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注文住宅を契約する前に、決算書を見せてもらいなさい!

2019年10月21日更新
経営傾向を調べる方法を追加&
「決算書で確認すべきポイント」の見出しを変更

「契約した建築会社が、建設途中で倒産してしまった」

こういった話をたまに耳にする。そこで、建築会社の倒産に対する予防策を端的に取り上げてみた。(住宅を請負う会社は、工務店・住宅会社・ハウスメーカーなど様々な呼び方があるが、ここでは建築会社で統一する。)

建築会社が建設途中で倒産するとどうなるか?

建設途中の建築会社の倒産は、家づくりの不運の中でも最もレベルの高い位置に属す。契約した建築会社が、建設途中で倒産してしまった場合、どのような事が起きるのか主な例を挙げてみた。

1.支払ったお金は戻ってこない

先に支払っていた手付金・着手金・中間金などの代金が戻ってきたケースは聞いたことがない。戻ってこない話ばかりだ。ケースとしてはあるのかもしれないが、可能性はかなり低くく、全額ではないと思われる。

なぜなら、建主も数多くいる債権者の1人という扱いだからだ。ただし、優先的に債務の弁償が行われるのは、抵当権などの担保をもっている債権者である。そして、その次が破産管財人に支払われる報酬。その後、税金や従業員の未払い給料となるため、残念ながら一般客の債権は後回しとなってしまう。

現実的に考えると、お金がないから倒産するわけだから、支払ったお金はすでに何かで消えているだろう。無いものは払えないというわけだ。

2.工事が途中で止まったまま放置される

工事も途中で止まり、そのまま放置されてしまう。防水工事などが終わっていない場合、雨が降るたびに家は濡れてしまう。こういったケースで遭遇する確率が高いのは、構造躯体のままでの放置だろう。結果、どんどん劣化していってしまう。

多分、作業してる大工や職人も、お金を支払われていないわけだから、よほど人が良くない限り、気を使ってブルーシートで養生することもないだろう。

3.完成までに掛かる手間と費用が増える

建設中の家は、建主に引き渡しをするまでは、所有権は建築会社にある。契約したら建主の所有物かと思いきや、建設中の建物は施工している建築会社の所有物なのである。いくらお金を払っていても、引き渡しをされるまでは、所有権は建主にはないのである。なので、たとえ工事が途中で止まったとしても、自分で勝手に新たな建築会社を連れてきて、工事を再開するということはできないのだ。

倒産した建築会社が、きちんと法的な手続き(破産手続きなど)を踏んでいれば、窓口になる破産管財人などから通知がきて、契約解除のやり取りが可能になる。だが、手続きもせず夜逃げしてると、請負契約約款に基づいて、建主側から契約解除しなければならない。しかも、破産手続きをしてない以上、窓口になる破産管財人もおらず、大半は連絡が取れない状態なので、余計に手間をくう。

最悪な場合、お金が支払われていない下請け業者が、部材の引き上げたり、施工部位を解体して持ち去ったり、建物を占有するなどの可能性だってある。

また、完成保証などに加入していなければ、工事再開の引き受け先を自力で探さなければならない。完成保証の場合は保証会社が探してくれるが、そういった繋がりがない場合、多くの建築会社は、他社から引き継ぐのを嫌うのである。

なぜなら、建主とプランの打ち合わせもしていないし、自社の哲学に反する設計はしたくないと考えるところもあるだろう。また、工事も最初から監理してないため、どこにどういう不具合があるかもわからない。そして、撤去してやり直すなど、再開するのに追加工事が発生する分、やりなれていない見積もりや作業が生まれる。つまり、割りに合わないのだ。

また、そういう困ったところを狙っているハイエナのような建築会社がいるのも事実である。こういう建築会社に当たると、やっと完成した住宅であっても質が悪いことがある。

契約解除のやり取り、新たな建築会社探し、追加工事費用・・・中断した工事を再開するために、再度どの建築会社に依頼するかという問題は、結構厄介なのである。


黒字かつ資産がある建築会社は40%程度

株式会社TKCという、会計事務所や地方公共団体などに情報サービスを展開している企業がある。そこのTKC会員の関与先企業24万社超の決算書に集計されたデータを拝見すると、木造建築工事業=木造住宅などの木造建築物を手掛けている会社の、黒字かつ資産がある率は40%程度。つまり、60%程度は赤字経営だったり負債が資産を超過している状態なのだ。

もちろん、赤字だからといってすぐに倒産するわけではない。

いったいどのくらいの数が倒産しているのかというと、帝国データバンクが公表している「全国企業倒産集計2018年度報」によると、建設業は1375件、不動産業は230件。これでもどちらも2000年度以降最少である。

建設業だからといって全部が、注文住宅の請負をしているわけでもないが、破産手続開始の決定を受けた木造建築工事業を2019年から独自にチェックしてみても、平均月に5社くらいはある。

破産手続きなので、経営者が自主的に会社経営をやめる廃業とは違い、資金繰りがつかず、取引先への代金や従業員への給与が支払えなくなり、これ以上、会社経営が続けられない状態になったということを指す。ただ、破産手続きもせずに、夜逃げしてるところもいると思われるため、実際の倒産数はもっと多いだろう。


沢山の数を建てていても建築会社は倒産する

最近では住宅系の大型倒産はないが、2009年にまで遡ると、「富士ハウス」「アーバンエステート」がある。富士ハウスで契約済みの未着工物件が800件以上、アーバンエステートで約500棟の未着工・未完成物件があったと言われている。年間100棟レベルでも倒産事例はある。年間100棟建てていた住宅会社のケースだと、未完・契約後未着工の建物が60件ほどあったと言われている。

沢山棟数を建ててるからといって倒産のリスクがないわけではない。 年間何十棟だろうが、何百棟だろうが、何千棟だろうが、倒産している建築会社はある。

なぜなら、住宅建築業は、入ってくるお金も大きいが、出ていくお金も大きいのである。さらには、通常、契約したお客さんから入ってくるお金は、「着工前」「上棟時」「引き渡し後」というように分割のため、先に経費を支払うことも多々ある。つまり、資金繰りが悪くなりやすいビジネスモデルなのである。

