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堂場瞬一 書き下ろし最新刊 『沈黙の終わり』を読む 報道するとはどういうことか?

 この小説を読むまで、全国紙の記者というのは、各紙によって差はあれ、政治部は政権の広報のいうことをそのまま記事にし、社会部の記者は警察発表をそのまま記事にし、記者クラブという特権にあぐらをかいている存在だと思っていた。(東京新聞社会部の望月衣塑子記者などの一部の例外を除いて)しかし、小説とは言え、このような記者たちがまだ日本にもいるし、報道とはどういうことなのかを考えさせられる作品だった。
 埼玉支局に勤務する全国紙の記者となって5年目の古山は、ふとしたきっかけで、江戸川沿いの地域(埼玉県と千葉県にまたがっている)で、33年間にわたり断続的ではあるが、小学校低学年の女子児童が殺害されたり、行方不明になっていることに気づく。そのことを追究していく中で警察が意図的に各事件について、捜査を縮小していった事実に突き当たる。わたしは思わず、関東地方の道路地図をみて、その場所を確認してしまった。
   その相棒となるのが、定年間近の松島だ。松島は本社の社会部編集委員まで務めたが、あくまでも現場にこだわる記者だった。若いときの無理がたたり、胃がんの手術を受けたことをきっかけに地元の千葉県柏支局長(支局長といっても支局には彼と採用2年目の女性記者しかいない)に希望して赴任する。周りからは「そのまま、本社にいれば定年になって悠々自適なのに変わったやつだ」と思われても「生涯、現場に立つ」ことを貫こうとする。この二人が、県境を超えてタッグを組むことで真相に迫る。
 内容に触れると必ず「ネタばれ」になるので、これから後は、先に本小説を読まれることをお薦めしたい。プロローグで、事件の発端を古山のまとめで引用し、全体の簡単な紹介をeーhonから引用し、最後にわたしの心に残った箇所を下巻から引用する。

プロローグ (以下、上巻より引用)
 記者クラブに戻り、データベースで過去の事件を調べていく。急に嫌な予感が膨らんできた。7年の間に行方不明事件が2件。千葉では、間隔はもっと離れているが、殺人事件が2件発生している。場所はいずれも、江戸川の近くだった。
 古山は手を擦り合わせ、埼玉県版と千葉県版に絞って、「小学生」「行方不明」「殺人」をキーワードに記事を検索していく。十分後、古山は、金鉱   (変な言葉だが)を掘り当てたかもしれない、と思った。
 埼玉県内では、1992年に三郷で7歳の小学一年生女児が殺される事件があり、これも未解決のままだ。さらに1999年には越谷で8歳の女児が行方不明になったまま、未だに見つかっていない。
 おいおい・・・・これだけではない。千葉県内でも、2005年に柏で女児の行方不明事件が起きている。
 古山は、時系列で一連の事件をまとめた。

1988年 流山で殺人事件 被害者・金城真美 7歳(小2)
1992年 三郷で殺人事件 被害者・佐島菜々子(さしま ななこ) 7歳(小1)
1999年 越谷で行方不明事件 被害者・浜浦美南(はまうら みなみ)8歳(小2) これだけが、利根川沿い
2005年 柏で行方不明事件 被害者・嶋礼奈(しま れいな) 6歳(小1)
2011年 松伏で行方不明事件 被害者・塩谷真弓 9歳(小3)
2017年 吉川で行方不明事件 被害者・所あさひ 8歳(小2)
2021年 野田で殺人事件   被害者・桜木真咲 7歳(小1)

上巻 紹介
 30年間隠されてきた幼女誘拐連続殺人。県を跨いだ、幼女を狙った卑劣な事件。縄張りに拘る無駄な県警のプライド。利権を死守したい政権による圧力。すべてを乗り越え、真相を追え。

