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推しがあまりにも眩しすぎる

皆さんは『ウマ娘プリティーダービー』を知っているだろうか? ウマ娘とは過去の競走馬が美少女となってそれぞれの夢に駆ける、アニメやゲーム、漫画などで展開されているマルチアニメコンテンツで、いわゆる擬人化ものの一つだ。自分は昨年の五月ごろ、アニメ視聴をきっかけにどっぷりとその沼に浸かっている。推しはトウカイテイオーだ。

天真爛漫、傲慢不遜で天才肌のボクっ娘。中等部で、無敗の三冠ウマ娘・シンボリルドルフに憧れ、誰よりも歓声を浴びるため走るウマ娘だ。自分がこの娘を好きになったきっかけは先述したアニメ視聴がきっかけだった。
テイオーは無敗の三冠を掴むという夢があると先ほど述べたが、テイオーはそのうち二つを順調に勝ち取り、いざ最後の一つを取りに行かんとした矢先、怪我に見舞われてしまう。結果、無敗の三冠ウマ娘になることができなかった。それでもなお自分は無敗のウマ娘であろうとライバル・メジロマックイーンと対決するも敗北。再び怪我を負い走る理由を無くしてしまった。だがチームの励まし、マックイーンの宣戦布告により再びテイオーは走る理由を得た。その矢先、三度目の骨折。ついにテイオーはメンタルブレイク。もう走ることを辞めようと思った。だが、ツインターボというウマ娘が死に物狂いで走る姿と、再びレースで走ることが困難になるほどの怪我を負ったマックイーンのため再度復活を誓う。そして怪我前最後のレースから1年、一着などほぼ不可能、走り切れればいいと誰しもが思ったレースでテイオーは一着。奇跡の復活を遂げたのだった。

自分は泣いた。オンオンと泣いた。何度も何度も心と骨を折られながら再起するその姿に涙が止まらなかった。展開は読めていたはずなのに、泣いてしまった。とても感動した。そして同時に抱いたものは、自分が失ってしまったものへの憧れと疑問だった。


自分は、好きな子がいた。その子と同じ高校に行きたかった。そのためにゲームを制限して好きだったデュエマも塾に預け、必死に勉強した。塾から配られたタブレット端末も勉強の邪魔と封印した。結果学力はもう十分合格レベルに達していた。
だが、愛知県の受験システムに全てをダメにされた。愛知県は内申、通信簿の成績が受験に直結する仕組みで、自分は器用な方ではなかったので家庭科や技術のような科目では平均以上に通信簿は稼ぐ見込みはなかったため国語や英語のような主要科目でしか稼ぐしかなかった。その中でも英語は社会と並ぶ稼ぎ頭で、5段階中5を取ることは必須だった。しかも学校は地元で一番の進学校。ライバルは強く、それに人数も多かった。一学期はつまづき5段階中4だったものの、二学期は盛り返し5を取ることができた。三学期も学年300人弱のうち30〜50位の間。それも地元の進学校に入学するメンツが多い学校でだ。通信簿を下げられる要因である課題の未提出もない。これはいけると確信していた。だが、ついた内申は「4」。
泣いた。学校でも号泣したし、人を避けるようにして帰ったその後も泣いた。何故だ。ちゃんとした成績を残したのにどうしてこうなったのか?わからなかった。塾の先生に見せても「意味がわからない」と言っていた。そしてその4をつけた先生に聞いても満足いく回答は得られなかった。それ以来か、自分の悔しいという気持ちは、受験の反動でどハマりしたゲーム以外で感じられなくなった。赤点になろうとも、部活の試合で負けても、第一志望の大学に落ちても、悔しいと思ったことはあっただろうか。どうせ自分はこんなものだ。諦観と挑戦を拒むクソッタレた心だけが残った。何のために生きているのかわからない、夢も希望もなくぼんやりと無力感と共に生きているのが自分だ。

それに対してテイオーは三度の骨折に無敗の夢まで敗れてどうしてそこまで強く気高くいれるのか?確かにマックイーンというライバルがいて、周りの人に励まされ、本人の資質もあったことは考慮に入れなければならない。だが、それ込みにしても並の中学生のメンタルで耐え切れるものではない。一回挫折するだけでもこんなに辛いのに、なのに、どうして、どうしてそんな走れるのか?前を向けるのか?そんなに眩しいのか? 自分にはわからなかった。だがキャラソンを聴き、もう一度アニメを見てその理由がわかった。テイオーは、無敗の三冠という夢を無敗のウマ娘、そしてマックイーンに勝つという形に変えていった。「夢は形を変えてゆく」テイオーは仲間たちに支えられながら諦めることなく新たな夢を描いた。だが、自分はそれができなかった。教育委員会に入って復讐してやるという野望があったがそれもすぐに消えていった。そして高校では荒れに荒れ、毎日のように親には叱られ、そして逃げるように福岡の大学に進学した。そこが「天才」と「凡人」の差なのだろう。
自分の好きなウマ娘の特徴に共通するものがある。それは泥臭さだ。あまりに困難で認められずとも前を向き前身するウマ娘。自分はそういう娘があまりに熱くてカッコよくて美しいと思えて仕方ないのだが、もしかすると、自分が青春時代に落としたあの情熱を、不屈の心を彼女たちに見出しているのかもしれない。

ああ、眩しい。あの天才ウマ娘が、テイオーが、推しがあまりにも眩し過ぎて眩し過ぎて、目が焼けてしまいそうだ。

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