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エグゼクティブ・サマリー 「知らないと損をする」 ファミリーバイオレンス・スクリーニングツールの重要性~家族法実務家のために~

カナダ司法省のレポート「知らないと損をする」を翻訳・公開します。
作成者:ルークス・プレイス
執筆者:
パメラ・C・クロス(文学士―法学士、非営利団体「ルークの場所」法務部長)
サラ・クラン博士(ゲルフ大学 心理学部博士研究員)
ケイト・マッズオッコ(法学士/経営修士候補者2020、トロント大学)
メイビス・モートン博士(ゲルフ大学 社会および人類学部准教授)
2018年2月

 カナダには、現時点では、家族法専門家(FLP)のために設計された普遍的なファミリーバイオレンス(FV)スクリーニングツール/手続きは存在しません。個々の弁護士は、FVに関する専門的な訓練を受けている者もいれば、そうでない者も多く、依頼者が親密な関係の中で虐待を受けているかどうか(あるいは虐待に関与しているかどうか)を評価するために独自のアプローチをとっています。
 この研究が示すように、ファミリーバイオレンス・スクリーニングツール(FVST)の使用は、他の分野(特に医療や家族法のメディエーションの分野)では、より一般的なものです。このようなツールを使用することは、依頼者や患者が彼らの人間関係における虐待についての重要、且つ、その問題と関連する情報を専門家と共有するのに役立ちます。(多くの虐待サバイバーが、情報を自発的に共有化することに消極的です)このようなスクリーニングツールを日常的に使用している部門の経験や知識を活用することは重要なことです。
FLPは、家庭司法制度に関わる人たちの最初の接点になることが多いのです。彼らは、弁護士と依頼者の関係の中で、可能な限り早い段階で虐待の履歴を把握し、子の最善の利益、当事者の法的権利、FVサバイバーの安全性を反映した決定を行う必要があります。
 安全重視の姿勢を貫くことの重要性は、いくら強調してもし過ぎることはありません。後述するように、オンタリオ州のファミリーバイオレンス死審査委員会は、ドメスティックバイオレンス歴と別れるまでまたは別れたばかりの時期が、家庭内殺人における致死率の1位と2位の危険因子であると一貫して認めています(2003~2016年)。
 検査済みのスクリーニングツールの使用と解釈、およびその限界を理解する方法について訓練を受けたFLPは、FVの存在をより迅速かつ正確に特定できるようになります。この情報があれば、弁護士は、適切なプロセスと結果の選択肢について依頼者と話し合い、法的助言を与え、指示を受け、証拠を集め、適切な場合には付随するサービスの紹介をするのにより良い立場に立てます。弁護士は、依頼者との専門的な関係の早い段階で、直ちに注意を必要とする安全性の懸念があるかどうかを知ることができます。
 本調査報告書では、FLPによる普遍的なFVスクリーニングの導入を勧告しています。この勧告を支持するために、まずFVの定義を示し、次に暴力が存在する一般的な家族の力学と家庭裁判所の訴訟当事者に対するトラウマの影響を検討します。更に、FVと家庭裁判所との関係を探り、家族法の文脈におけるスクリーニングの重要性を議論することで、勧告事項を裏付けます。
 また、報告書は、FVSTの特定と分析に使用される方法論の概要を提供し、リスクアセスメントツールとスクリーニングツールの違いを特定し、レビューに含まれる各FVSTの一覧と要約、および下記の2つのレベルで分析されたFVST全体の構造、形式、内容、提供方法、使用頻度、および結果・成果の共通性の分析も掲載しています。
  1.FLPが使用するFVST全体にわたる分析
  2.FLPが使用するFVSTと他の分野が使用するFVSTの比較による分析
 地域や対象者間の研究格差や差異が指摘されています。特に、先住民のコミュニティにおけるスクリーニングのトピックについては、研究ギャップが存在します。
 母集団、セクター、FLPに特化したFVSTの開発、管理、使用に関する最善の方法が特定されています。
 報告書の最後には、法務省、州・準州の法律家協会などがFLPの普遍的なFVスクリーニングを実施する際の支援となる勧告が記されています。これらの勧告は、その必要性を語っています。
  ・多様な依頼者に対応可能な共通ツールの開発
  ・ツール使用前の弁護士への訓練の義務付け
・2段階のスクリーニング・プロセス
  ・ツールを導入するために必要な追加時間を弁護士に補償するための法律扶助費
  ・この文脈におけるFVSTの具体的な要素を探るための継続的な研究は勿論のこと、様々なモデルを検証するための予備的な研究

(了)

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