下巻 紹介
 新鋭とベテラン、ふたりの新聞記者の矜持は最悪の殺人事件の真相を暴けるか。自ら命を絶った警察署長。圧力をかけられ辞めた、元警察官僚の女性覆面作家。そして現れた、巨大なる黒幕。20周年を飾る、記念碑的作品、誕生。

下巻 第9章 「内なる戦い」 p220~222

「あのな、政治担当編集委員っていうのは、どの辺の政治家をネタ元にしてるんだ? 若手の頃に可愛がってくれた人は、とっくに引退しているだろう?」20代の政治部の記者のネタ元が、60代の党の重鎮でもおかしくない。
 「そうだな。よくある話だ」
 「政治家だけじゃなくて、各省庁の事務方の上の方とも親しくなるだろう」
 「そうじゃないと行政関連のネタは取れないからな」佐野が認めた。
 「はっきり聞こうか。お前を動かしてるのは、総理秘書官の倉橋か? それとも官房副長官の桂木大吾か?」
 「だから嫌だったんだよ、俺は」佐野が溜息をつく。「お前だったら、いつかはそこに辿り着くと思
っていた。そして絶対に、大きなトラブルになる。もっと強く止めておけばよかった」
 「ふざけるな」松島は低い声で脅しにかかった。「お前は、指示は受けていないかもしれない。でも誰かに忖度して、俺を止めようとした。お前の大好きな政治家や官僚、それに会社の上層部に気を遣ってるんだろうが、大きなお世話だよ」
 「お前はクソ野郎だ。何か一番大事なのか、分かっていない。仮にこれから民自党のクソ政権が戦争に突っ走っても、お前は止めないだろう。戦争に反対する人間を抑圧する側に回るよ。戦争が終わった後で何か起きるかも想像できないでな」
 「言い過ぎだぞ」佐野の顔が紅潮する。
 「ああ、言い過ぎだ」松島は認めた。「でもな、俺たちはずっと、クソみたいな仕事しかしてこなかった。権力の監視がマスコミの仕事なんて言いながら、実際には権力に取りこまれていた。俺だってそうだ。長く警察庁の担当をしていたのに、サツの不祥事を抜いたことは一度もない。むしろ、週刊誌に抜かれた。あの連中の取材力は、今や新聞より上かもしれない。ただ、奴らは正義感や義務感からやってるわけじゃない。問題は金だ。でかい見出しで週刊誌が売れるかどうかだけがポイントなんだ。どんなにいいネタでも、そういう姿勢である限り、俺は週川誌の報道は認めない。俺たち新聞記者だからこそ、できることがある  青臭いだろうが、まだ信じているんだ。それを、内輪から潰(つぶ)されたんじゃかなわない。お前は黙って引っこんでろ」
 「俺は、お前のためを思って言ってるんだぞ」佐野の顔か強張った。
 「それが本当ならありがたい話だけど、そもそもの考えが間違ってるんだから、受け入れられない」松島は尻ポケットから財布を抜き、一万円札をテーブルに叩きつけた。
 「帰る」
 「おい!」
「お前、いい記者人生だったって、胸を張って言えるか?」
 捨て台詞としては最悪だ。自分の言っていることがあまりにも青臭く、時代遅れなことも自覚している。今時、新聞に正義や公正な批評を求める人などいないだろう。これからは、そういう傾向かますます強くなるはずだ。
 こんなことを堂々と言う記者は、俺が最後になるかもしれない。
 しかし、街に出て外の風に吹かれた時には、妙に爽やかな気分だった。言いたいことを言ったからではない。真実を言ったからだ。

