「先生～私、今度の冬休み、自動車学校に通おうと思ってます＾＾」

　「またか。。」以前、私が勤めていた韓国の大学に、短期留学で来韓していた日本人学生たちの言葉。韓国の自動車学校に通うというのだ。いったいこれまで何人からこの言葉を聞いただろう。その度に心配になり、瞬間緊張してしまう。

　韓国の自動車学校は、日本に比べて受講費がとても安い。そして韓国の免許証があれば、日本にて日本の運転免許証を発行してくれるらしい。（以前は、実技試験を受けていましたが、今は書類を準備すれば可能なようです。）こういう事情があり、最近の「しっかり」世代の学生らは、韓国にて自動車学校に通う選択を考慮するわけである。まあ、それも大学以外での外部の世界にて、実践韓国語が学べるという良い機会だとも言えるだろう。しかし、私は基本的に反対のスタンスであった。

　その理由とは？？

１．韓国は、日本とは左右逆で、左ハンドルの右側通行である。

２．日本と韓国とでは、交通ルールが違う。

３．韓国人の運転マナーは総じて日本に比べると良くないため、事故の可能性が高い。

　３について。ここ韓国にて、運転生活15年ほどの私。日本にも一定数、マナーの悪いドライバーがいることは知っているうえで比べると、その比率が多いと体感している。

　韓国の自動車学校では、安全確認の指導について日本ほど厳格ではないようだ。実際に通ったことはないから、断定はできない。しかし、安全確認をしなければならないところで怠る韓国人ドライバーの多いこと、多いこと。

　そんな事情で、街中における軽い接触事故は韓国あるある風景のひとつである。不幸中の幸いと言えるか、大きな事故に至ることは少ないが。だからか、事故が起きてしまっても、人身事故でなければ、韓国人は冷静に対処する。その場ですぐに車を止め、保険会社の人に連絡する。待つ間、動かせない車を避ける車の交通誘導を行う。すると、ものすごい速さで担当者が現れ、少し遅れてレッカー車も到着。街中の交通要所にて、事故の連絡を待つレッカー車の姿はごくごく普通のこと。それが普通になってしまった私も、きっと感覚が麻痺しているにちがいない（笑）。

　こんな軽い接触事故で終われば良い。しかし韓国では、実際にこんな文句が書かれたステッカーを車の後ろ窓の貼り付けているの車をよく見かける。

子供を先に救出してください。男の子はA型、女の子はO型です。

　速度の出る高速道路においても、「速く速く」を良しとする韓国人の運転癖というものは相変わらずだ。まさに命がけ。スピルバーグ監督の名作「激突」を思い起こさせる。自分に合ったスピードを維持したいのに、速度を落とせばあおられる。走行と追い越し車線の概念も存在しないようだ。どちらも同じような速度を出す車たちがゲーム感覚で、ひょいひょい車線を変えながら走行している恐ろしさ。

　だからか、大事故を想定した上で、家族の命を守るため大型の高級車を選ぶ人が多いのは理解できる。だが、万が一のために子供の血液型まで貼り付けるという事実には驚愕してしまった。

　私が日本にて免許をとったのは20うん年前のこと。鏡や椅子の調節から死角ポイントの確認の仕方まで徹底され、「こういう場所は、こんな危険性があるから注意しろ」と隣で何度も何度も言い聞かせる教官。私の担当は特に厳しく、仮免もなかなかとらせてくれなかった。結局10回オーバーし高い授業料に上乗せで、その当時の学生にとっては痛恨の５万円を支払った。

　しかし、今では、あの厳しくしてくれた教官にとても感謝している。徹底された安全確認は体に染みついており、ありがたいことに大きい事故は免れている。三つ子の魂ではないが、初めに習い体得したものというのは、無意識な動きとしてカラダに刷り込まれ、一生ものになるようだ。

　こういうことを身に染みて感じていた私。冒頭で触れた、韓国の自動車学校に通うという日本人学生達には「日本で通いなさい」と強く忠告したいのだが、彼らの事情も分からないわけではなかった。

　私が学生だった頃はバブルはじける直前だったこともあり、親のすねかじり生活は、まあ当たり前のことだった。しかし今は違うようだ。ネットの記事や、直接学生の話を聞いていると、経済的に余裕がない家庭は思っているより多く、実際に学費について悩んでいる人も見てきた。ある学生は、学費を稼ぐために休学し、男性を相手とする「何とかカフェ」（思い出せない）でバイトしているんだという話も聞いた。

　個人的に「しっかり」世代などと気軽に呼びはしているのものの、学生もしっかりしなければ、学校に通えないそんな社会になったのか、日本は。と思うと、彼らに申し訳なさを感じる。そんな思いとともに、この歳になると、何か次世代のためにできないか、私が社会貢献できることはないか考える。これまで、外国で好き勝手生きてきて、今更かもしれないが；；

　最後に、、私は韓国人が好きだ。しかし、韓国人の運転だけは好きになれない。これだけは、うちの夫も含めて物申したい。「乱暴運転やめますか？人間やめますか？」と。