このうねりに飲み込まれやすいのが、年間30~40棟辺りの建築会社だ。

なぜなら、年間20棟辺りまでは、営業マンを雇う必要もなく、少ない人数でなんとか回していけるし、固定費が少なくてすむ。だが、20棟を超える辺りから、それ以上の棟数を求める場合、人員を増やす必要があるし、事務所も広くするか、新たな拠点を設ける必要が出てくる。中には、モデルハウスを建設することろもあるだろう。いわゆる、成長のための投資が必要になる。

そのまま何事もなく上手く突き抜ければいいのだが、今の時代それはなかなか難しい。何かが原因で傾いてしまった時、それまで投資していた部分が、回収できないまま負債となり重荷になってしまい、耐えきれず倒産してしまうのである。

傾く原因には色々あるが、意外と多く聞くのは、「昔は良い住宅を作っていたのに、最近はどうも・・・」という内容である。20棟ぐらいまでは、社長の目の届く範囲なのでクオリティを保てるが、40棟にまで伸びてくると、社長が全部は見れないため、人任せになりクオリティが下がるのである。20棟辺りから経営の仕方がガラッと変わるため、「ものづくり」と「ビジネス」とのバランスが取りにくくなり、限られた会社しかその先にたどり着けないのである。

これまで住宅業界に携わってきて15年近く経つが、個人的な意見を述べるなら、これという“こだわり”を少人数で安定的に年間10~15棟前後を建ててる会社が、注文住宅を建てる多くの人にとって、一番良いのではないかと思っている。もちろん、人それぞれ求めるものも違うし、どの会社にも倒産のリスクはあるのだが、この規模の会社の社長は、「ものづくり」と「ビジネス」とのバランスが取れている人が多い気がする。

倒産したから詐欺罪で訴えても立証は難しい

倒産による被害を受けた場合、その建築会社に対して訴えを起こしたところで、犯罪を立証をしようにもかなり難しい。

例えば、計画的な倒産として詐欺罪を立証しようにも、取引の時点で「騙す」という意図がなければ、詐欺罪は成立しないとされている。たとえ、銀行への返済ができてなかったり、業者に代金を支払えてなかったとしても、取引の時点では破産の方針を決めておらず、返済や支払うつもりであったのであれば、詐欺罪は成立しない。

なので、既に請負契約を結び、契約に従った中間金の支払いであるなら、欺く行為とその故意とは認められないので、詐欺罪は成立しないという意見が多い。告訴するなら、欺く行為とその故意があったことの証拠を収集する必要があるとのこと。

そういったことを踏まえると、一個人で相手を告訴するということは、かなり難しいと思われる。こういう状況は、同じように被害を受けた方々と被害者団体をつくり、情報を共有して立ち向かうしかないだろう。「富士ハウス」「アーバンエステート」ような大型倒産の例だと、経営者に対して賠償の判決が下されているが、当然、相手にも弁護士がいるわけで、結果、賠償金額が減額になったり、確定するまでに長い年月が掛かっている。

倒産の被害にあってしまったら、少なくとも一人で抱え込まず、弁護士ドットコムのような弁護士・法律系のポータルサイトなどからでもいいので、相談することでしょう。

完成したときに一括で支払えばいいのではないか?

注文住宅の支払いのスケジュールは、請負契約時1割・着工時3割・上棟時3割・引き渡し時3割というところが多い。ただ、建築会社の倒産の話をすると、こんな意見も出てくる。「他の商品と同じように、全部完成した時に支払うよう、一括後払いにしたらいいのではないか?」言いたいことは非常にわかる。実際、一括後払いが暗黙になっている地域は存在する。

結論から言うと、一括後払いにしたら、世の中の半分以上の建築会社は倒産するだろう。たとえば、2500万円の建物だとしたら、粗利益25%として、原価は約1800万円ほどになる。材料や現場の大工や職人は支払いを待ってくれないので、納品や工事の翌月には支払うことになる。また、契約から引き渡しまでを4~6ヶ月だとして、その間の人件費や経費も負担するとなると、よほどの資金力がないかぎり、会社は経営できないだろう。

ただ、「一括後払い」ほど極端でないにしても、支払いの時期をできるだけ遅くし、完成に近づくほど多く支払うように交渉することはできる。支払いに関しては、建築会社と建主との間で了解が取れていれば、どんな割合や分割回数でもいいとされているからだ。

ただし、気を付けてほしいのが、支払いの時期をできるだけ遅くすれば、その分、建築会社の資金繰りが悪くなり、倒産リスクが高まることは否めない。倒産被害にあわないようにするためにしたことが、かえって倒産リスクを高めてしまうのである。だから、建築会社もまずは断るだろう。たとえできたとしても、工事出来高の対価を下回る割合は止めておいた方がいい。たとえば、上棟まで終わっているのに100万円しか払っていないとか…

こういった資金繰りの問題に対して、余分な資金力がないが、銀行との関係性ができている建築会社の場合、請負契約を担保に、つなぎ融資を利用して、賢く資金をつないでいるケースもある。

支払いスケジュールを賢く交渉するなら、そういったリスクヘッジも同時に提案すべきだ。この方法を行なっていない経営者は意外と多い。「借りない(借りれない)」という返事なら、他で借りていて枠がいっぱいになっているか、財務状況が悪い可能性も考えられるので、注意が必要だ。


建築会社の倒産によるリスクを分けて考える

冒頭でも挙げたように、建設途中の建築会社の倒産は、家づくりの不運の中でも最もレベルの高い位置に属す。では、引き渡し後の倒産はどうなのだろうか?倒産によるリスクを「契約から引き渡しまで」と「引き渡し後」で、分解してみるとリスクがわかりやすくなる。

住宅を建設中に、契約した建築会社が潰れた場合については、冒頭でも取り上げた通りだ。

完成した新築住宅を引き渡した後に、施工した会社が潰れた場合、その会社が果たすべき住宅瑕疵担保責任はなくなる。住宅に瑕疵が生じなければ、住んでいる顧客が困ることはないが、保証や点検など、その建築会社の付帯サービスは受けられなくなる。

