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#007:カンボジア、“問い”が溢れる魅力的な国〜その3の続き。

NHKスペシャル アジア巨大遺跡 第1集 密林に消えた謎の大都市 カンボジア アンコール遺跡群(放送:2015年10月)』の続いて、今度は『世界ふれあい街歩き〜アンコールワットの誇りシェムリアップ/ カンボジア(撮影:2016年12月)』。
歩行者目線のカメラで、街中の人とゆるく会話をしながらぐるっと散歩をする番組。街の人は必ずみんな優しくて、親切に対応してくれる。会話に応じてくれなくてもそれははにかみからで、暴力的な人は誰も出てこず、安心して見ていられる番組・・と私は認識している。

シェムリアップ編もまた、同じように朝の慌ただしい空気の中の和やかな会話から始まる。夫婦で24時間営業の駐バイク場の受付・管理をするために傍らの木の下でご飯を食べる家族。親世代から引き継いだお米屋さんやお菓子屋さんの店員さんが休憩時間が欲しい時は交代で店番をする。クメールチェスに興じる男、庭先でお茶をしながら歓談する女。女性の一人はポル・ポトの内戦で教師だった夫を「知識人」とみなされ処刑されたとか。そんなまだ身近な戦後の痛みを癒すのが仏教寺院から流れてくるラジオ講話。お布施の返礼として街の皆さんに届けているとか。内戦の傷痕関係の話題が続いて、アンコール・ワットを史上初めて測量した建築家さんの話。彼も処刑になるのを恐れて貴重な図面を土に埋め、難を逃れたとか。その後、塾講師とそこで学ぶ子ども達が語る将来の夢。愚民政策で、医師、教師、高度な知識や教養を持つ人が抜けた世代を若い人たちが徐々に埋めていきつつあるような印象。

・・と2本立て続けにみた後の感想として。

現在のカンボジアにおける『貧困問題』や、現地のガイドが指摘していた『ベトナム不法移民問題』などの政治的な課題について、これらは過去のクメール・ルージュ政権の愚民政策により深刻な影響を受けたと言えるように思う。一部の観測では、知識と経験に富んだ50〜60歳代の人材が不足していることが一因とされているようだけど、ただしこれは他の要因も考慮する必要があるような結論だと感じつつ、他の国を振り返ると、老齢層の経験が豊富であるがゆえに時折新しいアイデアや変革に柔軟に対応できない、または若い世代とのコミュニケーションにおいて摩擦が生じるというような問題がないようにも私には思えて・・バランスが重要であるなぁ、と。

また、信心については、カンボジアが非常に信仰心の篤い国であることを再認識。アンコール時代において、宗教による統治が行われていたことが長寿命の政権につながったと言われているようだし、現在の国民も日常に根付く仏教に救われている様子がみえる。もちろん、これらの平和や安寧が必ずしも宗教だけでもたらされた訳ではないいのはわかるが、戦乱による消耗を考えると、やはり平和な心を維持することが、より発展的な世界を生むのではないかなぁ・・など、ひどく浅いところに着地したような気がするのでありました(深いところに着地しようとすると、何も言えなくなると思うのでこれはこれでよし)。

旅の復習。

今回、アンコール・ワットの遺跡群やトレンサップ湖の観光などをきっかけに、ヒンズー教や仏教、ポル・ポト政権、クメールルージュ、キリングフィールドなどのダークサイドを含めてカンボジアのことを調べたり考えたりしたけれど、私が思い当たることは「既に考え尽くされているのだなぁ」という感想。ただそれらを知り、学ぶことで、東南アジアの歴史、貧困、平和、心の安寧、NGOやNPOの功と罪(援助する他国の思惑)、まだまだ深堀できる要素が山盛りあることに気づくことができた訳で。『世間は既に考え尽くされている、ただ自分の中の問いはまだまだ無数にある』ことに気づくことができた、今回はそんな旅の復習になりました。

お口直し。

以下にタ・プローム遺跡の写真を添えておきます。

森と遺跡って絵になるよねぇ。何が調和しているのか、朽ちていく感じがいいのか?
接着剤をつかわずにこれだけの石を崩れずに積み上げられるってどんな技術?!というのは、NHKの番組で説明されていました。見てからいけば、もっとしっかり観察したのに、できたのに!
世界遺産の一部のため、伐採できないガジュマル。締め殺しの木・・ってすごい名前で呼ばれてた。
見上げた青天井。母を弔う場とはいえ壁面の穴には1つずつ宝石が埋められていたとか。
どんだけの繁栄!ジャヤーヴァルマン7世、恐るべし・・マザコン?<違

ここまで読んでくださったかたへ、ご参考までに。
NHKでは『幻のアンコール文明 巨大寺院群はなぜ森の中に消えたのか?』を2023年4月に放映していることを新たに発見して見始めています。
2015年、2016年からどんな新たな発見があったのかなぁと見比べてみるのは楽しいですぞ。

それにしても。
自分は生きている世界や社会に対して何も恩返しできないように思えて、ただ茫然と見上げちゃったよ。

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