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参 「知らないと損をする」ファミリーバイオレンス・スクリーニングツールの重要性~家族法実務家のために~

カナダ司法省のレポート「知らないと損をする」を翻訳・公開します。
作成者:ルークス・プレイス
執筆者:
パメラ・C・クロス(文学士―法学士、非営利団体「ルークの場所」法務部長)
サラ・クラン博士(ゲルフ大学 心理学部博士研究員)
ケイト・マッズオッコ(法学士/経営修士候補者2020、トロント大学)
メイビス・モートン博士(ゲルフ大学 社会および人類学部准教授)
2018年2月

討論
実践現場の設定
FVSTの内容

 分析したツールの大部分は、医療分野で使用するために開発されたものです。この実践現場の設定は、ツールの全体的な構造と、分析したツールにおける特定の質問の普及に影響を与える可能性があります。例えば、人間関係の意思決定に関連する質問が含まれているツールは14件(16%)のみでした。これらのツールはいずれも、医療分野に由来するものではありませんでした(主に家族法およびメディエーション分野に由来していました)。人間関係の意思決定は、人間関係に子どもが関わる意思決定の枠組みを確立しなければならない家族法の文脈で、より問題とされるかもしれません。このことは、FVSTの内容に文脈や設定が影響を与えることを示唆しています。なお、人間関係の意思決定に関する質問はあまり多くなかったため、このテーマは家族法との関連性が高いにも拘らず、一般的な質問のリストには含まれていません。
 内容に影響を与えるもう一つの因子は、FLPのサービスを求める期間と関係があります。家族法弁護士は、研究から明らかになっている、虐待行為がエスカレートする傾向にある別離時に面接をします(Ellis, 2016; Zeoli et al, 2013)。スクリーニングツールは、一部の虐待行為が近い将来その深刻さを増幅させる可能性を反映したものでなければなりません。それ以上に、別離は法的にも、支援サービスネットワークへの適切な紹介という形でも、求めるべき救済策を決定する機会でもあります。この2つの点において、面接対象者の経験を十分に理解した上で、施術者が選択をしなければなりません。
レビューしたツールのうち、パートナーがストーカー行為やその他の方法でプライバシーを侵害したかどうかを面接対象者に尋ねたものは、僅か20%でした。しかし、ストーキングやその他の形態の嫌がらせは、虐待関係の終了後によく起こり(Edwards & Gidycz, 2014; Showalter, 2016)、より深刻な暴力がすぐに起こる可能性を示すものになり得ます。「ストーキングの被害者は、長期にわたって影響を及ぼし、日常的な活動を制限するような深刻な心理的被害を経験することがあります」(Statistics Canada, 2018, p. 5)。このことを考えると、法的な行動方針(接近禁止命令を求めるかどうか)を決定する際に、新しいストーカー行為や以前のストーカー行為は、施術者が考慮すべき重要な内容です。
 レビューしたツールの17%で、面接対象者のパートナーが以前に子どもを拉致したことがあるか、または拉致すると脅したことがあるかを尋ねています18。このような質問はツールの中にあまり頻繁に出てきませんが、虐待するパートナーと一緒にいるよう面接対象者に強要するため、つまり、面接対象者が子どもから離れることがあれば、子どもを連れていくという脅しに以前は使われていた可能性があります。この情報は、現在別離していることを考えると、家族法弁護士にとって重要です。なぜなら、子どもの拉致が起こらないようにするための法的選択肢が利用できるかもしれないし、虐待者が子どもを使って面接対象者に間接的虐待を行う意思(これは監護権やアクセスに関する問題に関連しています)があることを示しているからです。
本稿ではスクリーニングとリスクアセスメントを区別していますが、スクリーニングツールには、子の拉致のリスクを評価する質問を含めるべきです。ネルソン(2017)は、拉致された子どもの返還を得ようとすると、費用と不確実性が伴うため、予防が重要であると指摘しています。スクリーニングツールは、虐待の一形態として過去に拉致したこと/拉致すると脅迫したことについて尋ねるべきですが、恐らく、面接対象者が拉致に関する主要な質問に肯定的に答えた場合に尋ねる、リスクアセスメントに関する質問のサブリストも含めることができるでしょう。リスクアセスメントの質問のリストは、「ニールソンの家族法、民事保護、児童保護事件におけるドメスティックバイオレンスへの対応」(2017, Chapter 16.6.2) で入手可能です。スクリーニングとリスクアセスメントが拉致の可能性を示す場合、法的選択肢には、単独監護権の緊急申し立てを行う(「緊急」の閾値が高いことに注意)、加害者に子どものパスポートやその他の身分証明書を引き渡す命令を要求する、および/または加害者が子どもを管轄区域から連れ出さない命令(非撤去命令)を要求する、などがあります19。
 FVSTにこれらの質問を含めることで、FLPに貴重な情報を提供することができますが、このような洞察は、施術者が虐待の力学を十分に理解している場合にだけ得ることができます。施術者は、このような過去のパターンの意味を認識できるように、ファミリーバイオレンスをテーマとした研修を受けるべきです。
  上記で紹介した質問のよくあるフレーズ
   1.時を経た今、昔を振り返ってみて、あなたの[結婚/恋愛]ではどのような意思決定がなされていましたか?
   2.[相手方の名前を入れて下さい]があなたを尾行したり、何度も電話をかけたり、電話記録を調べたりしたことがありますか20?
   3.[相手方やあなたのパートナー]は、あなたの子どもを連れ去ったり、二度と会わせないと脅したことがありますか?

