見出し画像

GRI対照表(内容索引)の構成(1)

 今月は「GRI対照表(内容索引)の構成」について、二回に渡り掲載します。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 GRIスタンダードを利用してサステナビリティ情報を開示する企業の多くが、GRI対照表を作成して報告書やウェブサイト上に掲載しています。「GRIスタンダードの利用=GRI対照表の作成」と解釈されている方も多いかと思います。この投稿では、このGRI対照表とは何なのか、どのように構成されているのかについて、二回に分けてご説明します。

 まず、GRI対照表という用語についてですが、これはあくまで通称であり正式名称ではありません。GRIスタンダードの英語版ではGRI Content Indexと表記され、日本語版ではGRI内容索引と訳されています。索引(さくいん)とは、日常的に使う言葉ではありませんが、辞書によると「ある書物の中の語句や事項などを、容易に探し出せるように抽出して一定の順序に配列し、その所在を示した表。(出典:デジタル大辞泉)」を意味するとのことです。GRIスタンダードが求めるサステナビリティ情報が、報告書やウェブサイトのどこに掲載されているのか、ナビゲーション機能として容易に探し出せるように抽出して、その所在を示した表がGRI内容索引ということになります。

 今、日本では対照表という用語が普及しています。GRI対照表に併せてSASB対照表、TCFD対照表といった表を添付するケースも多いです。GRI対照表をGRI Comparison Tableと英訳する企業すらあります。しかしながら、国際的にはGRI Content Indexという名称で統一されており、GRIも日本語の正式名称としてGRI内容索引という正式な用語の利用を要請しています。今後はGRI対照表という通称ではなく、GRI内容索引という正式名称を使うことをお願い致します。

 このGRI内容索引の構成や内容は、GRIスタンダード(2021年版)の「GRI1:基礎2021」の中で解説されており、テンプレート(ひな形)が付録1、2として提示されています。付録1はGRIスタンダードに準拠する報告向け、付録2はGRIスタンダードを参照する報告向けです。「参照」の場合のGRI内容索引は、基本的には「準拠」のGRI内容索引の一部を取り出したものです。したがって、以下ではGRIスタンダードに準拠する報告向けのGRI内容索引構成をメインにご説明します。

 下は「GRI1:基礎2021」の付録1と2に示されるGRI内容索引のテンプレートです。左側が「準拠」、右側が「参照」の報告用です。「準拠」用を見ると、表がいくつかの項目で構成されていることがわかります。ここでは便宜的に、下記の四つに分けて内容をご説明します。なお、これは説明のために弊社で便宜的に区分したもので、GRIによる正式な区分ではありません。

出所:GRI1:基礎2021
  1. 利用に関する声明と利用したGRI1

  2. 一般開示事項

  3. マテリアルな項目

  4. 該当するGRIセクター別スタンダードの項目のうちマテリアルではないと判断する項目

 今回の投稿では「1.利用に関する声明と利用したGRI1」と「2.一般開示事項」について取り上げます。

1.利用に関する声明と利用したGRI1
 上段の一行目に記載するのは「利用に関する声明」です。サステナビリティ情報の報告対象となっている期間(開始日から終了日まで)を示します。さらにこの報告がGRIスタンダードに「準拠」したものなのか、「参照」しているものなのかを、ここで表記します。

 二行目には利用したGRI1の名称を記載します。2023年1月以降は、2021年の改訂版を使うことになるので、ここでは「GRI1:基礎2021」を記入します。

 三行目は、該当するGRIセクター別スタンダードの名称を書きます。GRIはセクター別スタンダードを順次公開していますが、2023年1月の時点で「石油・ガス」など三つのセクター分しか公開されていないので、今はここが空欄となる企業の方が多いと思われます。

2.一般開示事項
 中段は、全ての企業に報告が求められる一般開示事項です。どういった情報を開示するかは、GRIスタンダードの「GRI2:一般開示事項 2021」に開示事項のリストと解説が掲載されています。たとえば、「開示事項2‑1 組織の詳細」では、組織の正式名称、所有形態と法人格、本社の所在地、事業を展開している国といった情報を開示します。GRI内容索引の表の中に直接に情報を書き込むことは好ましくなく、通常は報告書の中やウェブサイトの中で提示し、GRI内容索引にはその掲載場所(報告書の頁番号、ウェブサイトのURL等)を記入します。

 なお、開示対象となるサステナビリティ情報には、省略が可能なものもあります。一般開示事項では、2-6から2-30までについては、いずれも理由を挙げて省略可能です。一方、2-1から2-5までは省略は認められておらず、全ての企業が情報開示しなければなりません。中段の右側は省略の理由などを示す部分ですが、2-1から2-5まではここに、「グレーの欄は該当しないことを示す。・・・・」との説明があり、記入できないようになっています。すなわち、2-1から2-5は省略不可であることを示しています。
 
 さらに、一番右の行は「GRIセクター別スタンダード参照番号」を記載する欄ですが、ここもグレーになっています。一般開示事項はセクター別スタンダードの開示とは関係ないので、ここも記入は不要です。

 

 なお、省略する場合には、その理由等について一定の説明が求められます。詳細は「GRI1:基礎2021」の要求事項6に解説されています。省略の理由は「該当せず」、「法令による禁止」、「機密保持上の制約」、「情報が入手不可/不完全」の四つに区分されています。それぞれに具体的な説明が求められます。たとえば、「法令による禁止」を理由とする場合は、その具体的な法令名を説明する必要があります。 一般開示事項で、2-6から2-30までのどれかを省略する場合、どの事項を省略するのかを示し、その理由を上記の四つから選びます。そしてそれぞれに説明を付け加える必要があります。省略の理由として、四つ以外の理由を提示することは認められていないので注意が必要です。 

 次回は、後半として「3.マテリアルな項目」と「4.該当するGRIセクター別スタンダードの項目のうちマテリアルではないと判断する項目」についてご説明します。 
**********************************

IDCJ SDGs室では、毎月1,2回発行しているメールマガジンにて、SDGsの基礎からトレンドまで最新情報を配信しております。メールマガジン登録ご希望の方は、以下よりご登録ください。購読は無料です。

https://www.idcj.jp/sdgs/mailmagazine/


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?