ネット世論操作定番本企画 チャート化してみた

ネット世論操作定番本を考えるに当たって下図のような整理をしてみました。「フェイクニュース<>サイバー空間」、「情報環境<>社会環境」の2つの軸を設定し(どちらの場合も後者の方が広い範囲を扱っています)、書籍や組織を布置しました。ネット世論操作の定番本はやはり右上の象限で民主主義に関するものになると思います。
この部分はそこそこ書籍はあるのですが、個別の事例、事件の紹介を羅列して、そこから結論に持っていくものがほとんどで、体系的な整理を行っているものはなさそうなので体系的にまとめられるとよさそうです。
また、民主主義とニュースの関係では「真実の裁定者」問題などいくつかの問題を取り上げることが必須だと思うのですが、それを取り上げている本は見た限り拙著以外ありません。ここも深掘りしたいのですが、おそらくみんな関心ないから扱っていないのでしょうね。
右下の象限はいわゆるメディア論で私のカバーしていない領域です。社会環境からニュースについて分析するというのはほとんどやったことがない。ここを含めるかどうかでだいぶ構成が変わってきそうです。「Atlas of AI」はAIをメディアに置き換えも同じアプローチが取れそうな気がします。研究サプライチェーンと同様にメディア・サプライチェーンも存在しそう。特にSNSプラットフォームやポータルサイトにはありそう。メディアを構成するリソースに遡って整理すると違うものが見えてきそうです。

黒字は書籍名、茶色は象限の説明、青色は組織名となっています。便宜上、「宣言」は青色にしました。
それぞれの詳しい内容は下記リンクからご参照ください。ぱっと思い出せたものを載せていますので、取り上げるべき本を失念している可能性もあると思います。

現在、起きていることはハラリの言うところの「物語」あるいは世界観、パラダイムといったものの変化だと思います。もし、そうなら渦中にあってどちらかの「物語」に帰依している者には起きていることの一部しか見えていないことになりそうです。
「幻想の「サイバー・パールハーバー」と戦い、負け続けたアメリカの30年」に書いたようにアメリカにはそれが見えていなかったし、「ビッグデータ統計は、中立や客観性を保証せず、しばしば偏りを生む」に書いたように一部のビッグデータを扱う人が自分自身が置かれている研究サプライチェーンについて自覚がなさそうなこともそうです。メタなアプローチをとらないと新旧を見比べることはできないはず。「見えていない」ものを見えるようにするのも定番本でやるべきことかもしれません。
ただ、おそらくそれは右下の象限=社会環境からニュースについて考えることになるのでしょう。なぜなら社会環境によって異なる「物語」をメタな視点で整理することなので、おのずと「物語」によって異なる「事実」を扱うニュースの話題になるからです。


●書籍(順不同)アマゾンへのリンクを貼っています
フェイクニュースの生態系
フェイクニュースを科学する: 拡散するデマ、陰謀論、プロパガンダのしくみ
ニュースの未来
デジタル・ポピュリズム 操作される世論と民主主義
操られる民主主義: デジタル・テクノロジーはいかにして社会を破壊するか
AI vs.民主主義 高度化する世論操作の深層
監視資本主義:人類の未来を賭けた闘い
情報戦争を生き抜く 武器としてのメディアリテラシー
フェイクニュース 新しい戦略的戦争兵器
フェイクと憎悪:歪むメディアと民主主義
The Reality Game: How the Next Wave of Technology Will Break the Truth
The Perfect Weapon: war, sabotage, and fear in the cyber age(邦題:世界の覇権が一気に変わる サイバー完全兵器)
共同提言「健全な言論プラットフォームに向けて ―デジタル・ダイエット宣言 ver.1.0」

●組織
DemTech(https://demtech.oii.ox.ac.uk)
DFRLab(https://medium.com/dfrlab)
NATO StratCom(https://stratcomcoe.org)
NATO CCDCOE(https://ccdcoe.org)
East Stratcom Task Force(https://euvsdisinfo.eu)
IFCN(https://www.poynter.org/ifcn/)
FIJ(https://fij.info)


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