脚注18
脚注1を参照。拉致を明示したツール(「妻虐待に関するメディエーション・スクリーニングツールと尺度」)もあれば、監護権喪失の脅迫に言及したツール(「イリノイ州DVスクリーニングツール」)もある。虐待行動目録では、両方の形態の「連れ去り」を具体的に尋ねているが、「拉致」か「監護権喪失」かを特定せずに「連れ去り」という言葉を使ったツールが最も多い。このような幅広い質問形式は、両方のタイプの脅迫を捉えることができる。

FVSTの構造
 研究では、医療従事者に共通する運用上の懸念として、スクリーニングを実施した初回面接後のフォローアップ訪問が不足していることを挙げています(Williams, Halstead, Salani, & Koermer, 2016)。これは、より頻繁なやりとりが行われる弁護士とクライアントの関係では、弁護士が事件の全期間にわたって依頼されているなら、あまり問題にならないかもしれません。このように、関係が進展し信頼が構築されれば、弁護士が追加のスクリーニングを行う機会があるため、最初のスクリーニングを比較的短くすることができます(特に、70問以上あった分析ツールの平均値から外れたものと比較すると)。このような弁護士は、自分たちの手数料が法律扶助サービスまたは依頼者によって直接支払われているか否かを管理するのに多大な時間を要するツールを使用することを望まないかもしれません。
 弁護士がパートナーと別離したばかりの面接対象者と会うことを考えると、スクリーニングツールの構成と運用は、トラウマや恐怖によって面接対象者の虐待開示意欲が受ける影響も考慮する必要があります。これらの影響は、依頼者が弁護士と共有することを選択する法的問題を推進する可能性があり、その結果、特定の線に沿って会話を誘導しようとするスクリーニングツールとの間に緊張が生じる可能性があります。
 そこで、FLPが、家族法の文脈に特に関連する要素を考慮した方法でFVSTを効果的に管理できるよう、トレーニングをする必要があります。
一般的なトラウマの影響、そしてトラウマが態度や情報開示のパターンに与える特別な影響に関するトレーニングは、トラウマの影響を経験している人々を支援し面接する方法に関するトレーニングとともに、必須とされるべきものです。頭部外傷や潜在的な脳損傷(首を絞める、頭を打つ、壁や家具に頭をぶつける)を伴う身体的虐待歴がある場合、面接対象者が直線的に情報を伝達する能力に影響が及ぶ可能性があります。家族法の実務家は、このような形態のトラウマが開示パターンに及ぼす影響についてトレーニングを受ける必要があります。このトレーニングは、効果的なスクリーニングを促進するために必要であり、また、弁護士が虐待サバイバーを代理し、その後の家庭裁判所の手続き(手続きが開始された場合)において彼らと協力する能力を向上させるでしょう。

