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ジョブズ伝説

アートとコンピュータを融合した男

10年の後のジョブズ伝説

最初で最後でない自伝(2012)※再掲

 スティーブ・ジョブズがアップル社に復帰してから15年、キーノートをリアルタイムに聴いてきた私にとって、CEO退任発表直後にジョブズの業績を確認するためにジェイ・エリオット著「ジョブズ・ウェイ」を読み終わった直後に訃報の知らせ。しかし本書「スティーブ・ジョブズ」の印象はジョブズが語る「最初で最後の伝記」としてはどこか焦点がぼけているようにも感じます。数あるその他のジョブズ本をすべて読んでいないので分からないですが、少なくとも本書からはスティーブ・ジョブズという特異な人物の人間性というものが浮き出ていないようです。
 ウォルター・アイザックソンがスティーブ・ジョブズに自身の伝記を書かないかと言われたとき「どうして私に依頼したのか」を聞いたと本書「スティーブ・ジョブズ」の「はじめに」に書いてあります。それによれば、ジョブズは「話を聞き出すのが上手だろうと思ったからさ」と答えたといいます。アイザックソン自身もこのような答えが返ってくるとは思ってもみなかったと書いていますが、これはどういうことだろう。?アイザックソンならIT業界に関しては素人だし、ジョブズ自身を含むジョブズ側が提供する情報にもとづいた伝記を書かせることができる。すなわち思うがままの伝記を書くと判断したのではないか。ジョブズは自身の命が尽きる最後の最後まで計算づくでアイザックソンを選んだ。ジョブズは「何でも聞いてくれ」といったというがアイザックソンならジョブズの話しを表面的で、それ以上アップル社の将来の動向を詳しく書かずに、一般書として書くに違いないと考えたのだろう。
 その点では、高木利弘著「ジョブズ伝説」は、長年アップル社の動向やIT業界に詳しいというだけでなく、読み手がどのようにしたら喜ぶのか、どの話題に飛びつくのかをしっかりと把握しています。「ジョブズ伝説」はそれまでの多くの書籍の内容や情報を知り尽くしたうえで書いた、ジョブズを知るためのすぐれた入門書です。そしてジョブズの特異性は何物であったのか、どんな偉業を成しとげたのかを分かりやすく解説しています。
 しかるに10年ののち、あらたな著者によりスティーブ・ジョブズの生涯を振り返って見ることだと思うし、ジョブズの成し遂げたことを評価すべきだと思います。



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