汗かくように呼吸しにいけ | 500文字のエッセイ
当たり前になれすぎると、人はどんどんと怠惰になる。文明の進行は華々しいものだけど、その裏で払拭された以前の当たり前は、良いも悪いも、何か大きなものをいっしょに抱き合わせていたようにおもう。
特別が当然に変わる瞬間は、ひょんなタイミングで唐突にやってくる。
例えばそれは、羊水の中で育っていた胎児が急に呼吸をさせられるように、避けようもない唐突さをもってやってくる。
あれほど大きな産声をあげなければできなかった呼吸は、気付けば出来て当たり前、大人になれば音を立てることすら恥ずかしいことだという印象を押し付けられている。
呼吸することが当たり前になるような、唐突な文明開化はそう簡単に訪れまいと思うかもしれないが、案外身近なスパンで生活は刷新され、人は慣れてゆく。
最近の若い奴は、とはじまるはなしに僕は興味ないけれど、たしかに、知識や興味にたいする貪欲さは圧倒的なスピードで衰えているんだろうなと感じてしまう。
屋根によじ登ってラジオを聴いていた世代と、手元の薄っぺらい端末一つで世界の音楽をいつでも聴ける世代とでは、仕方ないのかもしれないが。
それでもなんとなく、文明が進むよりもう少し遅い速度で、汗をかくように息をする時代がやってくるのではないかとかんがえている。
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