既存のスクリーニングツールとアプローチのギャップ
 FVSTは、使用される集団の多様性を反映したものでなければなりません。
 FVはあらゆる文化集団で発生します(Htun & Weldon, 2012; Raj & Silverman, 2002; Vanderende, Yount, Dynes, & Sibley, 2012)21。アセイ、デフレイン、メッツガーとモイエレットは、FVは世界中のどの国でも核となる社会問題であると述べています(Garcia-Moreno et al., 2006)。
本報告書は、特定の文化が暴力に寛容であるとか、暴力を容認しているといったことを示唆するものではありません(Neilson, 2017)22。全ての女性が、虐待するパートナーから同じまたは類似の形態の暴力、脅迫、孤立、支配を多く経験する一方で、一部の女性は社会からの差別や暴力も経験し、虐待関係から去る際に更なる困難に直面するかもしれません(Vanderende et al.)。ペダーセン、マルコーとプルキンガム(2013)が説明するように、女性の暴力体験は社会経済的、人種的、民族的、その他の文化的隔たりを越えていますが、社会的不平等は存在します。彼女たちは、別れるための資源や選択肢がないために、より脆弱である可能性があります(Madden, Scott, Sholapur, & Bhandari, 2016)。更に、虐待するパートナーは、特定の文化的状況に関連した特定の戦術や虐待の形態を用いることがあります。
 ラングルら(2008)がスペイン語を話すラテン系女性のスクリーニングについて行った研究によると、この集団では、身体的虐待の質問よりも心理的・感情的虐待に焦点を当てた質問の方が感度が高いことが示されています。著者らは次のように指摘している。
 ある種のIPVに対する不寛容さなど、IPVに対する認識の違いは、同じスクリーニング質問に対するスクリーニング効果に民族間で違いをもたらすかもしれない(Wrangle et al.2008)。
 効果的であるためには、FVSTは文化的現実と差異を反映する必要があり、不平等と社会的排除の条件を強化するために複数の力が一緒に働き、相互作用する方法についての交差的理解をもたらす必要があります(Murshid & Bowen, 2018)。先住民女性の歴史におけるFVを特定するためのツールは、「該当する先住民文化を理解する長老やその他の人々と協力して、専門家が作成する」べきです(Neilson, 2017, 20.3.3)。
 ニールソンは、カナダの先住民族コミュニティを対象とした歴史的慣習(居住学校など)の影響が、関係が虐待的である暴力への曝露の影響と結びつき、トラウマや心的外傷後ストレス障害を高い割合で引き起こすと指摘しています(2017)。開示に対する追加の障壁が存在する可能性があり、「家族法、民事保護と児童保護事件におけるドメスティックバイオレンスへの対応(Neilson, 2017)」の第20.3.2章に記載されています。
 文化的、地域的な配慮が必要であるにも拘らず、調査チームは、先住民、農村、その他の地域や文化的な状況の現実を反映するように特別に書かれたツールを見つけることができませんでした。また、調査チームが行った情報提供のための面接でも、対象者に合わせた質問が必要であるという懸念が表明されました。私たちが気づいたのは、アルバータ州女性シェルター協議会のリスクアセスメントツールは、ファーストネーションの女性の経験に配慮して開発されたものです(アルバータ州女性シェルター協議会,2012)。多様な文化や地域への配慮、そしてこれらの配慮がFVSTの文言や形式にどのように影響するかについて、更なる研究を行う必要がある。

新たな現実
 家庭裁判所の様相は、カナダ全土で急速に変化しています。代理人のいない当事者は、例外ではなく標準になっています(カナダ政府、司法省、発行年不明)。
 これに対し、弁護士は、案件全体ではなく、特定の法的問題に対して依頼者から法廷弁護依頼を受け取るバラ売りの法律サービスを提供するようになってきています(Murphy, Wilson, & Wong, 2012)。また、弁護士が手数料を受け取って、訴訟当事者が法廷で効果的に訴えを提起できるよう、舞台裏からオフレコで指導するリーガルコーチングも登場しています(Gershbain, 2017; 全国自己代表訴訟プロジェクト,発行年不明)。
 2018年現在、オンタリオ州の家庭裁判所は、パラリーガル(法律事務員)が一部の法的サービスを提供することを認めています(Robinson, 2017)。
 FLPに普遍的なFVSTを導入し、普及させるための計画は、こうした新しい現実を考慮し、未だに十分に弁護人が付いていない者がスクリーニングを受け、そこから得られる支援を利用できるようにする必要があるのでしょう。

