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コーワとスワロの口径55㎜クラス望遠鏡を比較してみた

「フィールドスコープがあったらなー」

海鳥を見に行った時や、じっくり観察系の探鳥会に参加した時に毎度思うことです。

そこに何かがいることが分かるけど、手持ちの8倍の双眼鏡では識別しきれない歯がゆさ。満足に観察できないやるせなさ。バードウォッチャーとして、このまま終わるわけにはいかない…!

というわけで、実機をお試しできるお店にさっそく飛び込んできました。

※フィールドスコープ、野鳥観察用望遠鏡の購入を検討するのは初めてです。

口径とタイプ

具体的な機種を比較検討する前に、フィールドスコープの大きな分類として
・口径=対物レンズの大きさ。
・タイプ=直視型(ストレートタイプ)or傾斜型(アングルタイプ)
があります。

私が絞り込んだのは下記です。

口径は55㎜クラス

口径は主に50㎜~99㎜とあり、メーカーにもよりますが概ね5㎜刻みでラインナップされています。口径が大きいほどより広い視野・かつレンズが光を取り込みやすいので、薄暗いところも見えやすいというメリットがあります。

ただ、レンズの大きさに比例して重くなることは光学機器の宿命。例えば、コーワの60㎜以下のものは1㎏以下ですが、99㎜のものだと倍の2㎏にもなります。

軽さと広い視野&薄暗いところでの見やすさのどちらを取るべきか。

お店の人いわく「口径の大きいスコープを買ったはいいけど、重くて結局使っていないという人も多い。彼らが買い直しているのが、最高品質のレンズを備えている55㎜のもの」とのこと。

確かに、2㎏のお米を買い物した時のことを思い出すと、自宅から徒歩10分のスーパーでも持ち運ぶのが嫌になるもんなぁ。長時間歩き回ることの多い探鳥時を考えると、できるだけ身軽にしておきたい。というわけで55㎜で検討。

タイプは傾斜型

直視型は双眼鏡のように目線と対象物を真っ直ぐに結ぶタイプ。一方、傾斜型は接眼レンズと対物レンズとの間に角度が付いているタイプです。

直視型と傾斜型のイメージ
直視型(奥)と傾斜型(手前)のイメージ
https://www.prominar.com/tsn-550/より

両者には、対象物の捉え方と、観察時の姿勢に差が出ます。

直視型は双眼鏡と同様に目線と平行にレンズを向ければよいので、野鳥を捉えやすいです。
一方、傾斜型は双眼鏡のようにレンズを向けた直線上で野鳥を捉えることができないため、まごつく可能性があります。バードウォッチングは0.1秒が命取りにもなる世界なので、もたもたしている暇はありません。

では、観察時の姿勢についてはどうでしょう。直視型の場合、観察時はかがんで覗き込む必要があるため、長時間の観察では少々肩や首が凝るのがネックです。

傾斜型はというと、かがまずにレンズを上から覗き込む姿勢で観察するので、長時間でも体への負担が少なくて済みます。さらに、座った体勢で観察しやすいのが利点です。私は臨海公園や干潟などでじっくり座りながらの観察を主な利用シーンとしてイメージしているので、個人的には疲れにくさの優先度が高いと考えています。傾斜型のデメリットとも言われるレンズに野鳥を入れる難しさは、慣れれば問題にならない、という店員さんの言葉もあり、直視型ではなく傾斜型で検討しています。

ちなみに海外では傾斜型、日本では直視型が主流(人気)だそうです。

コーワとスワロのスペック比較

今回、私が口径55㎜クラスかつ傾斜型で比較するのは下記の2機種です。

①コーワ TSN-553
②スワロフスキー ATC 17‐40×56

コーワ https://www.prominar.com/tsn-550/、スワロフスキーhttps://swarovskioptik-j.jp/product/atc-17-40x56/より

