「青の帰り道」と青い服ばかり買う私

私のクローゼットはなんだか青いです。
気が付くといつも青色の洋服ばかりを買ってしまいます。

よく考えると青は不思議な色だと思います。
ピンクはやさしくてかわいくてちょっとはかなげな色とか、黄色は元気をもらえるしゃきっとした色とか色にはまとっているイメージがあります。

で、青はというと、もちろん濃淡によってイメージは変わりますが、色々な意味をまとっています。
サムシングブルー
花嫁が結婚式でどこかにブルーのものを身につけると幸せになれると言われています。
花嫁の清らかさと誠実な愛情を表すための色ということらしいです。
一方でマリッジブルーやマタニティブルーという言葉もあって、
これは基本的に気分が不安定だったり、しずんでいる時に使われます。

さらに「まだまだ青いな」、という時は未熟者という意味になり、「青春(アオハル)」というと、そこに淡い切なさや眩しさが加わります。(と、多少私の個人的な見解も含みつつ勝手ながら分析…)


先日、藤井道人監督の映画『青の帰り道』を観ました。
「群馬の田舎町で高校生活を共にした7人の若者たちの青春群像劇」
と一言で片づけてしまうのはあまりに乱暴すぎて、見終わった後、数日間、言葉で想いを綴ることができませんでした。

キラキラとまぶしいのにどこか危なっかしくて不安定。
冒頭の屋上のシーンがその象徴のように思えます。
抜けるような青い空と、みずみずしい稲穂が続くまぶしい一本道。
それを校舎の屋上でカメラのファインダーをのぞきながら見下ろしている少女の後ろ姿。
彼女は空を飛べそうでもあり、一方でそのまま墜落してしまうのではないかという危うさもあり、その後の映画の展開を予感させました。


直後の「帰り道」をゆく若者たちのシーンは一言で言うととても騒がしいです。
描かれる7人が常にハイテンションで、声が高くて、耳にキンキン響いてきます。
仲間たちとの世界が生活のすべてで、活力とみずみずしさに満ち溢れている。それが懐かしくもあり羨ましくもあり、そして随分昔にその時代を卒業した私にとっては、ちょっとした拒絶反応もあるくらいでした。

でもその後、社会人になったそれぞれの若者が歩む道は、眩しくもなければ騒がしくもありませんでした。
冒頭のシーンの胸騒ぎが次々に確信に変わっていきます。それはもう悲しいくらいに。


夢を追いかけて東京で歌手を目指すカナ(真野恵里菜)はレコード会社のオトナに出会ったところから、自分が目指すものと社会が求めるものとのギャップに直面します。
カナと共に上京したキリ(清水くるみ)もカメラマンになる夢を叶えられないまま足踏み状態。街で偶然出会う長身の男性の登場にも、なぜかステキなラブストーリーの始まりではなく、胸騒ぎと不安を掻き立てられます。

でも、彼らよりとっくにオトナになっている立場から
「そんなに世の中甘くないんだよなぁ」とか
「友だちにそんなに絶大な信頼をおいてもいつか裏切られるんだよなぁ」とか
「そんな簡単に人を信用しちゃいけないのよ」
と、スクリーンの中の一人一人に教えてあげたい!とは一ミリも思いませんでした。

だって、その時の彼らには信じていてほしいのです。
純粋にまっすぐに想えば自分の想いは社会に通じるのだ と。
一瞬裏切ったり、ケンカしたりすることがあっても、掛け値なしの時代に培った友人関係は永遠だ と。
ちゃんと生きてれば同じように信念を抱いた人が自然と集まってくるはずだ と。
そして 
世の中そんなに悪いもんじゃない と。


どうしてそう思うのか?


それはきっと、
過去の自分を否定することでもあるからです。

この映画を否定することは自分の人生を否定すること なのだ
私はそう思いました。

オトナになってあきらめたり、人や未来を信じられなくなったりした経験はある。でも、もしタイムマシーンがあって過去に戻れたとしても、その事実を過去の自分に知らせたいとはやっぱり思えない。
たとえ知らせても「そんなことあるわけない!」 と全力で否定してほしい、とすら思ってしまいます。

あの時の純粋さや頑なな想いがあったからこそ今の自分の人生があると信じたいというか。。

異例の再上映。異例の満席続き。この映画が多くの人の共感を呼び、ロングヒットになっているのはきっと私と同じ想いを感じている方がいるからなのだと勝手に納得したりして…。

私が青い服ばかりを買うのはずっと私が「青」にあこがれを抱いているせいなのかもしれません。その感覚は「過去の青い自分」へのあこがれと同意義なのかも、とも思います。

きちんとしていて、冷静で落ち着いていて、誠実で、目立ち過ぎない謙虚な色。そしてネガティブもポジティブもないまぜにした多面的なイメージを併せ持つ人間らしい色。

明日は青いワンピースで会社に行こうと思います。
謙虚に。真面目に。そしていつまでも青いままで働いていたいです。

アイスクリップ


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