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それでも人の美しさを信じさせてくれた、創り手たちに寄せて。#PrayForKyoani

毎晩、どうか悪い夢であったならと、思わずにはいられない一年でした。
直接の関係者ではない自分でもこれほど苛まれるのなら、ご家族やご友人、同志の皆様にとってはどれだけ無念だったか、推量も躊躇われるほどです。

それでも、再びアニメ作りの道を歩き出しているスタッフの皆様に、心より感謝と敬意を。「ヴァイオレット・エヴァーガーデン」の劇場版、楽しみにしています。

僕にとってこの事件は、人の生き方を信じる心を揺さぶるものでした。凶悪さだけでなく、理不尽さだけでなく。その犠牲になったのが「僕ら」の宝物を送り出してきた人たちであるという点で、何よりもやるせない事件でした。
理不尽に命を絶たれていい人はいません、その軽重に功績や知名度が介入する余地はないと理解はしています。海外にも目を向ければ、数字の上でより大規模な事件だってありました。それでも、ずっと好きだった、誇りにすら感じていた方々があまりにも酷い形で未来を奪われたことには、これまでにないほど動揺していました。
「こんなに酷い運命があるんだ」という挑発を心に突きつけられたようでした。
「人間はこんなに酷いことができるんだ」と、人間の捉え方を揺さぶられるようでした。

これからさらに作品を観ることで、かえって辛さは増すのではという危惧を抱きながら。せめて作品を受け取ることが、オタクとしてできる手向けだろうと思い込んで。先延ばしにしていたのを視聴しはじめたのが、「ヴァイオレット・エヴァーガーデン」であり「響け!ユーフォニアム」でした。「実は観てなくて」と何度となく口にしていたシリーズの筆頭を、こんな心境で味わうとは思ってもみませんでしたが。

改めて、心を揺さぶる素晴らしいアニメを作る人たちなんだと実感して。想像していた以上に純粋に、物語を好きになれました。ヴァイオレットは「こんな涙に会いたかった」をまっすぐに届けてくれましたし、ユーフォはあらゆる要素が好みど真ん中。吹奏楽に部活に自分の人生に、色んなものへの見方が塗り変わる作品でしたし、こんなにたくさん推しキャラができるとも思っていなかった。

そして。物語っていいな、アニメっていいな、「人間」っていいなと感じさせてくれる体験でもありました。この世界には、美しい心がたくさんあるんだと思い直させてくれる時間でした。
たまたま生き残った人間が何を言っているんだとか、近しい人の憎しみや怒りを考えてみろとか、そう非難されるかもしれないですし、そう言いたくなる感覚も分かります。
それでも、エンターテインメントは、受け取った人の世界の見方を明るくするためにあると思うのです。京アニの皆さんにとっても、その志は同じだったと信じています。最期の瞬間、どれだけの絶痛に満ちていたとしても。世界の美しさを見いだし続けた心を、美しい描き方を追い求めた手を、僕は信じています。

だから、ちゃんと生きていこうと思うのです。
悪意も傲慢も暴力も、あらゆる理不尽が闊歩する社会にあっても。
人の煌めきと世界の美しさを信じて、信じ込んで。自分にだって誰かの景色を明るくできるのだと思い込んで、生きることをやめずにいようと思うのです。

京アニの作品は、僕を含め多くの人にとって。みちしるべであって、止めない勇気をくれるメロディであって、翼であって、魔法以上の不思議であって。
どんな悲しみの後でも、人間のいる世界を、世界にいる人間の心を称える美しさが宿っています。僕が受け取ったのは、そんな手紙です。

あなたが描いた美しさを、僕は死ぬまで信じています。
創ることを選んでくれて、ありがとうございました。

そして、今の京アニにいらっしゃる方へ。
創ることをまた選んでくれて、ありがとうございます。
僕らが好きなアニメを、あなたが今でも好きでいてくれたらと願います。

オタクたちへ。
ずっと応援できるように、それぞれのやること頑張ろうな。

2020.7.18



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