ちなみに、「住宅瑕疵担保保険」は、構造耐力上主要な部分および雨水の浸入を防止する部分に関する10年間の瑕疵担保責任を対象としているため、設備や建材の不具合などは対象外なのである。「倒れない」「雨漏りしない」といった、住む上で必要最低限レベルの保険である。法律で定められているため、普通はどの会社も住宅瑕疵担保保険には入っている。

このように、建築会社の倒産によるリスクを、

・契約から引き渡しまで
・引き渡し後

に分けて考えると、前者は、

・お金が返ってこない。
・完成させるのに手間とお金が余計に掛かる。

後者は、

・保証や点検などのアフターサービスの問題。

という風に分けられる。


保証や点検などのアフターサービスは第三者を検討

まずは、引き渡し後の倒産リスクによる、保証や点検などのアフターサービスの問題を取り上げる。実は、こちらは建築中の倒産リスクよりも回避しやすい。

保証や点検などは、法的に定められているわけではなく、あくまでもその会社の付帯サービスなのである。そのため、期間や時期、内容も、各社バラバラだ。最低限の基準で言えば、定期点検なし&瑕疵保険(10年)でも成り立ってしまう。

最近では、差別化や顧客との関係性を深めるために、社内にアフターサービスの担当者や専門の部署を設けているところもある。一見、建てた建築会社がその後の面倒を見るのが理想的に思えるが、その会社が倒産してしまえば、そのサービスもなくなってしまうというリスクがある。

また、小規模な建築会社になると、自社で対応したくてもできないケースは多い。アフターサービスにもコストが掛かる以上、採算の取れる(補える)構造にしておかないと、継続したサービスにはならないのだ。アフターサービスに掛ける費用を見ずに、利益を計算している建築会社も実は多い。

アフターサービスの費用を見ていない
 → 人件費等のコストが掛かり、割に合わない。
 → 人員が足りない(人員をさけない)
 → 言われたところを直せばいいという受け身の姿勢になったり、対応が遅くなりクレームになる。

そう考えると、保証や点検などのアフターサービスは、費用を払って、第三者が代行してくれる代行会社を利用する方が、お互いにメリットになる。

代行会社の有名どころを挙げると、以下の会社がある。

・長期メンテナンスシステム(日本リビング保証株式会社)
・家守りMUST(株式会社家守りホールディングス)

これらの代行会社は、建築会社が倒産した場合でも、保証サービスは継続される。また、日本リビング保証はマザーズ上場、家守りホールディングスはYAMADAグループなので、小規模の工務店よりは倒産リスクは低い。

ただし、引き渡し後は加入できないサービスなので、契約前に確認をしておこう。そして、どちらも建築会社が窓口になるサービスなので、その建築会社が代理店になっておく必要がある。2社とも全国展開をしているが、まだまだ認知不足もあり、建築会社が代理店になっていないこともあるだろう。その場合は、施主から促すことも時には必要だ。

このように、保証や点検などアフター部分を建築会社と切り離して考えれば、「最悪、引き渡しまでに倒産しなければいい」という極論が成り立つのである。


与信調査で建設中の倒産による被害を防ぐ率を高める

倒産のリスクがゼロの会社なんていないと思っておいた方がいい。だけど、建築会社が「自社が倒産した場合のことや倒産リスク」について、契約前に説明することはほとんどない。何百万円も前払いし、合計何千万円も払うわけだから、正直な話をしてほしいと思うのだが、聞いても「うちは潰れません」という返事をされるだけだろう。「うちは潰れません」なんて安易に言う人は会社のことを何もわかってないか、または言い切ってるだけである。従業員の場合だと、会社の経営状況を把握していることなどほとんどない。

だからこそ、契約の前に「与信調査」をおこなってほしい。

企業同士が取引をするBtoBの場合、何百万円ものお金が動く時、最初に与信調査を行う。例えば、建材店が工務店へ建材を卸す時、財務状況などを調べる与信調査を一番最初に行い、その結果を元に、「前払いでないと、販売できない」とか、「月末締め翌月末払いだが、与信枠は300万円まで。」などの判断を下す。しっかりしている会社は、倒産に対する保証を掛けているので、与信枠の金額が保証額だったりもする。こういうことが、BtoBの世界では当たり前に行われている。

だが、それ以上のお金を払う注文住宅は、企業と消費者との取引であるBtoCだからなのか、与信調査という意識が非常に低い。支払う相手の財務状況も知らずに、何百万円も前払いするという流れである。与信調査をするだけでも、リスクは軽減できるのである。

例えば、こんな傾向が出ていると注意や危険が潜んでいる。

1.未払いによるクレームの書き込み

今までの家づくりの流れの中で、建主側が簡単にできる与信調査(予防策)を挙げるなら、「◯◯会社(会社名) 評判」で検索することぐらいだろう。

良い情報悪い情報、色々と出てくるので参考にしづらいし、倒産の予兆に紐付けたら切りがないが、その中で注意したいのが、職人への未払いによるクレームだ。よくあるパターンとして、倒産の前兆である資金繰りが厳しい状態になると、まず建材や職人への支払いを遅らせる。ちょっと遅れる程度なら、理解も得られるかもしれないが、悪化して支払わないことがわかると、ネットに悪い書き込みが出始める。建材店のように企業であれば、ネットに書き込むことはほとんどないが、職人に多い、個人事業主でITリテラシーが低い場合は、自棄になって悪い書き込みが出てきやすい。

2.値引きをしてくる

その他、建築会社と接する中で挙げると、数沢山建てていないのに、値引きをしてくる建築会社は注意が必要だ。

注文住宅の値引きは、単純にその会社の利益を削っているだけなので、多売してない会社は、その分倒産のリスクが高まる。だから、まともな建築会社は値引きしてまで建てようとはしない。価値を理解してもらえる他のお客さんと契約すればいいからだ。値引きしてでも契約しなければいけない理由を考えると、少ない利益でも回さなければいけないほどの資金繰りなのか、他に受注予定がないなどが背景にあると予想できる。