下巻 第10章 「神の手」 p248~p255

 「分かりました。仮定の話として聞きます」
 「親の情は深い。子どもが何をしても、絶対に庇って、世間の荒波にはさらさないようにしたいと思うものだ」
 古山は脳内で、彼の言葉を変換した。子どもが殺人犯でも親は庇うものだ・・・・桂木は古山の相槌を必要としないようで、目を細めたまま勝手に喋り続ける。
 「それがどんなに厳しいことでも、絶対に子どもは庇う。何十年経っても、自分が年老いても、そうするのが親としての本能のようなものだ」
 「それが違法行為であってもですか」
 「どんなことであってもだ」
 「そのために、親は自分の能力の全てを使うんですね」
 「あなたの言う通りだ」桂木が深くうなずく。「あなたもご自分の両親に聞いてみるといい。親は子どものためなら、何でもする」
 「それだけなら、親子の美談かもしれません」古山は反撃に出ることにした。「しかし仮に、それが犯罪行為だったらどうですか? 桂木さんだったら、子どもを庇って隠蔽しますか?」
 「私は仮の話をしているだけだ」
 「私も仮の話をしています」
 「だったら・・・・そう、仮の話を続ければ、イエスだな。子どものためなら、親は多少の違法行為には目を瞑るだろう。使えるものは何でも使う」
これは、実質的に自分の犯行を認めたも同じだ。
殺人・拉致を続ける自分の次男を庇うために、警察官僚を一人自分のものにし、出世を与える代わりに事件を隠蔽した。クソ、今のを録音していれば・・・・とも思ったが、今までの話だけでは、完全に認めたとは言えない。そう、桂木の言う通り、これはあくまで仮の話なのだ。
 「子どものためなら、然るべき高位の人物に対して影響力を行使することもある、ということですか」
「高位、ね・・・・今はそうかもしれないが」
「あなたが高位に引き上げたんじゃないですか」
「私の話ではない。仮の話だ」
古山は肩をすくめた。桂木がいちいち釘を刺してくるのが気に食わないが、これはしょうがないだろう。向こうも必死なのだと考える。
「仮名で、Aさんとさせて下さい」古山は提案した。「日本語は、主語がなくても通じると言われていますけど、今川は誤解を招きかねませんから」
「Aね。まあ、いいだろう」
柿木がうなずく。何だか、彼の掌の上で踊らされているような気分になったが、ここは引くわけにはいかない。桂木と直接対決する機会など、二度とないかもしれないのだ。
 「話をまとめます。社会的に責任有る立場にいたAさんの次男が、重大な事件を起こしました。殺人事件です。次男を庇うために、Aさんは捜査をストップさせる必要があった。そこで、地元の警察にいた若いキャリア官僚に声をかけ、捜査をやめさせた。その見返りとして、Aさんは地元の汚職万件に関する情報を与え、それによって、キャリア官僚は順調に出世の階段を上がり始めました。しかしAさんの次男の犯行はその後も止まらず、県境を扶んだ狭い地城で小作を繰り返した。その度にAさんは、自分が『飼い主』となった警察官僚を動かして事件を揉み消してきた。」

(中略)

 「親は何歳になっても、子どもを守るものだ」
 「しかし、子どもが何かすれば、責任を取らざるを得なくなる。それがこの社会の決まりです」
 「必ずしもそうとは限らない」桂木がやんわりと否定した。「何をしても、責任が問われない状況はある」
 「責任能力がないから刑事責任を問われない、ということですね」すぐにピンときて古山は訊ねた。
 「そういう話はよくあるだろう」
 それで、責任能力がないということで逃げるつもりか? 確かに逮捕されても、責任能力がないということで、刑事責任を問われない場合もある。だったらさっさと警察に差し出せばよかったのに・・・・そこで古山は、桂木の本音に気づいた。
 「あなたが守りたかったのは、息子さんではないでしょう。自分すなわち桂木家だ。政治家の息子が連続殺人犯だったら、洒落になりません。私は個人的に、子どもと親は別人格で、問題を起こした時に互いに責任を負う必要はないと思います。しかし実際には、日本では、家族が大きな問題を起こせば、他の家族が責任を負う。あなたの場合、ばれたら政治生命は終わりだった。ご長男に引き渡すはずだった議席も消えてしまう。政治の仕事を家族で引き継ぐ意味は分かりませんが、そういうことなんじゃないですか?」
 「政治の世界は、ゼロから始めない方がいい。特殊で、他では経験できないことが必要な世界だ。そのためには、親について仕事のベースを覚えるのが一番いい。他の仕事とは違う、特別な職業なんだ」
 「だから・・・・」
 「政治に一番必要なのは安定だ。それは国政でも地方政治でも変わらない。政治を安定させるためには、最初から仕事が分かっている人間が跡を継いでいくのが一番いいんだ」
 その割に、政治家が代替わりするごとに劣化していく感じがするのは、古山の偏見だろうか。若い頃から経験を積んでタフになるというより、ただ周りから甘やかされて、駄目な人間として公の場に出てきている印象なのだが。
 「だいたい、子どもと国を引っ張っていく人間と、どちらが大事だ?」
 「ふざけないで下さい」古山は思わず言った。悪い冗談・・・・、柿木は真顔だった。本気でそう思っている。
 「あなたたちが取材するのは自由だ。今後どんな風に展開していきたいかも分かった。しかしそれは、記事にならない」
 「何故ですか? 息子さんが刑事責任を問われないからですか? それとも、いつでも新聞社に圧力をかけられるからですか?」