家族法におけるFVスクリーニングと他分野におけるスクリーニングとの区別
 医療とメディエーションの両分野では、以前からスクリーニング(場合によっては普遍的なスクリーニング)が行われていて、法曹界が学ぶべき点は多くあります。FLP向けの普遍的なFVスクリーニングは存在せず、正式なプロセスに携わったり、正式なツールを使ったりする弁護士は殆どいないようです。
 しかし、職種の違いによるスクリーニングの目的や、スクリーニングツールを使用できる環境にも重要な違いがあります。
医療の文脈では、FVのスクリーニングを行うことで、施術者は、他の方法では探しようがないであろう長期的な健康への影響の可能性を特定することができます。また、長期にわたる虐待のパターンを追跡できる可能性が高くなります。性的虐待の場合、妊娠、HIV/AIDS、STI(性感染症)の適切な検査を行えるようにできます。カウンセリングやその他のサポートを適切に紹介できるよう、施術者を支援することができます。将来、より深刻な被害を防ぐのに役立つかもしれません。スクリーニングの結果に拘らず、医師は患者にサービスを提供することになります。
 また、家族法と医療の違いは、カナダの医療の殆どは政府から資金提供を受けているため、スクリーニングにかかる時間は開業医や患者に直接費用がかからないことです。
 メディエーションの文脈では、FVスクリーニングにより、メディエイターはメディエーションが両当事者にとって適切であるか(メディエーションが両当事者にとって公平であり得るかどうかを含む)を評価し、関連する安全因子を考慮することができます。更にスクリーニングでは、虐待の手口、虐待の期間と強度、両当事者の相互作用の仕方、虐待を受けた人が経験する恐怖のレベル、両当事者がメディエーションプロセスに完全かつ真正に参加する能力と意思を調べます。
 メディエーションでは、一般的に同じ人物が両当事者にスクリーニングを行います。メディエイターは、スクリーニング後の結論に基づいてメディエーションの提供を拒否し、当事者に代替プロセスを提案することも、当事者(特に虐待サバイバー)がメディエーションへの参加を断念することもできます。メディエイターは、当事者と共に安全対策を講じたり、このような支援やその他の支援(即ちカウンセリング)のために地域のリソースを紹介することもあります。
 本稿で既に述べたように、スクリーニングは、メディエイターに義務的トレーニングを受けた後に特定のツールを使用すること、定期的な更新トレーニングを受けることを求め、暫く前から(国内の殆どの地域で)専門のメディエーション・サービスで定着している。
 FLPは、あまり正式なスクリーニングを行わない傾向があります。中には自分で見つけたり作成したツールを使う弁護士もいますが、殆どは「直感」や依頼者の自発的な開示に頼って、依頼者が経験した暴力について学んでいます。ドメスティックバイオレンスやスクリーニングのテーマについて正式な教育や訓練を受けた弁護士は殆どいないため、彼らは、重要な赤信号を見落としたり、誰がFVの被害者かについての不正確な固定観念に頼ったり、多くのFVサバイバーが自己開示をしないことを理解しなかったり、サバイバーが自分を見せる方法に不慣れだったり、FVについての正確な反応を求めるために使うべき適切な言葉を知らなかったりすることがあります。
家族法の現場は、医療やメディエーションの現場とは大きく異なります。依頼者が限られた資金で仕事をしていたり、法律扶助を受けている場合、弁護士は長時間のスクリーニングを行うことは期待できません。また、(メディエーションでは、メディエイターが両当事者を評価するのとは異なり)弁護士は自分の依頼者にだけスクリーニングツールを使用するので、相手から別の視点を聞くことができないでしょう。
 家族法の文脈におけるFVスクリーニングの主な目的は、弁護士が関連する法的問題を特定し、依頼者に効果的な法的助言やサービスを提供できるようにすることです。スクリーニング中に収集された情報は、十中八九、弁護士が答弁書や他の裁判所の文書を準備するために必要な証拠の一部となります。法律扶助サービスが一定の時間数の資金提供を検討する場合、この情報を収集するために必要な時間を考慮すべきです。
 また、スクリーニングによって、弁護士は、緊急および長期的な安全問題を特定し、安全対策を支援し、カウンセリングや住居などの分野で他の支援を提供できるコミュニティ・サービスを依頼者に対し適切に紹介することができるようになるはずです。

