに行くと、医者というのは本当にありがたいなあ、と思う。薬のんだらすぐ治るよ、と薬を処方してもらうだけで、確かに痒さが治った気さえしてくるんだから。さて、早速もらってきた薬を飲もうかな、と袋を開けて手に取ってみると、奇妙な法則に気が付いた。

エピナスチン
エバスチン
サルコルチン

見事にすべて、「チン」で終わるではないか。化学物質の命名規則なのかなんなのか。知っている方がいれば、真相を教えていただきたい。言われてみると、薬の名前には「ほにゃらら」みたいな「ン」で終わるものが多い気もしてくる。気になって「薬 ネーミング」で調べてみると、出てきたのは小林製薬の秀逸ネーミング集。

のどぬ〜るとか、ナイシトールとか、アイボンとか、熱さまシートとか、虫コナーズとか、全部小林製薬だったのか。CMみながら、ナイシトールとかダジャレやん、と半分笑っていたけれど、確かに記憶に残る名前ばっかり。商品コンセプトもさることながら、ネーミングセンスも抜群ですなあ。

僕も最近、自分のユニットを立ち上げて、JumokunoJu(じゅもくのじゅ)という名前をつけた。かわいい名前ですね〜とか、ん?どこまでが名前?とか、自分が名乗った名前で会話が生まれるというのは、とても嬉しい体験だ。

一度口に出したものは、人間意外と忘れない。加えて、言葉として発音する、というのは思った以上に発散能力があると思っていて、気持ちの良い語感を発音するという一種の快感を、人はどこかで求めているような気がする。

「良い言葉」の賞味期限はとても長くて、たくさんの人に口にされればされるほど、輝きを増すことだってある。作られては捨てられ、本来の役割を全うできないまま葬られてしまうことだってある消費社会のなかでは、そういった言葉の存在はとても稀有なものだ。

サポートいただく度に、声をあげて喜びます。