3.『すぐに振り込めば◯◯◯万円引く』と煽ってくる。

通常の支払いは、着工前、上棟時、引き渡し後に、それぞれ約30%ずつというような等分割する。着手金も10%求めるケースもある。だが、着工前に50%~全額を払わせるのは危険信号。確実に倒産間近である。

以上。

これらは、どこに頼むにしても共通して言えるので、知っておくだけでも、予防策にはなる。


倒産予防視点だと依頼する建築会社は3つに分かれる

前項では、共通した予防策を取り上げたが、ここでは、依頼する建築会社によって、建設中の倒産による被害を防ぐ率の高め方を取り上げたい。

依頼する建築会社を大きく分けるなら、3つに分かれる。

1.上場企業
2.完成保証が使える建築会社
3.完成保証が使えない建築会社

「倒産しにくい」という視点でみれば、1・2・3の順になるが、完成する住宅の良し悪しとはまた別の話ではある。

1.上場企業

建設業以外も含めた上場企業全体の倒産率は、最も高かったリーマンショック後でも1%ほど(33件)。ここ数年は3件以内におさまっている。 仮に会社が傾いても、買収や合併する可能性もあるため、倒産の可能性は非常に低い。

2.完成保証が使える建築会社

完成保証は、建築会社の倒産によって生じた損害を補う保証である。すべての建築会社が利用できるわけではなく、財務内容等が一定の水準にある建築会社しか利用することができない。だから、「完成保証が利用できる会社は安全だ」・・・とも言い切れないのが現状である。なぜなら、加入条件も保証内容にもピンキリあるからだ。

例えば、公開している住宅保証機構株式会社の審査基準をみると、保証のレベルにもよるのだが、

・手形の不渡りを出したことない。
・銀行取引停止処分を受けたことない。
・一度も倒産歴がない。
・過去1年、税金の滞納がない。
・直近事業年度で、債務超過の状態でない。
・直近事業年度で、当該法人が保証する全業者の前払金保証限度額合計に相当する当期利益がある。


というところが、ポイントとして挙げられる。たしかに、この基準を見ると、冒頭で挙げた「黒字かつ、資産がある(債務超過でない)率は40%程度」なので、半分以上の建築会社は審査に通らない。

だが、多くの保証会社は、審査基準を公開していないため、審査内容はあいまいだ。例えば、保証料を多く払えば、財務内容が多少悪くても利用できるところもあるし、倒産した時はフランチャイズや組合内の会社が工事を保証するという完成保証もある。

こういう風に取り上げると、「どんな審査基準であれ、完成保証が適用されるなら安全」とも思われがちだが、完成保証に加入している建築会社だからといって、建てる建物全棟に自動に適用されているわけではない。個々の建物ごとに完成保証の申請を行う必要があるため、建築会社を通じて保険の加入手続きを行う必要がある。その際の保証料は、建築会社が払うケースもあれば、建主側が払うケースもある。

さらに、保証内容にもピンキリあることに注意してほしい。

・建築会社ごとの保証枠はどのくらいなのか?
・保証対象はどこまでなのか?
・保証内容はどうなのか?(引き継ぎ等)
・1棟辺りの保証限度額は何%なのか?
・追加工事費用の保証は?
・保証料はいくらか?支払いは誰か?
・工事代金の支払いに第三者が間に入るエスクロータイプか?
・免責事項はあるのか?


「完成保証」というネーミングが、追加費用もなしで最後まで建ててくれるイメージを与えるが、建築会社ごとに予算枠があり全てを保証できないこともあったり、全額ではなく対象金額の何%という計算で保証されたりする。大半のケースは完成できるようサポートしてくれる程度と思っておいた方がいいということである。しかも保証は、建築会社の法的な倒産手続き後になるので、破産手続きもせずに夜逃げして業務停止状態では、保証がすぐに適応されないリスクもある。夜逃げをする経営者は意外といるから厄介だ。

つまり、完成保証は、リスクを軽減はしてくれるが、入っているからといって、手放しで安心できるわけでもないということである。

3.完成保証が使えない建築会社

多分、多くの人がこのタイプの建築会社と家づくりをすることになる。極端な例を挙げれば、「デザインや間取りも気に入った。金額も収まった。ネットの評判も悪くない。だけど、完成保証は使えない。」というケースだ。

「住宅完成保証制度が使えない建築会社は経営が危ない」という話がある。完成保証は、ある一定の基準を超えていないと加入できないため、「住宅完成保証制度が使えない建築会社は経営が危ない」という話は、すでに経営状況の悪い工務店で今から登録しようともできないというところから来ているのだろう。

これにおいては、半分本当で半分嘘だ。安全のラインをどこに決めるかで、その基準も変わってくる。

財務内容の話になるが、たとえば下記のような建築会社があるとしよう。

・ここ数年、毎年当期利益は500万円の黒字だけど、過去の累積赤字が多すぎて、結果まだ債務超過状態の小規模の建築会社
・当期利益は、ここ数年毎年50万円の赤字だけど、利益剰余金がたくさんあるから債務超過にはならない小規模の建築会社

どちらもすぐに倒産するとは言い切れない。だけど、住宅保証機構株式会社の完成保証審査基準では、両方ともアウトだ。

両端に白と黒がある場合、真っ白であることには越したことはないが、世の中の大半はグレー、すなわちグラデーションの部分に属している。このグラデーションの部分を可視化すれば、買い手側はもちろん、売り手側にとっても有益になる。(だからこの情報を届けようと思った。)

そして、その可視化こそが、決算書(財務諸表)の事前確認なのだ。


決算書の事前確認に対する問題や課題

決算書は、会社の健康診断結果とも言われている。異常がある場合は必ず何らかの数字になって現れてくる。長年続いている会社であっても、派手に宣伝していて有名であっても、実は経営状況はよくないという場合もある。

ただし、決算書の事前確認には、

1.決算書を建築会社が見せようとしない。
2.経営者自身が決算書の内容を把握していない。
3.見る側(建主)の知識がない。


など、いくつかの問題や課題がある。

1.決算書を建築会社が見せようとしない。

決算書は一般客に直接見せる義務はないのだが、実は「株式会社」は決算公告の開示を、法律上義務付けられている(中小企業は貸借対照表のみ)。

例えば、中小企業が自社ホームページで公開する電子公告の場合、

・公開(掲載)しているURLを登記すること(登録免許税3万円)
(掲載は、URLを知っている人が見れる限定公開でもいい)
・貸借対照表を要旨ではなく全文公開しなければならない
・5年間公告を掲載しなければならない