 埼玉・千葉を舞台にした連続女児誘拐・殺人事件で、埼玉県警は今月14日に自殺した男性(55)の犯行と見て、本格的に捜査を始めた。この事件に関しては、埼玉・千葉両県警が捜査を中途半端に終わらせていた疑惑があり、警察庁が調査に乗り出す予定。一連の事件は1988年、流山市で小学2年生の女児(7つ)が殺害された事件から始まつたが、警察が実質的に捜査を放棄したという、過去に例を見ない事態に発展しそうだ。〈関連記事26、27面〉
 警察幹部によると、この男性は2お17年7月に埼玉県吉川市で発生した小学2年生の女児(8つ)行方不明事件に関与していた疑いが持たれている。死亡した男性は、この女児が通っていた学習塾の講師をしていて、顔見知りだった。女児は現在も行方不明のままで、埼玉県警は捜索を本格的に再開した。
 事件は、1988年から今年にかけて、数年おきに小学校低学年の女児が行方不明になったり、殺されたりしたもの。現場は江戸川を挟んだ狭い地域に集中しており、被害者は全員、同じ学習塾チェーンに通っていて、自殺した男性が教える教室で学んでいたか、過去に通っていたことがある。
 男性は大学在学中の1987年からこの塾で教えはじめ、卒業後に正式に講師として就職。しかしわいせつ行為などについて保護者からのクレームが多く、頻繁に異動を繰り返していた。
 警察庁が問題視しているのは、1988年に流山で発生した最初の殺人事件で捜査を担当していた刑事が書き残していたメモ。当時、圧力により捜査が止まった経緯が詳細に記されており、警察庁ではこれを重視して調査を開始した。この刑事は千葉県警幹部だったが、今年3月に発生した野田市の殺人事件の捜査の最中、自殺している。残されたメモには、33年前に捜査を中止せざるを得なかったことに関する後悔の念も綴られていた。