トレーニングの重要性
 スクリーニングツールは、標準化されたトレーニングを完了したFLPだけが使用できるようにせねばなりません。
このトレーニングは、対面式かオンラインかに拘らず、以下のトピックをカバーする必要があります。
  ・スクリーニングの目的
  ・FVについて話すときに使う適切な言葉 
  ・虐待の赤信号の見つけ方と分析方法
  ・新規依頼者とのラポールや信頼関係の構築
  ・事件を通じてのスクリーニングの重要性
  ・リスクアセスメントと安全対策
  ・FVと力の不均衡
  ・別離後の虐待と法的いじめ
  ・FV事件における安全上の主な懸念事項
  ・FVが子どもに与える影響
  ・トラウマが依頼者に与える影響
  ・FVと家族法や裁判のプロセスに関連する文化的問題
  ・注意すべき状況的要因(例:依頼者のボディランゲージ、文化的、地域的または家族的価値観、言葉の壁、年齢、性的指向、性自認、障害の状態、薬物使用歴など)
  ・サバイバー、加害者、子どものための地域資源を紹介することの重要性
  ・FVサバイバーである依頼者に対する適切な面接技術
  ・FVSTの実施方法
  ・ツールの結果の解釈方法
  ・推奨するスクリーニングツール

勧告
1. 州および準州の弁護士会は、FLPの普遍的FVスクリーニングの要件を実装すること。
2. スクリーニングは、標準的な2段階のアプローチで実施すること。FVの赤信号を迅速に特定するため、施術時間が短いツールを全ての新規依頼者に対して最初に使用し、次いで、赤信号が最初のスクリーニング中に現れた場合、または依頼者がFVの存在を自己開示した場合施術時間の長いツールを依頼者に使用するべきである(2つのツールの質問案一覧は付録C参照)。
3. スクリーニングツールには、「ファミリーバイオレンス」という用語の実用的な定義が含まれること。
4. スクリーニングツールには、リスクアセスメントと安全対策に関するFLP向けの基本的情報が含まれていること。
5. 文化的に特異なスクリーニングツールの開発に取り組むため更に努力すること。特に、障害を持つ依頼者は勿論、先住民、新来者、高齢者向けの独自ツールを開発する必要がある。これらのツールを、彼らのコミュニティによって、あるいは彼らのコミュニティとの緊密な協力のもとに開発すべきである。
6. 全ての家族法専門家は、FVスクリーニングツールの施術方法と採点方法に関するトレーニングを受けること。そのトレーニングには、陽性反応が出た場合の適切なフォローアップも含んでいること。
7. 家族法の専門家でもあるFV専門家がFLP向けにトレーニングを開発・提供し、弁護士に無料で提供し、トレーニング修了後にCPD(技術者継続教育)の能動的行動時間を提供すること。
8. カナダの様々な地域やコミュニティで、トレーニングとスクリーニングツールの両方をテストするパイロット研究を実施すること。
9. 州と準州の法律扶助プログラムは、証明書を発行する際にFVスクリーニングの費用を負担する、あるいは家族法の依頼者に別の方法で経済的支援を提供すること。
10. 家族法の文脈におけるFVSTに関連する知識を引き続き充実させるため、更なる資金提供による研究を実施すること。この研究は、相互虐待のケースのスクリーニング、家族法の文脈における児童虐待のスクリーニング、施術者主導型と自己主導型双方のツールの長所と短所、文化的配慮やスクリーニングツールの言葉遣いや形式への影響、FLPによるFVスクリーニングの有効性と影響を扱うべきである。但し、これらに限定されるものではない。

