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ノンシュガーの軌跡 『ガチャっと☆神アイドル大けんきゅう!』ノンスイートホットペッパーチリペッパー!

『ガチャっと☆神アイドル大けんきゅう!』

2023年4月29日(土)J:COMホール八王子で行われた、
NonSugar単独ライブイベント『NonSugar 2nd EVENT「ノンスイートホットペッパーチリペッパー!」byプリパラ』

こちらで披露された朗読劇『ガチャっと☆神アイドル大けんきゅう!』(脚本:福田裕子先生)が大変に素晴らしかったので、書いてみる記事です。

場面は神アイドルGPから、それなりの時間がたったプリパラ。
こっそりと神アイドル研究所を開設するウサチャとのん。
客席のファンにも声をかけて、神アイドル研究員にしてしまいます。

  • ここで我々は、ノンシュガーを「推す」一員として、彼女たちが神アイドルとなる努力のとても具体的な場面を共にすることができるという寸法です。

ウサチャが作った神アイドル研究マシン。そこから排出されるキャンディを食べると神アイドルのオーラを体内に取り込み、神アイドルの思想や振る舞いを学ぶことができます。

  • ノンシュガーの3人に、それぞれらぁら、みれぃ、そふぃが憑依します。ここはもちろん、声優である田中美海、大森日雅、山下七海3名の演技力とパフォーマンスが発揮される見どころですし、セレブ→クール、ナチュラル→ポップ、妹→姉というキャラクター同士の化学反応も見どころです。特にちりの「私の花瓶の中のお花ちゃんたち」には、鳥肌が立ってしまいます。

  • もちろん、福田裕子先生脚本ならではのギャグが随所に挟み込まれます。

    • クラゲの豆知識ギャグ(この辺りで福田先生脚本と確信)

    • プリパラマスコット不穏バイトギャグ

  • などなど、プリパラの世界観ならではのギャグで駆動していきます。

そして、ノンシュガーはボイスレコーダーを見つけ、録音を聴き始めます。
これは、神アイドルGP準々決勝、そらみスマイルVSノンシュガーの後の反省会をウサチャが録音したものです。

このボイスレコーダーのパートが、この朗読劇の醍醐味と言っても過言じゃないクマ。

  • ウサチャはその几帳面さや勤勉さからして記録として本当に録音していそうですし、

  • この録音によって、われわれは本編#134話『バレンタインは甘くない』をアリありと想起して、当時の彼女たちのライブ。そしてその負けっぷりの光景を、懐かしさの中で、しかしとても鮮明に携えたまま、この朗読劇、そしてこのライブ全体に向かっていくことができるわけです。

  • これは福田先生のTwitter Spaceでのお言葉ですが、長丁場のライブの中で、ボイスレコーダーによる回想シーン(録音)を挿入することで、少しでも演者の3人が落ち着く時間を作る意図があったようです。

  • しかしながら、該当部分は録音とはならず、3名が生アフレコで演技をした上に、ボイスレコーダー風のエフェクトを掛けるという仕掛けとなっていました。

  • 脚本家・声優・音響という三者のプロの技術がぶつかり合い、この回想シーンが生まれたといえるのではないでしょうか。

  • そのおかげで、我々は、神アイドルGP準々決勝直後の、ノンシュガーにとってこれ以上なく大切な一場面に、さながら立ち会っているかのような息遣いを感じながら、しかし懐かしさの中で思い起こすことができました。

  • さらに、反省会で語られるのは、のんのそらみスマイルへの素直で正確な分析と評価。90話「神アイドル始めちゃいました!?」で描かれた、ちり初めてのプリパラで教え導いてくれたそらみスマイル。115話「ひびけ!神アイドルグランプリ!」で、ペッパーがサパンナのプリパラの街頭テレビを遥か遠くから眺め、プリパラへやってくるきっかけとなった場面。それぞれのプリパラへの大好きな気持ちと憧れが語られます。

