見出し画像

百年リネンに恋するスモック【フレンチアンティーク】

そうだ、十九世紀末の服を着よう。

なんて壮大な思いつきを叶えてくれるのがこちら。
19世紀末~20世紀初頭に着られていたシャンブルリネンのスモックになります。
当時のフランス人の野良着。農耕作業用の洋服ですね。

シャンブルとはヘンプリネン・大麻のことで、
分厚いぎっしり感と、ムラのある表情が特徴。

この年代の洋服はホームスパン(手織り)の素朴さも魅力です。
スモックだけでなくナイトドレスに使われている事もありますね。

細かく見ていきますが、まず生地そのものの迫力がすごいです。
これだけ野性味の溢れる表情をしながら、歩けばぷるぷる弾力よく揺れる。
いや、ぷるぷるどころか、どぅるんどぅるん。
古いフランスのリネンならではの魅力です。

たっぷりとした布の分量が贅沢です。
また古いフレンチスモックの特徴としてこのピンタックが挙げられます。
この背中にたくさん寄せられた、小さなギャザーですね。

袖にも。
これでもかというくらいびっしりと、細かなタックが入っています。
しかも一つ一つ手作業。なんという手間でしょうか・・・

このぎゅっと寄せられたディテールにより、生地の迫力がより強調される。
それと共に、アンティークリネン特有の揺らぎもより表情豊かになります。

ボタンは一部ミルクガラス。
古い洋服に見られるミルクガラスは、とろけるような色味が素敵です。
見るとなにか、目が合い、見つめ合っているような錯覚さえ覚えます。
やさしい雰囲気です。

フレンチ古着ファンにはたまらない赤刺繍。
持ち主のイニシャルが縫われていることが多いようですね。

百年前、フランス農家のB・Cさんのために縫われた服が、
こうして21世紀の東京のワンルームにトリップしているのです。
よくよく考えると、なんて壮大なお買い物体験でしょうか。

こちらも古いフランスらしいディテールの、
やや小ぶりな襟。
上品さとかわいらしさが魅力です。アンティークの雰囲気をより強調してくれますね。

大きく開いたスリットは動きやすく作業するための工夫ですが、
現代ではファッション的ディテールとして一役買ってくれます。

スリットだけでなく、全体として動きやすい作りが目立ちます。
そもそもが労働着としての機能性を追及しているので、着心地は良いです。
安心感のあるフィットという表現が、私の中ではしっくりきます。

ずーっと欲しかったのですが、肩幅が狭すぎたり、袖丈が短すぎたりと、
なかなかマイサイズに出会えない。
こちらの一着はまさに求めていたバランス。スモックらしい程よいゆとりで着られます。
お店で袖を通した瞬間、即決でした。

一般的にアンティーク服は値段が高いものが多いですが、
こちらのシャンブルリネンスモックはまだまだ手の届きやすい価格帯。
20000円前後から、状態やサイズによっては10000円以下で手に入れることが出来ます。
メルカリなどの個人取引でしたら極端にお安く出される方もたまに見かけます。

ちなみに私は代官山のヴィンテージショップにて、13500円ほどでお譲り頂きました。

https://youtu.be/h78kaev_RtQ

あーたまらん。愛着が湧きやみません。

むろん、フレンチアンティークの王道であるインディゴリネンスモックやマキニョンコートの魅力は言わずもがなです。
が、いかんせん高い。
簡単には手が出しづらく、手に入らないことには魅力も伝わりづらいかと思います。

こちらのシャンブルリネンのものは比較的手の届きやすい価格帯にて、
アンティーク服の魅力を体感することが出来るでしょう。
そしてもちろん、長く長く愛用する一着としても、素敵なパートナーです。

古い物であればあるほど、ダメージやリペア、素材の部分使いなど個体差が大きいものです。
ボタンの種類、襟のかたち、レースなどの装飾、縫製やサイズ・・・
それもまた古着の魅力。自分だけの一着を探してみてください。

あー本当に好き。伝われ、この魅力!

イカサ

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?