付録A

付録B
推奨されるスクリーニングツールの質問

初回のスクリーニングツール
 依頼者が自発的に虐待を開示した場合を除き、全ての弁護士が家族法の新規依頼者に対して、初回のスクリーニングツールを普遍的に使用することが提案されています。
 弁護士は、自分たちが全ての家族法の新規依頼者にこれらの質問をすることを依頼者に伝え、弁護士や依頼者の特権を依頼者に思い起こさせることにより、ツールを導入する必要があります。この行為は、依頼者が正直に質問に答えることに快適さ感じるのに一層役立つはずです。依頼者が安全だと感じられるプライベートな環境でツールを実施することで、快適さのレベルを更に高めることができます。
 弁護士は、質問に答えることは任意であることを依頼者に告げねばならない一方で、(安全上の懸念に対処できる、家事事件に役立つ情報を収集できる、適切な他のリソースを見つけることができる)ツールを実施することによる依頼者のメリットも指摘して話すべきです。回答が不快な質問については、回答を拒否することができることを依頼者に伝えるべきです。
 初回スクリーニングツールは、新規依頼者との最初のアポイントメント時に口頭で実施し、実施には10分ほど掛けるべきです。
 注:これらはテンプレート質問であり、多様なコミュニティの文化的現実を反映したスクリーニングツールの資産構成を作成するための議論の出発点として意図されています。
 弁護士を支援するために、初回と2回目のスクリーニングツールを更に発展させ、各質問に付随する聞き取りと注視すべき回答のリストを含めることができます。
 ミネソタ州弁護士会家族法部家庭内虐待委員会のスクリーニングツールは、このような方法が可能であることのモデルである。

提案された質問
1. パートナーがあなたや他の人に言ったこと、したことが原因で、パートナーに対して恐怖を感じたことはありますか?(「はい」の場合、例を挙げてください)
2. あなたのパートナーは、あなたに対して身体的に攻撃的だったことがありますか?例えば、首を絞める、叩く、蹴る、殴る、平手打ちをしたことがありますか?
3. あなたのパートナーは、これまでにあなたや他の誰かを何らかの形で脅迫したことがありますか(例えば、あなたを傷つけたり殺すと脅す、子どもに危害を加えたり子どもを連れ去ると脅す、他のあなたにとって大切な人を傷付けたり殺すと脅す、自分を傷つけたり自殺すると脅す、ペットや動物を傷付けたり殺すと脅す)?(「はい」の場合、例を挙げてください)
4. あなたのパートナーは、あなたがセックスしたくないと言っているのに、あなたにセックスをするよう圧力をかけたり、あなたとセックスをしたことがありますか?(はい」の場合、例を挙げてください)
5. あなたのパートナーは、あなたの持ち金をコントロールしたり、金銭を使用してよい用途を指示したり、家族のお金に関する全ての決定をしていますか?
6. あなたのパートナーは、今までに、あなたを嫌な気分にさせるようなことを言ったり、したりしたことがありますか?例えば、あなたをバカ、怠け者、醜いと言ったり、他の方法であなたを侮辱したことがありますか?

2番目のスクリーニングツール
 弁護士は、最初のスクリーニングで赤信号23が確認された場合、または依頼者が虐待を自己開示した場合にのみ、2番目のスクリーニングツールを使用します。
 このツールは、弁護士が暗唱するための台本ではありません。
 このツールは、弁護士を支援するためのディスカッションガイドです。弁護士は、専門的判断、分析スキル、批判的思考スキルを使用する必要があり、どの質問をするのが適切かを知るために依頼者の非言語的な合図を観察しなければなりません。
 例えば、最初のスクリーニングで依頼者が心理的虐待を指摘した場合、弁護士は2回目のスクリーニングでその種の虐待に関連する質問に焦点を当て、恐らく他のカテゴリーに関する質問は1つか2つだけ、または依頼者の以前の回答に基づいて必要と思われる数だけ質問すべきです。
この報告書で提案されている質問は、一般的な虐待の手口を反映したカテゴリーに分けられています。具体的には、強制的支配、身体的虐待、脅迫、性的虐待、経済的虐待、心理的虐待です。
 当然ながら、この2回目のスクリーニングは、最初のスクリーニングの「はい/いいえ」形式の質問とは異なり、弁護士が会話形式で尋ねるべき質問が増えるため、最初のスクリーニングに比べて時間を要することになります。弁護士は、最初のスクリーニングで識別された事柄と法手弁護の種類などに基づいて、2回目のスクリーニングツールを使用して何時間施術するか、どのセクションに焦点を当てるべきか、決定する必要があります。

