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オールフィクション

(※この物語はフィクションであり、実在の人物・団体とは一切関係がありません)

❶そのままでしばらくおまちください

「あー、そいやN⚫︎Kの集金来てる頃かなー」
計の部屋で公共放送を見ながら潮がつぶやいた。
「ダイナミックな夜逃げだと思われてるかも」
「何で引き落としにしねーんだよ」
「自由業だから、無理やり人と会うとか無理やり外出る用事つくっとくほうがいいんだよ。光熱費も払込票だったし……でももうぜんぶ引き落としでいいかな」
これからは計と毎日会うから、という意味を言外に感じ取り、計はひとり照れた。
「ところで国江田さん、お支払いは?」
「引き落としに決まってんだろ」
「いや違くて、N⚫︎K払ってんの? っていう」
「払ってるに決まってんだろーが!!」
失礼な。
「あ、そーなの? 金額の問題じゃなくて、思想っつーか、好き嫌いで払ってなさそうだと思って」
好き嫌い。まあ現場で見ると民放と比べてクルーの数が段違い、この潤沢な予算の原資は皆さまの受信料であるという事実はなかなか味わいぶかいものだ。でも計はN⚫︎Kのアナウンサーになりたいとは別に思わない。だって記者リポなのに事前にカンペ作ってんだもの。巻物みたいな。「勝訴!!」とか書きたくなる感じの。現場で「今」感じていることを、放送に許される範囲内で自由に話すのがリポートだろう。
都度思うところはあれど好き嫌いを云々するほど興味もない。しかし。
「……N⚫︎Kには、時々恩がある」

※この続きは商業誌「OFF AIR」に再録されております。

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