dustbox「Farley」リリースにあたり、日本語歌詞の軌跡をまとめてみる

dustboxが2018年12月にシングル「Farley」をリリースした。
今作はライブ会場及びメルカリのみの販売となり徐々にファンの手に届いているが、これまでの作品と明らかに異なる点がある。表題曲「1.Farley」にて日本語の歌詞が歌われたことだ。
ここ10年以上にわたる活動で、日本語歌詞の曲は一部を除き(後述)存在しなかった。しかし、今作ではサビが日本語で歌われ、また歌詞カードにも日本語で記載されている。
ひとつの転換点を迎えたこのタイミングで、dustboxと日本語歌詞の軌跡を記録する。

dustboxは2001年9月に初音源であるMini Album『Promise you』、また2002年8月にはFull Album『Sound A Bell Named Hope』をFLYING HIGHよりリリースしている。『Promise you』では収録4曲とも英語詞、また『Sound A Bell Named Hope』でも12曲中10曲が英語詞で歌われている。この時点で、彼らは原則英語の歌詞を歌うバンドだった。

その後、2003年に東芝EMIよりメジャーデビューする。6月にはMini Album『Sign To The Sun』、また9月にはMajor 1st Album『everlasting…』をリリースする。『Sign To The Sun』では収録5曲中4曲が日本語歌詞、また『everlasting…』では「01.overture」「12.outro」のインストゥルメンタルを除いた収録10曲のうち6曲が日本語歌詞となり、インディーズ時代から変化が起こっている。

『Sign To The Sun』はオリコン初登場197位(Wikipedia参照)であり、商業的な成功には結びつかなかったようだ。また、当時のことをSUGA(Vo&Gt)は下記のように語っている。

Suga「メジャーのスタッフはバンドを世間に浸透させるために必死でこのバンドはこういうバンドだっていうのを作り上げようとするんだけど、そんなの自分では分かんないんですよね。口で言えないっていう。ただやりたいことをやってるだけだから」
出典:ぴあ関西版WEB(2012年11月30日)
http://kansai.pia.co.jp/interview/music/2012-11/tonarinobandman.html

メジャーのスタッフとの間で、自分たちがやりたいことを共有できなかったことが伺える。

結果、彼らはインディーズに再び戻ることを選び、翌年の2004年10月にMini Album『triangle』をリリースする。この作品は、JOJI(Ba&Vo)いわく「渾身中の渾身の音源」(※1)であり、挫折を経て改めて自分たちがやりたい音楽を突き詰めた作品であると言える。

(※1)出典:激ロック インタビュー(2016年2月9日)
https://gekirock.com/interview/2016/02/dustbox_3.php

本作では再び全曲が英語詞となっている。

その後、2005年5月のMini Album『Mr.keating』から、2013年7月のFull Album『Care Package』に至るまで合計7枚のアルバム・ミニアルバムがリリースされているが、これらもすべて英語詞で歌われている。(※2)

ライブにおいて『triangle』より前の作品を演奏することは少ないものの、『Promise you』収録の「1. Promise you」は『Care Package』で「 11. Promise You -2013-」として再録され、ツアーを中心に演奏された。また『Promise you』収録の「3. Up to Myself」は歌詞を一部変えて『triangle』に「4. All up to me」として再録され、こちらはライブでも人気の曲となっている。
その他、『Sound A Bell Named Hope』収録曲でも「9.September」は演奏されることがある。(本曲は、「dustbox 15th Anniversary 単独公演 - Here Comes A Miracle -」(2014年7月)でも演奏された。)

しかし、メジャー期間中のリリース作品に収録された曲が演奏されることはなくなった。したがって、彼らが日本語歌詞を歌う機会もなくなった。

変化が現れたのは、2016年2月のMini Album『skyrocket』である。YU-KI(Dr.)加入後の初音源となった本作品に収録された2曲で、彼らにとって久々の日本語歌詞が現れる
「1. Rise Above」では「もう破裂寸前だマイヘッド」という一節が、また「4. Reflection」では、下記の通り、より明確に文章となって歌われる。

4. Reflection(lyrics:SUGA)
煌めく月のリフレクション 夢に重なる頃
流した涙も 思い出に変わり 輝くだろう

ただし、両曲とも歌詞カードにはローマ字表記となっている。

なお、「4. Reflection」は2016年7月に開催された10-FEET主催のフェス「京都大作戦」でも演奏された。
この曲はツアーでは演奏されたものの京都大作戦を除く他のフェスで演奏された記録を見つけることができず、貴重な演奏だったと言える。

翌年の2017年、10-FEETのTAKUMA(Vo./Gt.)がTwitterで下記の言葉をつぶやく。

タクマ 10-FEET
いつか京都大作戦でdustboxの日本語の新曲が聴きたいに一票。
2017年5月29日

これに対して、SUGAは下記の通りコメントしている。(数回に分けて投稿されたが、ここではひとつにまとめた。)

SUGA dustbox
そういえば初めて作ったオリジナル曲から英語だったな〜。
洋楽ばかり聴いてたから自然とそうなったんだろうけど、日本語を乗せる方が何故か難しかった(笑)
1stアルバムから日本語曲はあったけど、メジャー行くタイミングで無理に増やして、そこからやりたいことがわからなくなって頭を抱えることになった。もう10何年も前の話。
それから一度自分のやりたいことにしっかり向き合うためにインディーズに戻り、triangleを作った。
これが良かった。
あの時無理をして納得できないまま続けていたら、今はなかったと思う。
でもメジャーでの経験はとても勉強になったし、色んなことを自分達で決めていかなきゃいけないことに気づけたんだ。
だからあの頃は辛かったけど、今では若い頃に経験できたメジャーでの苦悩に感謝してる。
くそー!ばかやろー!って気持ちも爆発しそうなくらいだったから、反骨的精神でやってこれたのかもね 笑
2017年6月23日

なお、同年の京都大作戦では、dustboxのライブ中に10-FEETの3名をステージ上に座らせ、大作戦全回参加の感謝の言葉を伝えた後に10-FEETの「ヒトリセカイ」(日本語歌詞)を演奏している。(この模様は『Farley』のトレイラー映像でも確認できる。)

そして本作の「1.Farley」にてサビが日本語で歌われ、また歌詞カードにも日本語で表記されるようになった。TAKUMAとのやり取り、あるいは京都大作戦での演奏がきっかけになったのだろうか、あるいは他の理由があったのだろうか。理由は本人たちから語られるだろう。ファンのひとりとしては、このチャレンジを心から喜びたい。合わせて、2019年に発売予定とアナウンスされたニューアルバムで他の日本語歌詞の曲が含まれるかどうかも楽しみだ。

(※2)『Care Package』収録の「13. Want A Kanojo」は除きました(^^)

記載に誤りがある場合はご指摘いただけると幸いです。

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