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「等分除・包含除」という考え方が、いかに大切かについて

小学3年生で、わり算が出てきたとき、わり算には2つの使い方があると習います。

①「18個のあめを、3人で等しく分けると、1人何個になりますか。」
・・・というタイプのわり算と、・・・

②「18個のあめを、3個ずつ分けると、いくつに分けられますか。」
・・・というタイプのわり算です。

①を等分除、②を包含除、というそうです。
私も2つのわり算の使い方は重視していましたが、これらの言葉を知ったのは最近ですので、言葉自体は、さほど重要ではありません。

この2つは・・・

(わり算を2つに)分類しなければいけないので、分類しているわけではなく、

「わり算はこういうふうに使えるんだよ」という考え方が便利だし次にもつながっていく、というだけの話なのに…

悪意をもって話を歪めようとする人もいるようです。
学校や、教員に対するヘイト行為にしかみえません。

初期段階で、「①ある数を等しく分けたいとき」、あるいは、「②ある数の中に、また別のある数がいくつ含まれているかを調べたいとき」

・・・わり算を使えばいい、と判断できるので、それだけで十分に有効です。

さらに、自然数の範囲を超え、小数や分数が入り、抽象度が増してくると、ますます、この2つのわり算の使い方(考え方)が大切になってきます。

この件については、下のリンク先の解説記事で扱っています。
例として挙げている問題は

問1)「1㎡の花だんに、2.4Lの水をまきます。
2.5㎡の花だんには、何Lの水をまくことになりますか。」

問2)「3.5㎡の花だんに、8.4Lの水をまきます。
花だん1㎡には、何Lの水をまくことになりますか。」

問3)「1㎡の花だんに2.5Lの水をまきます。
4Lの水では、何㎡にまくことができますか。」

また小数・分数だけでなく、文字式が入ってくると抽象度がさらに上がります。

特に、中学数学に入り、方程式の文章題から式を(自分で)立てるとき、これらのかけ算・わり算の使い方が身についているかどうかで、差が出てきます。

この件については、こちらの解説記事で扱っています。
特に、「速さ」という〔単位〕の取り扱いを題材として扱っています。

この解説記事では、1つのまとめとして・・・

等分除 → 単位(単位あたりの量)を求める計算

包含除 → 単位(単位あたりの量)を使う計算

・・・と、しています。

事実、この2つのわり算の使い方を意識できていれば、化学や物理など高校理科の計算問題も、難なくこなせます。

問題集の発展問題の解説の式に「A×B×C÷D×E÷F」のような式がのせられていることも多いですが(注:私だったら、こんないっぺんに式にせず、少しずつ必要な数値を積み重ねていきます)、・・・

この式に出てくる、×B、×C、×Eなどのかけ算や、÷D、÷Fなどのわり算は、すべて算数の段階で勉強した、かけ算・わり算の使い方を組み合わせているだけです。

また、実際には「等分除」の考え方は、比較的早い段階で意識しないでも済むようになってきます。

なぜなら、この演算は、〔単位〕の定義そのものだからです。

例えば、化学でモル濃度〔mol/L〕という単位があります。

これは、「溶液1Lあたりに含まれる溶質の物質量(モル数)」を示す単位です。

ですので、単位の意味から・・・

例題1)溶液3Lに溶質0.6molを含む溶液のモル濃度を求めよ
→ 溶液1Lあたりの物質量を知りたいので、0.6を3でわって、0.2mol/L

例題2)溶液500mLに溶質0.15molを含む溶液のモル濃度を求めよ
→ 500mL中に0.15molなので、1Lあったら、その倍の0.3mol、よって、0.3mol/L

と、等分除の考え方の前に単位の意味から自然とみえるようになります。
また、〔mol/L〕という単位そのものが、「mol÷L」という意味なので、そちらからのアプローチも可能でしょう。

もちろん、すぐにみえないという人は等分除の考え方からおこしていくのも、1つの手でしょう。

3Lで1Lあたりを調べたいときに3でわればいいというのと同じだから、0.5Lで1Lを調べたいときも0.5でわればいいと考えてもいいです。

また、そもそも、わり算はわり算です。

では、わり算とは何か?・・・といえば、
単にかけ算の逆算とおさえるのは、もったいなく、・・・

わり算とは、・・・
わる数を1としたとき、もとの数(わられる数)がいくつにあたるかを調べる演算・・・です。

これも、けっして後から出てくる話ではなく、小学3年のわり算の導入時から等分除・包含除の使い方と平行して進められている、「〇倍の計算」の単元で、じっくり熟成されていっている考え方です。

上の例題2を、式にすると、500mL=0.5Lなので、
「0.15÷0.5」という式になりますが、これはまさに、「0.5」を1(L)としたとき、0.15がいくつにあたるかを調べている計算になります。

正に、等分除の考え方そのものです。

最近強く考えているのは、「0.15÷0.5」の形で1あたりの量を求めてるとみえるようになってほしい…ということです。

個人差はあるでしょうが、高校生になれば小学生のときよりは情報処理力が上がっているでしょうから、数学が苦手とか、わり算の使い方があいまい、という人も、最初からこちらでアプローチしてもいいでしょう。

また、包含除についてですが、次のような問題を考えてみましょう。

例題3)モル質量M(g/mol)の物質m(g)の物質量(モル数)を求めよ。

・・・モル質量は1molあたりの質量なので、m(g)の中にMがいくつ入っているか?というアプローチから、m÷Mより「m/M〔mol〕」と考えるのが、すんなりしていると思います。

でも、これもわり算の本質的な意味
「わる数を1としたとき、もとの数(わられる数)がいくつにあたるかを調べる演算」・・・から、

Mを1としたとき、mがどれだけにあたるか?という、比の考え方から、「m/M〔mol〕」とできるのなら、それにこしたことはないでしょうね。

ただし、そんなに無理する(無理させる)ことはなく、m(g)の中にMがいくつ入っているか?というアプローチで、十分です。

もちろん、上の比の考え方の方が使いやすい、という人は、そちらで考えればいいです。

でも、このmの中にMがいくつ入っているか?という(包含除の)考え方は超便利ですし、

物理などでどこから手を付けたらよいかわからないような難問でも、この視点からアプローチすると具体性が増し、解法や解釈方法が、スカッとみえてくることも多々ありますので、技としてストックしておくことを、おすすめします。


以上です。ありがとうございました。
執筆:井出進学塾(富士宮教材開発) 代表 井出真歩

『算さば(算数でさばく高校化学計算問題)』シリーズで、こちらのアプローチから高校化学(たまに物理)についての解釈を進めています。
そちらも、よろしければどうぞ。


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