となっている。

実際に、公開している建築会社を紹介しておこう。

・株式会社 加賀妻工務店
・株式会社 グレイスハウジング
・松尾建設 株式会社
・株式会社 白岩工務店

しかし、開示しなくても罰せられないので、ほとんどの建築会社は開示していない。その他の理由としては、

・決算公告という存在自体を知らない
・手持ちの現金がどのくらいか知られたくない
・負債や借金を知られたくない
・経営数字が良くない(債務超過等)ので知られたくない

なども、開示しない理由として挙げられるだろう。

ただ、開示することで、顧客、取引先、従業員、金融機関の全てにおいて、偽りのない信用を築くことができると考えている。

飲食やアパレルなど、少額だったり、お金と即交換されるものならば、法律はさておき、開示する必要はないと思うが、注文住宅の場合は、何ヶ月も掛かり、分割であれ何百万円というお金が先に払われることを考えると、行うべきことだと考えている。だから、開示することを啓蒙している。

2.経営者自身が決算書の内容を把握していない。

経営者自身が決算書の内容を読めないという事実もある。自身がわかっていないことは、お客さんに説明しようがない。これは小さな会社ほど多い。特に、職人気質でものづくり思考だと、とりあえずお金が入ってくればいいという、どんぶり経営なところも多い。経営者だからといって、経営を学んできているわけではなく、多くの人が手探りなのが現状だ。だから、小規模の建築会社の経営者向けに、経営勉強会を開催している。

3.見る側(建主)の知識がない。

当然見る側(建主)にも知識が必要だ。「赤字=倒産」という間違った知識を持ったまま、決算書を見ても迷惑になるだけだ。だから、このページでは、どんなところをどういう風に見ればいいかを伝えていきたい。


決算書を読む前に知っておいてほしいこと

決算書を読む前に、

1.どうなると会社は倒産するのか?
2.決算書で判断する際のデメリット
3.どのタイミングで見せてもらうのか?


を知っておく必要がある。

1.どうなると会社は倒産するのか?

冒頭でも挙げたように、木造建築工事業の60%程度は、赤字経営だったり負債が資産を超過している状態だ。だけど、「赤字」という言葉を聞いただけで、「この会社は倒産する」と不安がるのは間違いだ。会社は、赤字でも倒産しないし、負債が資産を超過していても倒産はしない。ずっと赤字であれば、いずれ倒産する可能性はあるが、赤字=倒産ではない。

会社が倒産するのは、会社経営を続けられなくなった時。主には、外部へ支払うための現金が足りなくなった(支払不能になった)時に、会社は倒産してしまうのである。つまり、赤字でも、負債が資産を超過していても、現金があれば倒産はしないということ。

2.決算書で判断する際のデメリット

決算書のデメリットは、中小企業の決算は1年に1回なので、現在の状況とのタイムラグがある。

決算期の2ヶ月後までに申告しなければならないため、例えば、決算期が3月で5月末に申告とした場合、契約直前の5月初旬に決算書を見るとしたら、前々期のものになり、14ヶ月ほどのタイムラグが生まれる。契約から引き渡しまでを、長く見積もって6ヶ月としたら、最大20ヶ月近くのライムラグがあるということになる。

なので、「契約から引き渡しまでに倒産しなければいい」という風に考えると、決算内容からその期間までは、8ヶ月~20ヶ月ほどのタイムラグがあり、それを見越した判断が必要になる。

また、会社が不正な会計処理を行い、虚偽の決算書を作成しているケースもある。いわゆる、粉飾であり、これは素人には簡単に見破ることはできない。倒産のリスクがある建築会社の中には、粉飾が疑われる決算書を作成している場合があるが、疑わしい会社は、会社の数字を公表したがらない傾向もあるので、見抜くというよりは一定のリスクとして捉えておく方がいいだろう。

3.どのタイミングで見せてもらうのか?

決算公告の開示は、法律上義務付けられてはいるが、おこなっていないことを前提に考えると、「決算書を見せてほしい」という意思表示をしない限り、閲覧することはできない。

お互いにとって一番良いタイミングは、(仮契約も含む)契約前でないだろうか。何千万円という契約を結ぶわけだから、その判断材料として、決算書を見せてもらうというのは、与信調査としては自然なことだ。

多分、建築会社は、今まで「決算書を見せてもらえませんか?」と言われたことはないだろう。だからこそ、まず確認できるのは、

・決算書をすぐに見せてくれるか
・経営の中身について説明できるか


というところだ。まずは、こういった姿勢を図ること大事なのであって、反対に断ったり、「ウチは大丈夫ですよ」とはぐらかしたりする場合は、見せられない事情があるということだろう。

見せてもらえない場合、

1.信じてそのまま契約する。
2.その建築会社と契約することを止めて、他に切り替える。
3.有料サービスなどを使い、財務情報を手に入れる。


となるが、1では今までと何も変わらない。2は他社を同時進行で進めていれば良いが、新たに探すとなると時間が掛かってしまう。なので、リスクマネージメントしながら合理的に進めることを考えたら、3が有効だ。

最初から、下記で紹介する有料サービスなどで、こっそりと財務情報を確認する方法でもいいが、やはり一度経営者に投げかけるのが良いと思う。そこでの立ち振舞いも判断材料になるからだ。もしかすると、見てもわからないだろうと高を括り、本物ではなく数字をごまかした紙一枚を提出してくるかもしれない。通常は、決算報告書というファイルに収まっているものだ。


有料サービスに財務情報の最新データが掲載されていないと危ない!?

では、財務情報を手に入れられる有料サービスには、どんなものがあるか?

