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ファクトチェック団体のほとんどは日本のアニメ制作下請会社より零細?

Poynter Instituteが2024年4月3日に、「State of the Fact-Checkers Report」https://www.poynter.org/wp-content/uploads/2024/04/State-of-Fact-Checkers-2023.pdf )を公開した。


●概要

この調査はPoynter Instituteのファクトチェックの国際組織IFCNによるもので、69カ国、137団体が対象となっている。137組織というのはファクトチェック団体の80%だ。非営利団体が過半数を占めている。

「State of the Fact-Checkers Report」(Poynter Institute、 https://www.poynter.org/wp-content/uploads/2024/04/State-of-Fact-Checkers-2023.pdf )

冒頭で下記を今年の注目点としてあげている。
・最も重要な課題は、運営を維持し、財政的持続可能性を 成するための資金を調達
・回答した団体の大多数は支援ツールとしてAIを利用
・ファクトチェッカーの大多数は、ファクトチェック業務が原因の嫌がらせに直面

フルタイムの職員の数が10人以下の団体が68%で、もっとも多かったのは5人以下である。パートタイムでも5人以下がもっとも多く、次に多かったのは0。小規模であることがわかる。

「State of the Fact-Checkers Report」(Poynter Institute、 https://www.poynter.org/wp-content/uploads/2024/04/State-of-Fact-Checkers-2023.pdf )
「State of the Fact-Checkers Report」(Poynter Institute、 https://www.poynter.org/wp-content/uploads/2024/04/State-of-Fact-Checkers-2023.pdf )

嫌がらせや脅威については72%が体験しており、17%が訴訟を起こされている。

「State of the Fact-Checkers Report」(Poynter Institute、 https://www.poynter.org/wp-content/uploads/2024/04/State-of-Fact-Checkers-2023.pdf )

最大の課題は「金」で、圧倒的多数の83.7%。

「State of the Fact-Checkers Report」(Poynter Institute、 https://www.poynter.org/wp-content/uploads/2024/04/State-of-Fact-Checkers-2023.pdf )

年間予算はおよそ7,600万円以下が74%、1,500万円以下は37.96%だった。収入源はMetaと助成金が多数を占めた。

「State of the Fact-Checkers Report」(Poynter Institute、 https://www.poynter.org/wp-content/uploads/2024/04/State-of-Fact-Checkers-2023.pdf )
「State of the Fact-Checkers Report」(Poynter Institute、 https://www.poynter.org/wp-content/uploads/2024/04/State-of-Fact-Checkers-2023.pdf )

もっとも偽情報のリスクの高いプラットフォームではXがだんとつのトップだった。

「State of the Fact-Checkers Report」(Poynter Institute、 https://www.poynter.org/wp-content/uploads/2024/04/State-of-Fact-Checkers-2023.pdf )

●感想

非営利団体とはいえ、訴訟や身の危険を感じるような業務なのに、組織の零細ぶりがすごい。日本の下請アニメ制作会社よりも少人数の組織だ。予算規模も個人商店より小さい。
収入源をMetaが多くを占めているのも気になる。

この実態を考えると日本ファクトチェックセンターっていうのはすごいと思う。収支報告書https://drive.google.com/file/d/1Iu2W_bSQKFb7SbCB2IPUeleFUQmvlpTg/view?ref=factcheckcenter.jp )によると、初年度(期間:2022年10月1日~2023年3月31日、半年間)の収入は約1億2千万円で、支出は約3千6百万円。使ったお金はそんなに多くなかった。しかも、事務局運営費が約2千万円だから実質の予算は1千6百万円くらいで今回のレポートの実態と変わらない。事務所の家賃とかが多いのかな?
いずれにしても海外の実態から見るとすごく余裕がある。この余裕を生かしてASEANにファクトチェックネットワークを作ってほしい。残ってる予算をばらまくだけで、ASEANにおいてMetaに次ぐファクトチェック支援組織になれる。資金提供の代わりに各国からレポートを提出してもらって、それを年刊にまとめて世界の中でのASEANの情報環境の特殊性、共通性をあぶりだせるかも。単純かつ効果的で即効性ありそう。
ただ、気になるのはGoogle.orgから150万ドルと書いてある( https://www.factcheckcenter.jp/jfc-funding/ )のに収支報告書には約1億2千万円になっている。これだと1ドル100円未満なんだけど、そんなはずはないので差額はどこにいったんだろう?

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