見出し画像

【投げ銭】短編小説 クロスロードパズル「​宝」

―伊津 風美 (16才)

―ビー玉を感慨深く見つめる風美

―窓を見つめ呟く

風美「父さん・・・」
―小学生時代、ビー玉で父と遊ぶ場面を思い出す

父「ほらこれ、青と緑が地球みたいでキレイだねぇ〜」

風美「うん!すごぉぉ〜〜〜っく キレイ!」

―今に戻る。机の上でビー玉を転がす風美

―部屋のドアを開き呼ぶ母

母「風美、ご飯だよ」

風美「・・うん」

―机で転がしたビー玉を手に取り席を立つ風美

―食事のテーブルに座ってもビー玉を離さない風美

―それを見つめ不機嫌そうな母

母「・・・・風美!」

―なぜ名前を呼ばれたのかわらず、不思議そうな顔で母を見る風美

母「もう、いいのよ。それ、離しなさい」

風美「え・・・?」

母「・・・父さんはもういいのよ!!!」

―そう言って、風美からビー玉を無理やり取り上げ、ゴミ箱に投げ捨てる母

風美「父さん!!!!」

母「もういいって言ってるの!!!」

母「父さんはいないの!!!私達を捨てたの!!!」

風美「違う、違う・・、父さんは・・・!」

母「現に今ここにいないでしょう!!??」

母「お願いだから、お願いだから、もう、よして・・・。」

風美「とう・・さん・・・」

―6年前、父が寝ている風美に向かって話す

父「ごめんな、ごめんな、父さんの仕事がうまくいかないばかりに・・」

父「父さん、ちょっと行ってくるよ。風美が幸せでいられること願ってるからな」

―父が立ったすぐ後、目を開ける風美

―トボトボと玄関から暗い外にでる父

―あれから6年。

母「ね?風美、これじゃ私達、いつまたっても進めないよ。」

風美「じゃあ、なんでお母さん、夕飯いつも多く作るの?」

―風美の目線の先にたくさんに盛られた野菜炒め

母「・・・いつもの癖よ」

風美「いつもの癖って、6年前からいつまでたっても抜けないじゃない?!それって、心の何処かで父さんが帰ってくるの待ってるってことでしょ?!」

―何も言わない母の目から涙がにじむ

母「・・・・ック」

風美「ううぅぅ・・・」

―台所に二人の女の泣く声が響く

―場所が変わり工事現場、年末で忙しく、皆いそいそと作業している

―そんな中、白い息を吐きながら手を休めてロケットペンダントを見つめる男

男「もう少し・・・・」

工事長「おい!何やってんだ!伊津!!間に合わないぞ!」

男「あ、すいません!」

―暗い夜に煌々と照らされた工事現場にどこか嬉しそうに謝る声があった。

~終わり~

☆気に入っていただけたら100円の投げ銭をお願い致します^^

ここから先は

0字

¥ 100

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?