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メンバーを募集する前に脚本を完成させよう―井二かけるのアニメ創作論(2)

アニメ「こうしす!」企画・脚本・監督・雑用係の井二かけるです。

アニメ「こうしす!」は、情報セキュリティ啓発コメディアニメとして2014年から作品を公開してきました。シリーズ累計で47万再生を記録しています。

「こうしす!」はオープンソース方式で制作している作品です。この制作ノウハウが、これから自主アニメを作る皆様方のお役に立てれば……ということで、書いてみたいと思います。

今回のテーマは、ずばり「メンバーを集める前にやるべき事」です。

内容が決まる前にメンバーが集まり過ぎちゃった! その大失敗の記録

筆者はアニメ「こうしす!」以前に、別のアニメ企画に参加していました。disることが目的ではありませんので、ここでは、N企画と呼ぶことにしましょう。

N企画は、「とある動画サイトのユーザー有志でアニメを作ろう」という趣旨で始まった企画です。正確な数字は把握していないのですが、その企画の参加者はピーク時で100人近くいたのではないかと思います。自主アニメのプロジェクトでは人集めに苦労することが多いということを考えると、非常に順調な滑り出しと思われました。

しかし、最大の問題は、何を作るかすら決まっていなかったことです。みな「アニメを作りたい」という点では一致していましたが、それ以外の意見はバラバラでした。その結果、意見は衝突し、炎上し、そのあまりにも酷い状況に企画者自身が匙を投げて去ってしまったほどでした。脚本やコンテが完成するまでに1年4ヶ月近くを要し、いざ作画開始という頃には実質的に2~3人しか残っていませんでした。

結局、残ったメンバーや復帰したメンバーそして新規参加者の執念により、企画開始から5年後に作品を完成することができましたが、次の作品を生み出す気力は誰にも残っていませんでした。

教訓としては、内容が決まる前にメンバーを集めてしまうのは百害あって一利なしということです。いや、一利ぐらいはあるかな。こうして今も筆者はアニメを作っているわけですし。でも、せっかくアニメを作るなら、楽しく作りたいよね、ということです。

何を作るかを明確にして募集するのが大切!

前回も書きましたが、自分が最高に楽しめるものを作るというのが大前提となります。もちろん、リーダーだけが楽しめるだけでなく、メンバーも楽しめるものでなければなりません。

募集する時点で、楽しみの方向性が全然異なる人が集まってしまえば、N企画のように意見の衝突は避けられません。意見の衝突を楽しみたいという方も中にはおられますが、通常は作品を作ることが目的なのですから、基本的には意見がある程度一致しているほうが望ましいでしょう。スムーズに進行できれば、それだけモチベーションを維持しやすくなります。

最初に何を作るかを明確に示して募集するということは、意見が全く異なる人が参加してお互いに不幸になる事を避ける為に最低限必要なことと考えています。

オススメは企画書と脚本を作ってから募集すること

ゼロから作品を作るメンバーを集めるとき、筆者は企画書と脚本を作るのが最低ラインだと思っています。続編を作る時も、募集するときにはやはり脚本ぐらいはあったほうが良いでしょう。

想像してみてください。商業的な作品の場合、出資者が「この作品は売れる。売れないリスクを負ってもこれに賭けたい。せめて○○が達成できればトントン」などと考えて作品に投資します。

自主アニメの場合は収益が第一目的ではありませんが、基本は同じです。すべてのメンバーに「この作品は面白い。世間にウケないリスクを負ってもこれに賭けたい。せめて自分が楽しめたらトントン」と思った上で参加して貰えることが重要です。

商業作品の場合はお金の問題のため失敗しても後から取り返しがつきますが、自主アニメの場合はまともな対価もなく人生の中の貴重な1、2年という時間を費やすことになるわけですから、そういう意味では、商業作品以上にシビアです。シビアな判断になるからこそ、リスクを含め判断材料を提示するということが大切です。

ちなみに、機会があれば詳しく述べたいと思いますが、自主アニメの代表的なリスクは以下のようなものです。

完成できない (長期化 or 自然消滅)
・作っていて面白くない
・視聴者にウケない

最もリスクが高いのが完成できないということです。そのほかの点もリスクとしては避けたいものです。

どこまでリスクがあり、どこまでリスクを受け入れた上で参加するのか——その判断材料となるのが企画書と脚本です。

企画書=ワクワク感があるかどうかを判断する材料
脚本=完遂能力、実現性、物語の面白さを確認する材料

企画書を読めば以下の点がだいたい把握できます。

・面白そうかどうか
・作風
・ジャンル
・画風(キャラ原案があれば)

脚本を読めば以下の点がだいたい把握できます。

実際に成果物を完成する能力があるかどうか
・作品が実現可能な規模感かどうか
 (作品時間、アクションシーンの分量等)
・実際に物語として面白いかどうか
・実際に自分が見たい場面があるかどうか

完成した脚本を提示できるということは、少なくとも成果物を作りきる能力を証明することになります。もちろん絵が描けなくても、演技ができなくても構わないのですが、少なくとも何かを完成できるという証明にはなるからです。(実際、筆者もアニメ作画はほぼできない。作画に参加してはいますが)

その中でも脚本というのはストーリーの設計図ですから、物語性のある作品であれば、その作品の価値を見極める良い材料となります。

余談になりますが、募集側としても、企画書と脚本まで作って募集するというのはバランスが取れているのです。もし企画書と脚本を提示して全然メンバーが集まらなければ、そこで撤退しても労力が惜しくないからです。なぜなら、コンテとか予告編とかまで作ってしまうと、筆者の場合は心情的に撤退できなくなってしまうからです(参考:サンクコスト)。

もちろん、最後まで少人数で作り続けるという選択肢が残るのも自主アニメの醍醐味ではあるのですが。

脚本なんて作れないよ!

もし、あなたに脚本を執筆する筆力がなければ、だいたいのプロットを書いて、クラウドワークスとかココナラとかで脚本を外注しても良いと思います。それも含めて能力です。

でも、せっかく脚本を作るなら、自分で書いてみたいですよね。ということで、アイデアの出し方や、脚本の作り方について、次回以降、紹介していきたいと思います。

えらそーに書いてますが、もちろん発展途上のノウハウです。もし良い情報があればぜひ教えてください!

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