生返事をする男性がどうしようもなく怖い

向かいの席で40代と思しきカップルが神妙な顔付きで話し合いをしている。

男の方は、どこか諭すように。あくまで「俺はお前の5mm上に立っているということを忘れるな」というスタンスで。
女の方は、そんな小賢しい小手先のマウンティングを全て見切って「いいから本題を話しましょう」というスタンスで。


男の方が「なんたらかんたらうんたらそんたら、っていうことだからさ。それが俺の本質なの」と会話を締めくくった。
すごい。私は自分の本質なんか、客もまばらな夜のジョナサンなんかで話せない。
いやいや、客もまばらな夜のジョナサンだからこそ話せることもあるかもしれない。
いやでも、自分の本質を語るわりに相手の本質には興味を示してない感じもすごい。


それはそうと、私はそんなデリケートな話に触れる体力が残っていなくて、イヤフォンを両耳に設置して音楽を聴き始めた。

それでも

単調な8ビートを、甘くてしゃがれたボーカルの声を、分かりやすいギターリフを、割りかし高音で右往左往しているベースラインを

遮って男の高圧的な声は、微かに私の耳に入ってくる。
うるさい。うるさい、というか怖い。うるさい。怖い。



きっとこの男、家では「生返事常習犯」だ。と私は勝手に決めつける。

私は、男性の「生返事」が苦手だ。
苦手、というか怖いのだ。すごく。
先端恐怖症とか、高所恐怖症とか、閉所恐怖症と同じ類だと思う。

一度でも「生返事」が飛び出したら心の扉をバタンと即座にしめる。
もはや、意図的でなく無意識的な速さで、本能に従うように迅速に。


「今、流れでお前とこうしてここに一緒にいるけど、正直俺はお前の本質に興味はないの。目の前のスマホの中で流れるタイムラインの方がよっぽど刺激的に俺を愉しませてくれるし、なんなら今すぐにでも帰ってくれて構わないし、それならこの後、水曜日のダウンタウンゆっくり見れるからむしろありがたいし」

「……うん?ああ…うん」

にこめられているに違いない。そうに違いない。


だから私は生返事をしない人を好きになる。
例え生返事をされたとしても「生返事すんな」と
気兼ねなくつっこめる人を好きになる。
(まあ、生返事をする人は総じて気兼ねなくつっこめないタイプなんだけど)


向かいの席の男女の話し合いは、まだ、終わっていない。
多分今日中に終結を迎えるような議題ではないんだろう。
高圧的な態度の男に、女は反抗的な口調で応戦している。

私は生返事をしない人を好きになる。
今は別にそれで構わない。


いちじく舞


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いちじく舞

会社員4年生活からいきなりフリーライターに転身してみた

コメント2件

本質の会話のくだり、笑ってしまいました。
マシュウさん 肝心な本質の部分は聞き逃してしまいました…。
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