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大正琴の弦の太さ(ゲージ)のメモと代替案に向けての覚え書き


前回の記事を書いてからちょっと間が開いてしまいました。現時点で公開しているのは6記事ですが、編集中・書きかけの記事は10以上あるという状況で、そのまま放置とならないよう少しずつしあげていきたいとは思っています。

さて、バイオリンの弓弾きかストラト型ヘッドの大正琴の話題を、という予告を全部うっちゃって小さなメモ書きを一つ。ただ、将来的には、この先で大正琴を弾いてみたいと思いたった方の助けになる記事ということになるのかもしれません。

大正琴の弦の太さ(ゲージ)

大正琴 SUZUKI HARP 説明書 (特松 同梱のもの)

スズキの大正琴を調べていて過去のカタログが同梱されたセットを入手したのですが説明書もセットになっていました。この説明書には弦の太さ(と長さ)が明記されていまして、内容を整理して転記すると以下の通りとなります。

▶ ソプラノ大正琴(5弦)
第1弦~3弦(共通)
・鋼線|0.25mm×745mm
第4弦
・巻線|0.53mm×710mm
第5弦(ベース弦)
・巻線|0.72mm×670mm

▶ アルト大正琴(6弦)
第1弦~3弦(共通)
・鋼線|0.35mm×990mm
第4弦~5弦(共通)
・巻線|0.72mm×1010mm
第6弦(ベース弦)
・巻線|1.2mm×940mm

ここでソプラノ大正琴とされているのは「竹・松」(丸ボタンモデル)、「桜」(楕円ボタンモデル)ですが、同梱されていたのは「特松」(楕円ボタンモデル)です。また、そのエレアコ版の「砂丘ソプラノ」も同じのはずで、長く続いたこの系列で共通のデータとなるでしょう。

そしてアルトの方の機種は「峰」で、これが新製品として登場したタイミングでした。アルト大正琴は他社(他流派)では2弦(まれに3弦)、ベース大正琴では1弦(まれに2弦)が主流となっていきますが、この時点の砂丘アルトは6弦、バスは3弦仕様です。このあとのアンサンブル主流の中でパートごとの役割分担をハッキリさせていく楽器の発達史を思うと過渡期ということなのでしょうが、いまからソロで楽しもうとするとなると、また違った発想を生むことになるかも知れない歴史上の分岐点と言えるかも知れません。

大正琴の弦の代替案に向けて

さて、残念ながら大正琴は現在のところ退潮傾向です。ゼンオン・カワイ・ヤマハといった大手楽器メーカーは実質的に既に撤退していて、関連の消耗品がいつまで提供され続けるのかはわかりません。特にゼンオンの大正琴弦は安くて入手性がよくお勧めなのですが、これもいつまで入手できるのか見通しは厳しいと言わざるを得ません。

まだ全国メーカーではスズキがありますし専業メーカーではナルダンがありますが、一部のボールエンド弦を使うような特化した大正琴用の専用弦は廃番になっている現状があります。

そうした琴が中古で流通していて、そこに魅力を感じたとき、上記のデータは諦めないでよい新しい選択肢を示します。

太さが分かればボールエンド弦ならエレキギター等の弦が使えますし、弦のわっか(ループエンド弦)をテールピースの爪に引っかけるタイプのオーソドックスな大正琴なら、同じくループエンド弦を採用するマンドリンやバンジョーの弦の転用が考えられるでしょう。

なんならループエンド弦のボールエンド弦からの自作というのもあるし、またその逆も、そう珍しくもないのだというのは知っていてよいことだと思います。

もっと自由な弦選びのために

そもそも、楽器としての大正琴へ不満があるとすれば弦の種類が少なすぎて、かつ素材含めて関連データが示されていないということです。

メーカーが倒産して情報のほとんどないエレキギタータイプ(ボールエンド弦)の大正琴を入手して、指の感覚でだいたいこんなところだろうといくつかの弦を試していましたが、あまりに極端に強すぎる弦を張るとボディを痛める可能性もあり、そこは慎重になるところでした。

大正琴 大海シリーズ「春海」ストラト型ヘッドボールエンド型テイルピース採用機種

ソプラノ大正琴の1弦(0.25mm)がだいたいエレキギターのスーパーライトゲージの1弦(0.009インチ)と同じと判断していましたが、0.009インチ=0.228ミリでほぼ正しかったようです。より正確に揃えるならライトゲージの1弦なら0.24mmになりますからそれでもいいでしょうしもうちょっと太い弦を試すのも許容範囲だろうと判断できます。

この先の未来、大正琴がひょっとしてより厳しい状況に追い込まれたときの緊急避難として、もしくは今現在でもソロでさまざまな音作りの可能性を探って楽しむ際にも、上記の情報は役立つでしょう。というか、これくらいの情報はメーカー側で明記されていてしかるべきもの、と思うのですが。

これはどうも大正琴の最盛期であってもそうだったようで首を傾げるところなのですが、大正琴のこれまでの普及のあり方と関係するところなのでしょう。大正琴世界だけが巨大な島宇宙になっていて、いろいろと楽器/音楽趣味共通で役に立つはずの知識が没交渉で周辺から浮かび上がっています。それが都合が良かったのだろうというメーカー(流派)の思惑も透けて見えるところですが、それは今は置きましょう。

個人が好みの音を追求するというのも楽器趣味の一面なら、どんな太さの弦を張るか、その素材は何かというのは楽しむための重要な要素の筈です。なんなら金属弦でなくともよいでしょう。和楽器に近いところに立つ大正琴なら、そちらの素材による弦の音作りを追求することだってできる筈なのです。

次回予告

表紙が同じでも内容の一部が違うカタログ/説明書があるということが今回の一番の気づきでした。出品画像等をより慎重に見ていく必要がありますね(苦笑)

次回予告が嘘ばっかりになっているのでアレですが、大正琴の後付けピックアップについて少し。 エレキギター弦と大正琴の弦の簡易な換算表になりました。予定は未定。

あと過去の記事にもちょこちょこ手を入れているのでときどき↓のバージョン表記を確認してみてください。

(2024/01/20 第1版 公開)


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