p280~282
 「だけど、それを告発する人間はいなかった」古山が厳しい表情を浮かべる。「政治家っていうのは、クソみたいな連中ですね。俺たちとは     一般の人間とは価値観がまったく違うんでしょうね」
「権力の中枢にいると、感覚が狂ってしまうのかもしれない。だけどそれは、許されることじゃないからな。君の仕事はまだ終わらないぞ」
 「ええ。桂木と倉橋の責任を追及すること、そして事件を解決することです」
 「正直に言えば、事件の真相を完全に解明するのは相当難しいと思う。何しろ、肝心の犯人は死んでいるんだから」
 「分かってます。でも、可能性は信じたいと思います。警察は、個別の事件についてある程度は捜査を進めていたわけですから、そこから何とか……せめて、行方不明になっている女の子たちを見つけてあげたいですよね」古山が座り直した。「でも、驚きました。こんなに一気に、物事が正反対の方向を向くなんて。松島さんに言われて、俺は半信半疑で埼玉県警と警察庁に話を通したんですけど、あんなにあっさり受け入れられるとは思わなかった」
 松島は静かにうなずいた。そう、松島は取材の方向性をはっきりと指示した。新内閣になって、倉橋と桂木人吾が役職を降りたら一気に攻めろ     その際、やはり小野メモが決定的なポイントになる。
「警察庁は、小野メモを重要な証拠として認定したんだな?」
「ええ。たぶん、警察庁の中でも、事情を知っている人間は何人もいたんだと思います・・・・本郷響とか」
 「途中で辞めて作家に転身したような人間が知ってたんだから、他にも知っている人間がいると考えるのが自然だな」松島はうなずく。「知ってて何にもしなかったんだから同罪だが、それはまあ、いい」
 「埼玉県警も、見事に掌返しでしたよ。たぶん連中は、千葉県警に比べれば、自分たちの方が非が軽いと思ってるんでしょう」馬鹿にしたように古山が言った。
 「最初は千葉県警から始まったんだし、桂本の地元は千葉だからな」
 「埼玉県警も同罪ですけど、今さらその辺を追及してもしょうがないでしょう。とにかく、埼玉県警は警察庁の圧力を受けてますから、きちんと動くはずです。千葉県警がどう出るかは分かりませんけど、。捜査はせざるを得ないでしょうね。両県警とも、関係者の処分も絡みますから、そう簡単には終わらないと思いますけど。それに社内の問題もある」
 古山の表情が一気に厳しくなった。まだ表沙汰にはなっていないが、それぞれの事件に関して、埼玉・千葉両県警から当時の担当記者に対して、圧力、あるいは懐柔があった疑いが出ている。それで厳しい取材を放棄した。    内部調査はこれから本格化するはずだが、会社幹部はその実態を公表するつもりはあるのだろうか。今回の件に関しては、マスコミにも相当な責任がある。
 「まあ・・・・俺は高見の見物といかせてもらうよ」
 「復帰はいつになりそうなんですか? この件、松島さんにも原稿を書いて欲しいです」
 「いつまでも俺に絡ませるなよ」松島は苦笑した。「これは、君が最初に気づいた件なんだから、君が最後まで仕上げろ。そうするべきだ」
 「・・・・ええ」
 「一つだけ、忘れないでくれ。惰性で新聞記者の仕事をするな。今、新聞はどうあるべきかなんていう理想を語っても笑われるだけだろうから、わざわざ口にする必要はない。でも、シビアな取材をして、社会悪を挟(えぐ)り出す什事を続けていかないと、本当に新聞は駄目になる。俺はもうすぐ辞める人間だからいいけど、君はまだ先が長い。この先何十年も、プライドを持たないで仕事をするのはきついぞ」
 「はい」古山が真顔でうなずいた。
 「誇りを捨てるな。今ならまだ、新聞を立て直すチャンスがあるかもしれない」
 「肝に銘じます・・・・まあ、俺としてはいいこともありましたし」古山がニヤついた。
 「何だ?」
 「本郷響   大事なネタ元ですけど、最近、それとは関係なく会うようになってるんです」
 「おいおい」松島は思わず目を見開いた。「彼女、君よりずいぶん年上じゃないか」
 「ちょうど十歳ですかね」
 「それは・・・・一回も言ったけど、結婚するならうちの次女にしておけよ。俺はいつでも歓迎だぞ」
 「プレッシャーが大きいですよ」古山が笑った。「ま、今のは余計な話でした。先のことがどうなるかなんて、全然分かりませんし」
 まったくその通りだな。人生も、新聞記者の仕事も、一寸先は闇だ。いや、古山の場合、角を曲がった先に光が待っているかもしれないが。一応、めでたい話と言うべきだろうか・・・・松島は、笑いを堪えるのに必死になった。


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