「あざす」と「あざます」|500文字のエッセイ
「あざす」と「あざます」。どちらも、「ありがとうございます」を略したものだけど、どちらも違う。
「あざす」とは先輩にいいづらいけど、「あざます」なら仲のいい先輩になら許されそう。「ま」が入っているかいないかで、なんとなく雰囲気はちがう。
「ま」に、目上の人への敬意が含まれているのかと思いきや、「あざま」だけだとこれも失礼極まりないように感じるから、そうではないのだろう。
いやそもそも、「あざます」も充分失礼だと言われたらそこまでなのだけれども、そこはなんとかのんでいただいて、おつきあいいただきたい。
平田オリザが出演するイベントに行ったとき、2人のお客さんが「あれ」だけで会話をするワークショップが行われた。
あれ?
あれ。
あれ、、、
あれ〜
発する言葉はぜんぶ「あれ」なのに、語気やニュアンスを変えるだけでなんだか意味を含んだ気がして、なんとなく会話をしているように聴こえるのか不思議だった。
言葉は器のようだ。細長いものもあれば平たいものもある。言葉によって姿形はちがうけれど、それ以上に、中に何を入れるかによって表情が大きく変わる。
悪意を込めれば毒にもなるし、真心をこめれば愛にもなるのだ。
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