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「海の命」で目指す個別最適な学び①

2021年11月6日に開催した東京学芸大学附属小金井小学校ICT×インクルーシブ教育セミナー vol.4で行った授業提案をnoteで再現したいと思います。

今回で4回目となるICT×インクルーシブ教育セミナーですが、これまでの3回と同様、次のような前提と仮説に立って、授業提案を行います。

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これまでの3回のセミナーでも、公開授業や授業提案を元に議論を深めてきたのですが、その度に大きな学びがありました。1回目は初めての開催ということもあり、中川一史先生から「ICT×インクルーシブ教育を進める上では、学校の中と外で誰を巻き込んでいけるかを考えることが重要だ」という指摘をいただきました。正にその通りで、それが今日に至るまで我々の活動の基本ポリシーにもなっています。

2回目のセミナーでは「多様な学びの選択肢から子どもが選べることが大切ではないか」ということが議論になりました。「ICT×インクルーシブ教育セミナーだからICTでないとダメ、というのはおかしい。子どもが自分に合ったものを選べるようにしないと。」という発想は、今思えばこの時から個別最適な学びへと踏み出していたのだな、と感じます。

3回目のセミナーでは「ICT×インクルーシブ教育の評価をどうするか」というのが大きな話題となりました。

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これが今回の私に課せられた大きな宿題でした。ただ、テストに関して言えば、入試での合理的配慮やCBTの導入は今後ますます進むことは間違いないので、改善の兆しは見えています。むしろ、授業の中での評価をどうするか、ということの方が大問題であるように感じられます。

授業の中での評価をきちんと行う。一人一人の実態に応じて多様な評価を実現する。そう考えた時、それは結局「個別最適な学びをどう実現するか」という問題に繋がるのではないかと我々は捉えました。しかし、「個別最適な学び」は一筋縄ではいきません。文科省の資料を見てみましょう。

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「子供自身が学習が最適となるよう調整」するって、言うのは簡単ですが、なかなか大変です。これを大真面目に行ったのが今回の「海の命」の実践でした。

立松和平の「海の命」は、6年生の教科書の最後に掲載されている物語文です。普通の順番で言えば「小学校国語の総まとめ」的な単元になります。指導要領ではどういったところに該当するのか、レギュラーな学習の進め方はどのようなものかは以下の通り。

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さて、ではこの「海の命」。一回目の授業で私が児童に行ったレクチャーをご覧ください。

「たくさんある『学び方』『学ぶこと』の中から、自分はどれを選び、どんな力をつけたのか、明らかにできるようにする」
それって、なかなかの無理難題だと思います。思いますが、子どもたちはここに果敢に挑んでくれました。最初の授業の振り返りに書かれたことからいくつか紹介しましょう。

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けっこうポジティブなんですよ。「国語が苦手」な子が「とてもいいと思う」と書いていたり、「課題を考えるのは難しい」と書いている子が「やり方や方針を考えられるのはとてもラッキー」と書いていたりするのは、この進め方がヒットした証でしょう。

でも、もちろん戸惑う子もいました。こちらもいくつか紹介しましょう。

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まあ、そうですよね。初めての学び方ですから、子どもたちにとってチャレンジングだったことは間違いないでしょう。また、自分の性格と合わせて考えて「不安」と答えているのも正直なところなのではないかな、と思います。

ともあれ、こうした期待と不安を抱えながら単元は始まったのでした。
(続く)

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