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グル(先生)の役割

私のグルのイメージは、”弟子に無理難題を言ったり、命令をして自分のいうことをなんでも聞かせる人”だと思っていた。それは思春期に起こった某宗教団体の影響もあると思う。あるヨーガ教団の教祖でもある彼は、”グル”であることを最大限に利用して、弟子に犯罪を起こさせ、洗脳させたとワイドショーで大騒ぎしていた。あの事件以降、”グル”や”スピリチュアル”、”ヨーガ”さえも危険なもの、洗脳するものというイメージが付きまとうことになった。伝統的な仏教教団でさえ、大きな影響を受けたと聞いた。そのついでに、私は権威のある男性、いわゆる先生と呼ばれる職種にも若干恐ろしさを感じるようになってしまった。何が真実で、誰の話を信じたら良いのか、みんなわからくなって、誰かに裏切られたり気づかず犯罪に加担してしまうくらいなら信じないことにしようと科学信仰にみんな逃げていったんだろうと思う。

さて、ヨーガを真剣にやっていけば必ず耳にすることがある”グル”という言葉、実は私は思い違いをしていたんだと最近気づいた。伝統的なヨーガの世界では、悟りを求める行をするためには一人のグルのもとで修行していく。先生であるグルと一緒に生活をし、口伝で哲学やチャンティング、などを教わる。講義だけでなく、生活を共にすることでカルマヨガと言われる日常の生活で行うヨガを実践していくグルクラというシステム。グルにスピリチュアルネームを授けてもらい、自分の生活を捧げていく。さすがにガチでヨーガの修行をすると決めた人でなければ、なかなか自分のグルを探そうと思い至る人はいない。私もヨーガのティーチャートレーニングに行った際には、私のグルはいないかなーと一緒に修行している仲間と話し合ったものだ。そこはもっと「学校」という雰囲気だったが。一方で、ヨガの通信教育で哲学を習っていた時は、ハーバード大学の教授である講師は”自分はグルではなくて共に学びを深める仲間であるのでグルと呼ばないでくださいね”と念を推していた。

先ほど私がグルについて思い違いをしていたと書いたのは、実は”グル’の本当の役割は”見たくないものを気づかせる人”だったようだ。というのも、ヨーガの修行はアーサナだけではなく、どんどんエネルギーや精神性の修行になってくる。グルはその人に合った方法で、遠回りだったり、近道で厳しい修行をさせたりするんだけど、生徒の方のエゴが強くグルを信頼していない場合は、危険な状態に陥ったりすることもあるようだ。そのために、グル対する絶対的な帰依を最初に徹底的に教え込むそうである。
見たくないものを気づかせるというのは、エゴのことで、私はこうなりたい、こうするんだという気持ちが強すぎると、グルや先生のいうことを聞けない。それをしっかりと伝えることができる役割がグルである。
先生は必要なことを教えたり、伝えたりする人で、グルになったらその人のいうことは絶対で拒否できないのかと思っていた。いうことを聞かせるのは生徒が戻る必要がある時にあるべき場所に戻れるようにするため。

最近、私はアシュタンガヨガというヨーガを習っている。ハタヨーガの一つであるけれど、グルクラシステムを取り入れていて師匠と弟子の関係をしっかりと築いている現代では珍しいヨガのスクールだ。先生が折に触れ、「Dedicated studentを求めている」というので、なんだか強制されるみたいで嫌だと少し感じていた。アシュタンガではポーズの順番や呼吸の数も全部決まっていて、順番に覚えて先生からオッケーがもらえるまで次のポーズに進めない。まさしくグルクラだ。ちなみに私ははじめてからすぐにハーフプライマリーまでオッケーをもらい、フルプライマリーの1個目のポーズで半年足止めを喰らっている。最初はずっとこのポーズから先に進めないのは嫌だなと思っていたけれど、最近わかった。このフルプライマリーの最初の一個のポーズは、手や腕の力、足の力が足りなければ出来ないポーズだ。これが出来なければ、先に進んでいくと怪我をする。だからこのポーズを完璧にマスターしてから次に進むのだ。意味がわかった。私のエゴが先に進みたい、進めないのは嫌だと思っているのであって、事実はまだ筋力が足りていないだけだ。先生は意地悪をしているのではもなんでもなく、私が見たくない事実をただ見せてくれているだけ。それがグルの役割。

巷では、Youtubeでなんでも情報が手に入るようになっている。昨日観ていたら、「観るだけで第7チャクラが開く!」という動画もあった。本当ならなんて恐ろしい!氣功を習っていた際、先生がおっしゃるには上のチャクラに行くほどエネルギーを使うからしっかり下から鍛える必要があるということだった。無理に上のチャクラを使おうとすると、ガス欠のような状態になってしまうということだ。氣功の先生が恐れていたのが、クンダリーニ症候群(禅病)と言われるものだ。急激にエネルギーを通すことで、統合失調症のような症状が出たり、身体の不調が起こる。そうならないためにも、一つずつしっかりと先生がエネルギーのチェックをしながら、指導してくださる。私は途中でやめちゃったけど。我ながらエゴが強い。
でも実際にそういう状態に陥った人はいらっしゃるのだ。第6チャクラ開いちゃった人。お寺のチャイムがなり、旦那が出るとマスクをした女性が助けて欲しいと訴えてこられた。マスクの下はヨダレが出て、ご本人曰く自力で第6チャクラを覚醒してしまった、どうしたらいいのかわからないので調整して欲しいとのことだった。うちの寺(僧侶)ではお手伝いできないので、近くにあるチベット寺(密教)の方に行ってもらうように伝えた。なんの手助けもできずに大変申し訳なく、力不足を情けなく思ったけれども仕方がない。この時に、心底自己流の恐ろしさを知った。自己流で行けるところまで行くのはいいが、最後の崖の部分を引き上げてくれるのはやはりグルの力(もしくは信仰?)なんだろう。

また良いグルは、”弟子が育ったら離れる”とも聞く。今度は”グル”の方のエゴも試されるようだ。

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