KPC確定ロストのシナリオが嫌いな話


まず初めに、私はあらゆるシナリオを否定するつもりは一切ない。
「こんなシナリオを作るなんて最低だ!」などと言うつもりも一切ない。
これはあくまで、私という一個人が「KPC確定ロスト」が嫌いというだけの内容だ。
お気持ち表明にすらなっていない。地雷を文字に起こしただけの文章である。
もし全く理解ができないという方は「そういう人もいるんだなぁ」くらいに思ってもらえればありがたいし、「分かる!」という方は筆者とぜひ握手をしてほしい。同士だ。

なお、「ならエモシ向いてないからやめろ」「タイマンしなきゃいいんじゃない?」などの意見はそもそも論点が違うのでやめてほしい。
個人の地雷は誰にだって存在する。否定される筋合いはない。

初めに

私は巷で言うところのCoCうちよそタイマンシナリオで時折ある「KPC確定ロスト」のシナリオが嫌いだ。
その中でも特に「シナリオの概要、公開情報でKPC確定ロストと明記されていない」「継続推奨と書かれている」シナリオが大嫌いだ。
一度シナリオを読んだあと募集ツイートやフォロワー同士の声掛けが目に入らないようミュートワードに設定するくらい無理だ。

これはすでに何度かそういったシナリオを通過したうえでの結論であり、私の地雷であり、どんな意見をもらったとしてもおそらく変わることはない。

一つ弁解をすると、ここでの嫌いは、あくまで「シナリオとして回す・回される」ことであり、読み物(シナリオを読むだけで満足する、実際に回さない)として嫌悪しているわけではない。
ストーリーとして面白いものもいくつもあった。

なぜ嫌いなのか

じゃあなぜ嫌いなのか。
シナリオとして回す、回される、回っているところを見ることが嫌いな理由はかなり自己中心的、かつ単純なものだ。
簡単に一言でまとめるならこうなるだろう。

「KPCを殺す理由に私の探索者を巻き込むな」

これが偏見であることは自覚しているし、そうじゃないと言うKPも大勢いるだろう。
ただ私がそういったシナリオをPLとして通過した際、こう思ってしまったのだ。
「これ、セッションとして通過する意味あった……?」

理由としてはこうだ。

まず、あくまで私の楽しみ方だが、タイマンシナリオのセッションで探索者を動かしながら多かれ少なかれ考えていることは、だいたい「どうすれば最悪の事態を回避できるのか」だ。
シナリオによっては概要に「KPC後遺症可能性:有」と書かれているものもある。
重要視する比重に差はあれど、KPCがなるべく完全な状態(後述)でシナリオエンドを迎えられるよう考えることが私は多い。

傷ついてほしくないよその探索者は存在する(あくまで私の中ではだが)。
しかし、KPが所有する探索者に対して、たとえうちよそとして遊んでいたとしても、何らかのシナリオでロスト、継続不可能になってしまったとしてもこちらから苦言を呈するのは筋違いだ。
どれだけ悲しかったとしても、「そっか……」以上のことを言う権利はない。
何らか文句を言う権利があるのは、先立たれてしまった自分の探索者だけだ。

だからこそ、自分がPLとしてセッションをするシナリオならば、KPCが生きて帰ることができるよう、探索者もプレイヤーである自分自身も考え、行動を選択し、ダイスを振る。
それがシナリオである以上、現状起きている問題はその多くに結末が用意されているはずだと考え、何らか犠牲を払ったとしても、探索者にとっての「最善」をつかめるようあがく。
苦境を乗り越えなんらかの結末を迎えるのが、いわゆる「エモいうちよそシナリオ」だと私は考えている。
そういうシナリオはむしろ好きだ。だから、KPCが苦しむ、辛い目に合うことを否定するつもりは一切ない。

しかし、KPC確定ロストシナリオは、そもそも上記の前提が違う。
「考えうる最悪の状況はシナリオ開始時点で起きてるので最初からどれだけあがこうと覆せないですけど、探索者はこれからどうされますか?」と聞かれているようなものなのだ。

何度も言うが、これはあくまでCoCにおける私のプレイヤー観である。
私はその状況におかれた際、どうしてもこう思ってしまうのだ。
探索者が何をしようとどうしようもない状況に、どうするもなにもあるか……?と。

一人で歩いていく決意を固めるまでを楽しむためのシナリオなのかもしれない。
苦渋の決断で心中をする様子を見て楽しむシナリオなのかもしれない。
KPがそんなことを考えていないのは百も承知だ。
しかしどうしても私には「KPがKPCを殺したかった/KPCがかわいそうな様子を見て楽しみたかっただけ」=「シナリオに来る探索者がどうなろうとおまけでありどうでもいいのでは?」と思えてしまってならないのだ。