  • 我々は、ノンシュガーのこれまでの軌跡に想いを馳せずにはいられません。

そして、眼差しは徐々に時を下ってきます。

夢を語るノンシュガー。もっともっと可愛いコーデをしたい。もっといろんな曲を歌いたい。ノンシュガーで単独ライブをしたい。ファンのみんなに笑顔を届けたい。

  • この決意の先には、もちろん、アニメ放送終了から4年が経過したのちに開催された。2021年3月6日(土)舞浜アンフィシアター「約束のてへペロピタですわ!」を一つの象徴とする、ノンシュガーの新衣装・新曲・イベントの開催といった活躍があります。

  • ここで神アイドルGP準々決勝を終えてらぁらママが語った「そらみスマイルには会場を巻き込む一体感とパワーがあった」という言が想起されます。

  • 我々はそれを踏まえて、アニメ放送後のノンシュガーの活躍。主にライブイベントでの彼女たちのパフォーマンスを観るにつけ、アイドルタイム#40話「パラ宿プルトラクイズ!」でも描かれた「パラ宿No1アイドル」としての矜持と風格を感じるとともに、神アイドルGP勝因としてらぁらママが挙げていた「会場を巻き込む一体感とパワー」をこれ以上ないほど目の当たりにしてきました。

録音で語られていた夢が全部叶った!そう語って、地の文へと着地します。

ノンシュガーのこれまでの軌跡をすべて想起し、彼女たちの神アイドルへの努力と決意を再確認して、カバー曲「Ready Smile!」へと入ります。

  • これはもちろん神アイドルGP準々決勝で、ノンシュガーを負かす際のそらみスマイル歌唱曲に他なりません。

「神アイドルだってなってみせるから」
神アイドルへの決意を新たに言葉にして、曲を終えるノンシュガー

もっと自由に
なるべく正確に
もっと高くもっと早く
私たちはまだまだ成長し続けますわ
いつかサパンナの王者に、
神アイドルになりたい。この気持ちだけは誰にも負けないんだから!
私たちのミラクルな友情で新しい扉を開くよ!

ノンシュガー

朗読劇の脚本
ノンシュガーの3人
音響チーム

の三者によって素晴らしい完成度を誇った朗読劇は、ノンシュガーのこれまでのアニメでの活躍、そしてアニメ放送後の活躍の軌跡をたどり、そしてそれを鮮やかに我々に想起させてくれました。
そして、ノンシュガーの神アイドルへの道のりは、これからも続いていくのだと、そう確信させてくれる素晴らしいイベントになりました。

神アイドルとアイドルたち

ノンシュガーとドレッシングパフェは、神アイドルに強い憧れをもった2チームです。アニメの放送が終了したのちも、ライブイベントをはじめとして、折々で「神アイドルになりたい」「神アイドルになる」と言表してきました。

物語とは、主人公のためにあると考えることもできます。あるいは、物語の因果の束は、主人公を起点として収束されるといってもよいかもしれません。これだけが物語の完成度の基準ではないにしろ、アリストテレス以来、部分が全体に奉仕し、全体が部分に奉仕するとった物語の構成をその卓越とするのならば、主人公を起点とした物語は、その卓越に寄与する場合が多いといえるのでしょう。

プリパラのアイドルたちは、その枠組に収まりません。
ノンシュガーとドレッシングパフェのアイドルたちは、「物語」という視点から見れば残酷なまでに、「神アイドル」を目指し続けています。

しかしそこに、物語への無私の奉仕者としての姿はありません。
「みんなトモダチ。みんなアイドル」であるプリパラでは、すでに神アイドルとなったそらみスマイルだけではなく。ドレッシングパフェも、ノンシュガーも、なんの打算も哀れみもなく、神アイドルを目指すことができるのです。

そして、我々はそのライブを目の当たりにし、舞台装置としてではない「ほんとうの主人公」として活躍し、神アイドルを目指す彼女たちのパフォーマンスの素晴らしさをありありと感じることができます。

ここに、物語というフィクションの限界を超え、パフォーマンスや演出を超えて、物語世界と我々の世界が地続きになる瞬間があります。

縦横無尽のギャグとデフォルメされた因果で描く鋭いストーリー展開によって、圧倒的な統一と説得力のもとに描かれたプリパラという物語(フィクション)が、
自ら物語の枠を超え、物語的因果の不在というリアリティをもってこの世界に着地する。それは逆に、この世界を「みんなトモダチ。みんなアイドル」である世界であろうとするベクトルを生み出している希望であるように感じられるのです。

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