与信調査の法人向けサービスでは、「帝国データバンク」「東京商工リサーチ」などのリサーチ会社があるが、個人利用はできない。あなたがもし、個人事業主か会社を経営していて、すでにこれらのリサーチ会社を利用しているなら、そこで財務情報を仕入れてもいいだろう。

個人向けには以下のサービスがある。

@niftyビジネス(登録無料、月額費用無料)

このサービスは、先程挙げた二社がデータ供給しているのだが、このサービス経由だと個人利用で財務情報が手に入るようになっている。会員登録をすれば利用可能だ。検索は登録しなくてもできるので、試しに予定している建築会社を検索してみるといいだろう。

検索すると、

・企業プロフィール情報
・企業財務情報
・人物情報

と出てくるが、必要なのは「企業財務情報」だけで十分だ。帝国データバンクで7500円(税別)、東京商工リサーチで3,900円(税別)で、帝国データバンクの方が財務分析数が多く掲載されている。会社によっては、どちらかしかない場合もあるし、掲載年数も違っていたりする。両方ある場合は、安い方の東京商工リサーチで十分である。東京商工リサーチの方が見やすい。情報量に関しては、株式会社・有限会社の建設業であれば、ほぼ網羅していると思われる。

逆に、出てこない場合は、新しい会社でリサーチ会社が調査できていないか、リサーチ会社が出向いたが断られた可能性が高い。多くの建築会社が表示される中で、表示されないとなると、それだけで怪しいのではないだろうか。

また、無料の会員登録時点を行い、購入を行う前の段階でも、わかることがある。購入ボタンを押すと、「2018年4月・2017年4月・2016年4月」という風に、過去の決算期が表示される。(期を選び「本文を表示」を押さないと、請求はされない。一応、課金確認画面が出る。)

基本は過去3期分の貸借対照表、損益計算書、財務分析比率表などの財務データを手に入れることができるだが、倒産している建築会社は、最新のデータがないケースが多いのである。たとえば、2019年6月に破産の準備に入った建築会社を調べると、「2015年7月・2016年7月・2017年7月」という風に、最新の2018年7月のデータがない。つまり、2018年7月の決算期の時点であまり経営状況がよくなかったのであろう。だから、リサーチ会社にも提出していなかったことが予測される。

リサーチ会社に一度登録されると、リサーチ会社は、年に一度の情報メンテナンスとして、決算後に任意で提出を求めてくる。決算期の2ヶ月後が税務署への提出期限なので、余裕をみても決算期から4ヶ月経っても最新データが掲載されていない場合は、注意が必要だ

もちろん、最新データがあるにも関わらず倒産している建築会社もあるし、最新データがなくても経営が続いている建築会社もあるが、倒産した建築会社のほとんどに最新データはないのである。

ちなみに、2018年1月~2019年9月頭までに倒産した、注文住宅の元請けをしてる建築会社77社を調べたところ、14社は最新データがあり、63社は最新データがなかった。つまり、倒産した建築会社の内80%は、財務情報の最新データが掲載されていなかったのだ。

それらを踏まえると、まず@niftyビジネスで予備検索して、ふるいに掛けるのだけでも、それなりのことがわかってくるである。

ただ、このサービスは少々システムが古いので注意してほしい。たとえば、決算期を選択し本文表示を押して、購入した場合、比較の一覧が表示される。そのページが情報になるので、PDFで印刷するなりして保存しておこう。どの会社の情報を購入したのか履歴がわからないし、多分、閉じてしまうと、また購入しなければならない可能性が高い。


国土交通省や都道府県庁では無料で閲覧できるが…

上記で紹介したのは有料のサービスだが、無料でも閲覧できる場所がある。

戸建住宅を手掛ける大半の建築会社は、建設業許可を取得しているのだが、建設業許可を取得している場合は、国土交通省の地方整備局や、都道府県庁に行けば、その許可業者の最新の財務内容や工事実績等に関する情報を閲覧することができる。

建設業許可にも種類があり、大臣許可業者は、国土交通省の地方整備局にて閲覧が可能。知事許可業者は、都道府県庁の建設関係の課にて閲覧が可能。

なぜなら、建設業許可を取得した業者は、法律により、事業年度終了後4ヶ月以内に決算変更届の提出が義務付けられているため、毎年、建設業課に決算書を提出しているからだ。

ただし、義務付けられているとはいえ、特に罰則もなく、建設業許可が更新される時に、まとめて過去5年分の決算書を提出してもよい地域もあるため、必ずしも最新データが閲覧できるとは限らない。

さらに、その閲覧の際、メモを取ることはできるが、複写や撮影することは認められていない。また、営業時間中いつでも自由に閲覧できるわけではなく、時間帯が定められている場合もある。そして、個人情報に配慮されているため、個人の氏名や生年月日など経歴が分かるような書類は、閲覧できないようになっている。

どうしても無料にこだわりたいなら、出向けばいいと思うが、限られた時間の中で、どの書類のどの項目のメモを取ればいいのかを把握しておく必要もあるし、メモの取り忘れにご注意を。


【決算書で確認すべきポイント】

では、「決算書の内容のどこの部分を見ていけばいいのか?」
押さえておきたい指標を取り上げていこう。

会計用語なども出てくるので、少し小難しいかもしれない。その辺りまで含めて書いていると、複雑になりすぎてしまうと思い、省略した。不明な用語は、グーグルなどでご自身で調べてほしい。

1.最新データがあるか調べる。

まずは、@niftyビジネスを使い、最新の決算書データがあるかと調べよう。最新データは必須条件。できれば3期分。タイムラグがあるので、長くて決算月から4ヶ月ぐらいは期間が空くと思われる。例えば、決算期が4月なら2018年4月のデータは、2018年8月頃に掲載されているだろう。

帝国データバンクや東京商工リサーチから、企業財務情報を手に入れた場合、

・貸借対照表
・損益計算書
・財務比率表

が収録されている。

帝国データバンク企業財務情報(サンプル)
東京商工リサーチ企業財務情報(サンプル)


よく「赤字」「黒字」と言われるのは、損益計算書の話。こちらは、1年間の経営成績の結果を示すものである。

貸借対照表は、「資産」「純資産」「負債」の3つの要素で構成されており、調達した資金がどれくらいか、それらの資金が現在どういう状況にあるかを示すもの。つまり、これまでの経営成績の結果みたいなものである。なので、倒産の可能性を探る上で一番活用するのは、貸借対照表なのである。