提案された質問
第1部:強制的支配
1. あなたがまだパートナーと同居しているのなら、今日家に帰っても大丈夫ですか?
2. あなたがまだパートナーと同居していないなら、安全だと感じますか?
3. あなたはパートナーと同じ空間にいるとき、安心できますか?
4. あなたとあなたのパートナーは、どのように意思決定をしていましたか/していますか?
5. あなたは、意思決定に対して意味のある意見提供ができていると感じますか?
6. あなたが意思決定に同意しない場合はどうなりますか?
7. より具体的には、あなたとあなたのパートナーは、子どもに関する意思決定をどのように行っていますか?
8. あなたの言動にパートナーが同意しない場合、どうなりますか?
9. あなたは、パートナーがどう反応するかを恐れて、自分がしていることをパートナーに隠しますか?
10. あなたのパートナーは、あなたがやりたくないこと、あるいは間違っているとわかっていることを、あなたに強要したことが今までありますか?そのようなことがあった時のことを教えてください。
11. あなたのパートナーは、あなたにとって大切なものを傷つけたり、壊したりしたことが今までありますか?その例を挙げてください。
12. パートナーのあなたへの接し方が、あなたのお子さんにどのような影響を与えていると思いますか?
13. 今までに児童保護当局が関与したことがありますか?

第2部:身体的虐待
1. あなたのパートナーは、あなたに対して今までに次のようなことをしたことがありますか?
  ・口や鼻を塞ぐ
  ・首を絞める
  ・叩く
  ・殴る
  ・蹴る
  ・押す
  ・引掻く
  ・髪を引っ張る
  ・押さえつける
  ・監禁する
2. あなたは今までにパートナーからの身体的虐待で、医者にかかったり、病院に行ったりしたことはありますか?それについて教えてください。
3. あなたのパートナーは、今までに身体的虐待が原因で起訴されたことがありますか?どのような理由で起訴されましたか?刑事事件では何が起こりましたか?
4. パートナーをあなたから遠ざけるための、接近禁止命令や保釈条件/保護観察処分は出ていますか?そのような命令の条件は何ですか?
5. あなたのパートナーは銃器やその他の武器を使うことができますか?それについて教えてください。
6. あなたのパートナーは、今までに武器であなたを脅したり、あなたに対して武器を使用したことがありますか?
7. パートナーがあなたに何かしたために、警察に通報したことが今までにありますか?

第3部:脅迫
1. パートナーが今までにあなたを傷つけると脅迫したことがある場合、その脅迫はどのようなものでしたか?パートナーはその脅迫を実行に移しましたか?
2. あなたのパートナーは、あなたの子どもに関してどのような脅迫をしましたか?
3. あなたのパートナーは、あなたのペットや動物に関してどのような脅迫をしましたか?
4. パートナーが自殺すると脅迫したことがある場合、その脅迫を実行しようとしたことがありますか?また、実行するのではないかと心配したことがありますか?
5. あなたのパートナーは、あなたに関して児童保護当局に電話すると脅迫したことが今までにありますか?
6. あなたのパートナーは、友人や家族を傷つけると脅迫したことが今までにありますか?
7. あなたのパートナーがこのような脅迫をしたとき、あなたは怖くありませんか?
8. あなたの家族が車を持っている場合、あなたのパートナーは、あなたの鍵や車を取り上げると脅したことが今までにありますか?
9. あなたのパートナーは、あなたを外出させないと脅迫したことが今までにありますか?

