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やさしくつづくみらい

※なっちゃん誕生日こばなし
※竜起の弟に関しては同人誌「not made of Sugar」に収録されております。

「なー斎起(いつき)、お兄ちゃんにお菓子の作り方教えて!」
「何だよ急に」
「今度好きな子の誕生日だから」
「買え。ふつーに。うちの店で買え」
「そんなこと言うなよ〜。バレンタイン終わって暇だろ?」
「ホワイトデーもあんだよ。つかまじで市販品のほうがいいって。製菓って分量と手順を厳守しないとだから初心者には難しいし、相手の子だって素人の半端な手作りもらっても嬉しくねーよ」
「なっちゃんはそんなことないもーん」
「誰だよ知らねーよ」
「あらー、なっちゃんって言うの。お母さんに写真見せて」
「それはまあおいおい」
「今までの彼女にお菓子作ったりなんかしなかったのにね。お相手はアリかな?」
「アリと交際してたらやべーだろ」
「ひょっとして結婚とか考えてるの?」
「するする!金屏風バックに会見してお揃いの指輪キラーン! て見せるもんね」
「今時そんなことするやついるか……?」
「じゃあ披露宴は行けたら行くわね」
「そんなふんわりした新郎母親いる?」
「だって竜起の場合、うっかり三千人ぐらい来そうで面倒なんだもん」
「あ〜横アリでしよっかな?」
「じゃあ俺はガッキーが来てくれるんなら行くわ」
「まじかーハードルたけーなー」
「じゃあお父さんは吉瀬美智子で……」


「……そんなわけで、無事に人生初のお菓子作りやり遂げて参りました!はいっ、プレゼント!」
「え、ちょお待って、お菓子以外の要素が衝撃的すぎて話が入ってけえへんねんけど……金屏風……?」
「ほら、富久男の時の素材もあるからVもばっちり作ってもらえるよね〜相馬さん編集してくれるかな?……ってやだなもう冗談だって〜!せっかくの誕生日に碇ゲンドウみたいな顔しないでよ」
「笑う要素ないねんまじで‼︎」
「まーまー! ささ、開封開封」
「もー……こっちの箱は? あ、スニーカー?」
「なるべく、スタジオでキュッキュ鳴らないソールのを選んだつもり」
「ありがとう、大事に履くな」
「じゃあそっちも開けて、ラッピングも母ちゃんに教わって仕上げた、俺のお菓子童貞もらって」
「言い方!……あ、マカロン? すご、こんなん作れんねや」
「だいぶ弟の手借りたけどね。こっちから、チョコ、いちご、レモン、ピスタチオ、キャラメル」
「えー、どれから食べるか迷うわ……あれ、何かカード入ってんで」
「あー、母ちゃんが入れといてって。俺も中身見てないや」
「開けてええんかな……『なっちゃん様 お誕生日おめでとうございます。手のかかる息子ですがよろしくお願いします。父・母・弟』」
「お、サプライズだな〜やるなうちの家族」
「でも」
「ん?」
「これって、『彼女』やって思ってるからやんな」
「別に彼氏でも変わんないと思うよ」
「んなわけないやろ」
「あるある、だって考えてもみてよ、俺の!親だよ?俺を産んで育てた親だよ?」
「……うん、何かものすごい説得力ある」
「でっしょー? そんなことより、何でマカロンなのか訊いてよ」
「何で?」
「特別な人に贈るお菓子だって、弟が教えてくれたから」
「そんなん言われたら、ますますもったいなくて食べられへん」
「なーに言ってんのー。ほら、口開けて、何から食べる?」
「レモン」
「はーい、あ、ちなみに、相馬さんは冗談だけど、金屏風はまじでやるから」
「えっ?」
「っ、いったー‼︎」
 動揺して思わず噛んだ彼氏の指の味とともに、忘れられない誕生日。

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