これらの財務情報を元に、経営分析を行い、経営の安全性を計るのだが、詳しくしすぎると色々な切り口があるため、ここではキャッシュフローや小難しいことには触れず、初歩的な内容としてわかりやすく

・利益と資産
・現金
・借入

の3つに絞って、倒産の可能性を探っていく。


2.当期利益と純資産を調べる。

まず第一に注目したいのが

当期利益当期純利益
・純資産合計
・利益剰余金合計

の3点だ。

まず「当期利益」。帝国データバンクでは「当期純利益」、東京商工リサーチでは「当期利益」という項目になる。ここがプラスだと、その期は黒字。マイナスだと、その期は赤字という風に捉えておけばいい。

そして「純資産」。帝国データバンク、東京商工リサーチともに「純資産合計」と表示されている項目になる。この項目がマイナスだと、負債が資産を上回っていることになり、債務超過ということである。

債務超過か否かで、良し悪しを判断することは、多くの基準で設けられている。例えば、上場会社であったり、完成保証の審査基準であったり、Jリーグの加盟チームであったり・・・

そして、純資産合計がマイナスだと「債務超過」ということで、負債が資産を上回っていることになり、注意が必要だ。赤字でこの状態であれば、ゆくゆくはお金が底をつくため、倒産の可能性が高くなる。

ただし、純資産合計がプラスであっても、その内訳は4パターンある。

1.当期利益がプラス、利益剰余金もプラス
2.
当期利益がマイナス、利益剰余金がプラス
3.
当期利益がプラス、利益剰余金がマイナス
4.
当期利益がマイナス、利益剰余金もマイナス

1は、当期利益が黒字で、過去の通算利益(利益余剰金)も黒字である。2は、当期利益は赤字だが、過去の通算利益がその赤字を上回る黒字である。3は、当期利益は黒字だが、過去の通算利益が赤字である。4は、当期利益が赤字で、過去の通算利益も赤字である。

注意したいのは、3と4のケースだ。純資産はプラスだけど、利益剰余金がマイナスの場合、債務超過ではないが「資本欠損」と呼ばれ、資本金を食いつぶしている状態になっている。3の場合は、当期利益は黒字なので将来性は感じられるが、4の場合は、いずれ債務超過になる可能性が高い。

3期分の変化を把握してみて、債務超過はもちろんのこと、資本欠損や、3期連続赤字であれば注意が必要だ。

 1)3期連続赤字の場合の判断方法

3期連続赤字でも、1年程度であれば、ある程度の安全性を計る方法がある。

たとえば、同じ経営であると前提した場合、記載されている当期利益(当期利益)が1年後も加算されるという仮定が成り立つ。その数字を元に、純資産合計を計算すると、どうなっているだろうか?純資産がプラスなるのか?それともマイナスになるのか?で、判断は変わってくるはずだ。

もちろんこれは理論上の話であり、前提が損なわれればうまくいかなくなることは承知してほしい。ちなみにこの方法は、Jリーグチームの財務基準にも採用されている。

Jリーグの場合、3期連続で赤字(当期利益がマイナス)の場合、そのマイナス額が、純資産の合計額を上回っていなければ、財務基準を満たすとされている。つまり、3期連続赤字で、3期目の2018年の当期利益が-500万円であっても、2018年の純資産合計が500万円を超えていれば、財務基準を満たすという判断のようだ。

3期以上連続の当期純損失(赤字)を計上したとしても、「前年度の赤字額が純資産額を上回っていないこと」を満たせば財務基準を満たすと判断される。


3.経営の傾向を調べる。

続いて、経営状態の大まかな傾向を知ろう。

貸借対照表にある主な項目、

・流動資産合計
 ・現金預金
 ・現金預金以外の流動資産
(流動資産から現金預金を引いた額)
・流動負債合計
・固定負債合計

の数字を確認しよう。これらのバランスを見ていくと、経営状態の大まかな傾向がわかる。これを一般的には「流動比率」と呼んでいる。

ここでは不安な順に3つの傾向を紹介する。

 1)自転車操業

「流動資産の合計」よりも「流動負債の合計」が大きい状態。

自転車操業

入ってきたお金をすぐに支払いに回さなければならないような、資金繰りの厳しい状態である。黒字であっても資金がショートしやすいため、倒産する可能性もある。

 2)不安定

「流動資産の合計」が「流動負債の合計」よりも大きい状態。

不安定

資金繰りの厳しい状態からは脱しているので、ひとまずは安心。ただ、長期借入金などの固定負債を、流動資産の中から返済することになるので、流動資産が負債合計より小さい状態だと、現金が潤沢にあるとは言えない不安定な状態とも言える。

さらに、流動資産を、「現金預金」と「現金預金以外の流動資産」に分けてみると、細かいこともわかる。

 3)成長

「流動資産の合計」が「流動負債と固定負債の合計」よりも大きく、「現金預金」が「流動負債の合計」よりも小さい状態。

成長

現金がある程度、潤沢にある状態である。お金があるため、事業への積極的な投資もでき、成長しやすい状態でもある。ただし、現金預金が流動負債よりも小さい状態ので、ハイリスク・ハイリターンのような大きな投資は難しい。新たにモデルハウスを建設したり、土地を買ってたりするなど、大きな投資をしているようだと注意が必要だ。

以上の3点を知っておけば十分だ。

「現金預金が沢山ある」という「成長」以上のケースもあるが、安全側に働くので、ここでは割愛する。

この傾向でわかることは、「成長 < 不安定 < 自転車操業」という順で倒産のリスクは高くなるということである。

さらに、前項の「債務超過」とのダブルパンチもあるので、倒産リスクを考慮するなら、

・「債務超過で自転車操業」は、レッドカード。またはオレンジカードで他の指標も含めて検討
・「債務超過で不安定」は、イエローカードで他の指標も含めて検討

という基準を設けてもいいのではないだろか。細かい基準を設けるなら、流動比率を計算して一般的な目安を参考にしてもいい。

流動比率(%)=流動資産÷流動負債×100

《数値の目安》
優良:200%以上  平均:120~130%  危険:100%以下


4.現金残高がどのくらいあるか?