探索者とプレイヤーである私自身が傷つく原因の根底が「だってこういうKPCが見たかったから」だとしたら、私はそもそもシナリオを通過したくない。
継続をしていたうちよそPCであればなおさらだ。
KPCに情を移してしまい、「無理なのは分かってるけど時々傷つきながらなるべく健やかにいきてほしいな」なんて考えていたよその探索者ならば目もあてられない。
言い方はかなり悪いが、もはやKPによるKPCロスト計画に巻き込まれたようなものなのだ。

KPCロストの定義

ではKPCのロストとはなんなのか。
もちろん「今後継続できるかどうかのロスト」であればある程度ハッキリはしているがそうではない。

これは人によって違うとは思うが、私は「今まで何かを共にしたKPCという存在が損なわれること」であると定義している。

たとえば、「KPCは死なないですよ」と言われて通過したセッションの結末が、終盤でのKPCの死亡が確定していてそのKPCのクローンと生きるか死ぬかを選ぶ、といったものであればどうだろうか。
「クローンが生きてるなら別にKPC死んでないじゃん」という人も多いかもしれない。
しかし、今までともに探索などをしたKPCは死んでいる。私はそれをロストであると考えている。
パソコン上でコピーしたテキストデータが「新しいテキスト」「新しいテキスト - コピー」であるように、複製されたものは、たとえ記憶がそのままだとしても、決して同一のものではないのだ。

たとえば、いままで共に歩んだKPCを犠牲にして新たにどこかの地点までの記憶を保有しているKPCをタイムマシンで連れてくる、なんてシナリオがあったとしよう。
「KPC本人なんだから死んでないじゃん」
そうじゃない。そうじゃないのだ。あくまで私にとってのKPCのロストは、今まで共通の思い出やセッションを通過したKPCが損なわれることなのだ。
その地点までを共にしたKPCを犠牲にしている時点で、KPCはロストしている。
過去のKPCはあくまで過去だ。現在にはなりえない。

受け取り方は個人によるだろう。
ミ=ゴが原因で脳缶になってしまったKPCを連れて帰る。精神が一生幼児退行したまま治らないと明記されている。探索者を助けるためにKPCが自殺する。
それらを回避する結末があるうえで、なんらかの選択やダイスロールの結果であればいい。
その結末に至ったのは探索者及びPLである私自身が原因だ。
それが最善であると選んだのかもしれないし、力及ばず半ば後遺症のような形での生還なのかもしれない。
それでも自身の選択であり、たしかにセッションの結果であるからだ。

しかし、初めからそれらが決定していて、覆す余地もなく、ただ享受することしかできない。
それが私の中での「KPC確定ロストのシナリオ」である。

何をする必要もない。何をしても初めから意味がない。
物語としては面白い。もがいてあがいて絶望するしかない様は確かに楽しいかもしれない。
しかし、不本意な結末になることが最初から決まっているシナリオを、プレイヤーとして通過する意味は、果たしてあるのだろうか。
結末が確定しているのであれば、こちらが何をする意味もない。
むしろ思い描く通りに二次創作をすればいいのではないか、なぜわざわざ私と私の探索者を巻き込み「KPCという存在」を殺すのか。
そんな自分勝手な疑問ばかりが、どうしても私の頭を埋め尽くすのだ。

最後に

このnoteの文章はすべて、あくまで私という一個人の、偏見と個人的考えによるもので構成されている。
これが正しいとは言わない。こうであるべきだとも考えていない。
おそらくマイノリティーあるし、おかしいんじゃないか、過激派か、意見を押し付けるなと考える方も当然いるだろう。
そう考えるのは自由だ。
だからこそ、私がここまで長々と書いた内容のように考え、受け止めるのも自由ではないだろうか。

私はKPC確定ロストが嫌いだ。
それは一般的に言う「地雷」のようなものなのだろう。
身内でよく遊んでいる人にはきちんと伝えているから、現在の私がそういったシナリオを勧められることは稀だ。
それでも、そういったシナリオを回したい、KPC確定ロストであると知らないうえで回されたいと言っているツイートを見かけるたびに、どうしてか苦しい気持ちになるのだ。
どうしてかは分からないが、それは自分勝手な正義感なのかもしれない。ああ、あの人はKPCをぐちゃぐちゃにしたいだけの人なんだなと心のどこかで思ってしまう自分が嫌なだけなのかもしれない。
結局のところ、「地雷だから見たくない・聞きたくない」というだけなのだ。
最初に書いた通り、理解ができないという方は「そういう人もいるんだなぁ」程度に認識してもらえると嬉しい。

長文となってしまったが、オープンでそういったシナリオの募集をしている様子を見るたびに、どうしても嫌いなものを見かけてしまったような悲しい気持ちになってしまうプレイヤーがどこかにいることを、少しでも認識してもらえれば幸いだ。
もし可能であれば、個人のDM間でそういったシナリオは誘うなどしてもらえれば嬉しい限りだが……それはあまりにも勝手な願望だろう。