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treat me sweet

かたちばかりハロウィンに乗っかったしたさかこばなし

「栄、お菓子あげるからいたずらさせて」
「はい通報」
「じゃあお菓子あげるからいたずらして」
「突っ込むのもご褒美みたいでダルくなってきたな……」

「栄、先週ひとりで『サンボア』行った?」
「行った」
「俺のボトル空けた?」
「空けた」
「俺が大昔社長室から掠め取った山崎二十五年」
「そんなことしてっから飛ばされんだよ」
「まだ半分以上残ってたのに」
「いたずらしろっつっただろ、お望みどおりにしてやったぞ」
「ん〜ちょっとだいぶ全然思ってたのと違うかな〜」
「今、ボトルいくらぐらい?……定価で十二万、オークションだと四十〜五十万ってとこか。知れてんな」
「よく言う。もっと普通のいたずら希望」
「風呂場で毛蟹飼育されんのと車金色に塗装されんのとスーツに全部肩パッド入れられんのとどれがいい?」「それはただの悪行、しかも全部お前が番組でやったやつ」
「ドMに合わせて創意工夫凝らすのも大変なんだよ」
「別にそんな認識はないんだけど」
「麻痺してんのがこえーな、心臓がドM」
「いつもどきどきしてたいってこと?外れではないかな」
「そんなかわいげのあるもんかよ」
「一生で打つ脈の回数って決まってるらしいから、あんまり先食いしないほうがいいな」
本当にそうなら、そしてカウントダウンが数字で見えるなら便利なのに、とくだらないことを考える。そうしたら、栄の残量に合わせていたずらのレベルを調整してやる。そしていつか、Vを走らせる時のように、「ドン」の合図で最後の一回だ。後腐れがなくていい。

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