需要の縮小から、多くのメーカーがスコープの事業から撤退している中で、意欲的に新機種を出し続けているのは、コーワ(本拠地:日本)とスワロフスキー(本拠地:オーストリア)のみだそうです。実際、口径55㎜クラスの傾斜型となると、選択肢はほぼこの2つに絞られてしまいます。

さて、スペック比較をするにあたっては、私が特に重視した項目だけをピックアップ。個人的な評価を◎、○、△で表してみました。

レンズの評価軸としてシャープさや透明感などもありますが、両者のレンズはそれらについて十二分の品質を備えているため、含めませんでした。薄暗い場所を見たときにどうなのかは気になるものの、夕方以降に試せていないことと、実際にそのような観察シーンが年に何回あるのか?という程度なので、今回は考慮しないことにします。

重さ

探鳥時は長距離を歩くことが多いだけでなく、私は電車で一駅二駅なら歩きたい、ついでに色んなところに立ち寄りたい性質なので、できる限り身軽でいたいと思っています。あと、近年のアウトドア用品がどんどん軽量化している中で、もはやアウトドアの場面で重い物を長時間持ち歩くことに慣れていないというのが正直なところです。

コーワは810g、スワロは970g。軽いに越したことはないですが、その差160gというと、たまご3個分くらいか…。ここに雲台&三脚の重さが加わって長時間持ち歩いたときにどうなのかは考慮する必要ありかもしれませんが、実際にスコープ単体で持ち比べてみたときの体感としてはさして問題にならない程度の差でした。

(1,000m先の)視野

口径55㎜という限界の中で、どれだけ広い範囲を捉えられるのかは重要です。スペックの数字ではよく分かりませんが、実機で同じ倍率に設定したときに、「むむ、違うな」と分かる程度にコーワよりもスワロの方が広いのを体感しました。

ズーム倍率

ズーム倍率は、コーワ 15~45倍、スワロ 17~40倍で、コーワの方がズームできる幅が広いです。
最初は、ズーム倍率は高い方がいい、40倍より45倍まで見える方がいい、と思っていました。しかし、実機を試してみると、ズームするほど視野が狭まり、動いている野鳥がすぐにフレームアウトしてしまうことを痛感。倍率を上げるほど雲台で角度を調整する頻度が増え、忙しないです。動かしているとブレちゃいますし。
なので今は、倍率はそこまで求めなくてもいいかな、と考えが変わりました。

デザイン性

個人的に、この点はスワロが圧勝です。光学機器では黒や緑など暗めで地味な色が多い中で、オレンジ!?かわい過ぎる!!!買うなら間違いなくオレンジ。
スワロは文字のロゴが目立たないのも、猛禽のシルバーエンブレムもポイント高し。長く使うものだからこそ、見るたびにテンション上がる方がいい。

価格

コーワは20万円前後、スワロは36万円。分かっちゃいたけどスワロ高い…。数字で並べるとコーワが安く見えるから恐ろしい。
コーワとの差額は16万円。これだけあったら遠征たくさん行けちゃうしな…。

で、どうする?

正直、価格とデザイン以外の決定的な差異はないというのが個人的な感想です。
現実的に手が届きそうな価格帯なのはコーワ。この性能と軽さを備えて20万円という価格設定は妥当な気がします。

でも、探鳥時にスコープを持っている自分を想像して思わずニヤニヤしてしまうのは、やっぱりスワロなんだよな~あのオレンジにルンルンしちゃう。

そうだよ、高い買い物ほど直感に頼ったほうが後悔が少ないってどこかの心理学者も言ってたし!この先何年も使えば36万円もいつかはチャラになる!何しろ一生モノの買い物なんだから!

それに、そもそもスコープを所望したのも、自分のバードウォッチングスキルを上げるためではないか。と考えると、これは浪費ではなく自分への投資だ!(殺し文句)

と、今の気持ちはスワロ寄りです。…うーん、でもやっぱ高いな~!(∞)

この購入前の、ああでもないこうでもないと逡巡しているときが、実は醍醐味だったりするんですよね。
結論を急がず、この時間をもう少し味わうことにしようと思います。


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