第4部:性的虐待
1. あなたのパートナーは、あなたがセックスを望んでいないときにセックスをするように圧力をかけたことが今までにありますか?
2. あなたが「セックスしたくない」と言ったとき、あるいは言ったら、パートナーはどのような反応をしますか?
3. あなたのパートナーは、あなたがしたくないことを性的に行うようにあなたに圧力をかけたり、強制したりしたことが今までにありますか?
4. あなたのパートナーはあなたに危険なセックスを無理やりしたり、強要したり、避妊具の使用を禁じたり、避妊していると騙したりしたことが今までにありますか?
5. あなたのパートナーは、あなたに妊娠中絶するように強要したことが今までにありますか?
6. あなたのパートナーは、あなたが妊娠中絶することを許さなかったことが今までにありますか?
7. パートナーが意図的にあなたにHIVやSTIを感染させたことが今までにありますか?
8. あなたのパートナーは、あなたがしたいことをさせてあげる代わりに、セックスをするように強要したことが今までにありますか(例:「私とセックスしたら、家族に会いに行かせてあげる」)?
9. あなたのパートナーは、あなたにポルノを見たり、参加したりすることを強要したことが今までにありますか?
10. あなたのパートナーは、お金のため、あるいはパートナー自身の喜びや楽しみのために、あなたに他人とのセックスを強要したことが今までにありますか?

第5部:経済的虐待
1. あなたとあなたのパートナーは、金銭についてどのように意思決定していますか?
2. あなた方の意見が一致しない場合はどうなりますか?
3. 金銭についてよく議論しますか?
4. 共同の銀行口座へのアクセスはありますか?
5. あなた自身の銀行口座を持っていますか?
6. あなたは家族の経済状況を理解していると感じますか?
7. あなたのパートナーは、あなたに働くことを強制したり、働くことを禁じたりしたことが今までにありますか?
8. あなたの給料はどこに行くのですか?
9. あなたは金銭を使用する権利がありますか?それとも、あなたのパートナーがあなたに金銭を支給していますか?
10. クレジットカードは誰の名義になっていますか?
11. あなたはパートナーの許可なしに金銭を使う意思決定ができますか?

第6部:心理的虐待
1. あなたのパートナーは、あなたを罵倒したり、貶めたりしますか?どんな風に呼んでいるか、例を幾つか教えてもらえますか?
2. あなたのパートナーは、あなたを罵倒したり貶めたりすることに、あなたの子どもを引きずり込みますか?
3. あなたのパートナーがそのようなことをした時のことを教えてもらえますか?
4. あなたのパートナーは、あなたの子どもの前であなたを脅迫したり、侮辱したり、貶めたりしていますか?他人の前ではどうですか?
5. そのようなことをされて、どのように感じますか?
6. あなたのパートナーは、あなたがあなたの家族および/または友人との交流をコントロールしたり、妨げたりしていますか?
7. あなたのパートナーは、これまでに以下の行為をしましたか?
  ・あなたの後をつける
  ・あなたのいる場所の外に車を停めて、あなたを監視する
  ・あなたの車やモバイル端末にGPSをインストールする
  ・あなたのパソコン、ノートパソコン、タブレット端末、携帯電話にスパイウェアをインストールする
  ・あなたの自宅に隠しカメラを設置する
  ・あなたの許可なく、電話履歴を調べたり、電子メールやテキストメッセージを検査する
  ・あなたが家族や友人といるときに、突然姿を現す
  ・執拗にあなたにメールを送る
  ・短時間に何度もあなたに架電する
  ・あなたに脅迫的または無礼な電子メール、テキスト、電話メッセージを送ったり、残したりする
  ・ソーシャルメディアを利用して、あなたを脅したり、威嚇したり、困惑させたりする
8. 別離後、あなたのパートナーはこれらの行為のどれかをあなたにしましたか?
9. あなたのパートナーは、このような行為によって、ハラスメント罪で起訴されたことが今までにありますか?
10. あなたのパートナーは、あなたの生活の中で他の人、例えば同僚、友人、または隣人に嫉妬していますか?
11. あなたのパートナーは、あなたの身だしなみ(例えば、体重、服装、髪形、化粧の仕方)を批判しますか?
12. あなたのパートナーは、あなたにパートナー望んでいるように考え、行動することを期待していますか?
13. あなたのパートナーは、アルコールや薬物への依存、失業、精神的な健康問題、経済的な心配など、人生における重大なストレスに直面していませんか?

(了)

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