続いて、最も大事な「現金残高」に注目しよう。

会社の現金残高が少なくなると、経営に余裕がなくなり、資金がショートして倒産してしまう。だからこそ、現金がどのくらいあるか?を知っておく必要がある。

その指標になるのが、「手元流動性比率」である。「現金預金手持月数」とか、「現金預金回転率」などとも呼ばれる。これは、会社の短期安全性を分析する経営指標としては、流動比率や当座比率、自己資本比率などよりも、より厳密に短期の支払能力を分析できるためよく使われる。銀行も企業の安定性を計る指標としてかなり重視しており、倒産危険度をいちばんよく表す指標と言っても過言ではない。

それを知るためには、2つの数字が必要だ。

・現金預金
まずは、現金預金。帝国データバンクだと、貸借対照表(資産の部)の「現金・預金」の項目になる。東京商工リサーチだと、貸借対照表(資産の部)の「現金及び預金」という項目になる。

・売上高
そして、売上高。帝国データバンク、東京商工リサーチともに、損益計算書に記載されている。建設業では、一般業種で「売上高」にあたるところを「完成工事高」と呼ぶので、「完成工事高」で表示されていることも多い。両方ある場合、「売上高計」の合計の数字を見よう。

それらの数字を元に、手元流動性比率(月)を導き出し、3期分の変化を把握してみよう。

手元流動性比率(月)=現金預金÷(売上高÷12)

この数字が、中小企業で1.5ヶ月分程度を確保できていれば、安全性があると判断される。逆に1ヶ月を切っていたら危険であり、0.5ヶ月を切っていたら倒産危険水域である。

ちなみに、帝国データバンクの財務情報では、財務分析比率表の「流動性」の中に「現預金手持日数(日)」が表示されている。日を月に計算し直して、そちらで確認してもよい。


5.適切な借入をしているか?

そして、現金に関連して「借入」にも注目してほしい。

倒産しないためには、現金が必要なことはこれまで挙げてきた通りである。だからこそ、現金が自己資本で足りなければ、倒産しないためにも、借入をしてでも補う必要がある。

「無借金経営が良い」「借金をするのは良くないのでは?」と思われがちだが、建築会社のように、小さな会社規模で大きな金額を動かすなら、なおさら銀行などの金融機関からの借入金と上手に付き合っていくことが必要になる。有り余るほどの現金を持っている建築会社なら借りる必要はないかもしれないが、そんな会社はほとんどいないのだ。

ただ、会社が傾いた時に、付き合いのない金融機関にいきなり融資を頼んでも貸してはくれない。つまり「金融機関と取引がない」ことがリスクになるのである。だからこそ、経営が順調な時に正しく借入れをし、期日までに返すということを繰り返すことで、金融機関との信用が築け、危ない時も助けてもらいやすくなると言われている。

もちろん、借り過ぎると返済で経営を圧迫してしまうが、永く経営をしていくことを考えたら、金融機関から適切な額のお金を借入れ、成長への投資をしていくことは、企業にとっては決して悪いことではないのである。

裏を返せば、小さな建築会社で無借金経営の場合、

・業績が傾いた時、耐えられない=現金が足りていない。
・成長への投資も十分には行えない=業績が上がりにくい。


などの、デメリットもあるということだ。

では、どの程度が適切な借金なのだろうか?

金融機関と上手に付き合っているかどうかを見る指標の一つに、「現金預金対借入金比率」がある。これは、「金融機関からの借入金の残高に対して、現金預金の残高をいくら持っているか?」を示す数字だ。

それを知るためには、2つの数字が必要だ。

・現金預金
まずは、現金預金。帝国データバンクだと、貸借対照表(資産の部)の「現金・預金」の項目になる。東京商工リサーチだと、貸借対照表(資産の部)の「現金及び預金」という項目になる。

・借入金
そして、借入金。帝国データバンク、東京商工リサーチともに、貸借対照表(負債の部)に記載されている、「短期借入金」「一年内返済の長期借入金」「長期借入金」の項目の合計になる。

それらの数字を元に、現金預金対借入金比率を導き出し、3期分の変化を把握してみよう。

現金預金対借入金比率(%)=現金預金÷借入金×100

現金預金対借入金比率の目安は、30%以上とされている。30%を下回ると、借り過ぎていると判断できる。


6.棚卸資産を調べる。

ここでは棚卸資産について、説明したい。棚卸資産とは、お客さんに販売するために仕入れ、製造した財産を指す。建売や土地の仕入れ以外だと、注文住宅であれば、未完成の住宅の原価が計上されたりする。

この棚卸資産の目安になる指標が、「棚卸資産回転期間」である。この数字は、今保有している手持ちの在庫がどのくらいの期間でなくなるかを示す数字であり、期間が短いほど、在庫が早くさばけ、資金繰りの良好を表す指標にもなる。

ただし、建設業の場合、棚卸資産では、

・建売や土地の売買
・未完成の住宅

の2つの視点で確認する部分がある。なぜなら、通常、棚卸資産ではその2つは合計し、計算されるのだが、それぞれ目安となる指標が異なるため、分けて見ていった方が安全なのである。

 1)建売や土地の売買

黒字で利益が出ているからといって、資産があるからといって、倒産しないとは限らない。黒字であっても倒産してしまう可能性があり、それを黒字倒産と呼ぶ。

建築会社もそれなりに棟数をこなすようになると、建売や土地の売買などの不動産業も行なっている会社も多いが、建築会社で黒字倒産の例として挙げられるのが、建売や土地の売買もしている不動産業も行なっているケースだ。

たとえば、販売用の土地を仕入れた場合、販売用の土地を仕入れた以上は、土地として売ったり、建売をして売らなければならない。当然、売れなければ過剰在庫になり、資金不足に陥り、黒字で資産もあるのに、倒産という流れに行き着いてしまう。

ここで厄介なのが、売れない場合だ。「仕入れ」というのは、売れないと原価に計上できない。売れない場合それらは在庫となり、現金が減り、貸借対照表(資産の部)の「棚卸資産」に計上されることになる。そして、「棚卸資産」が増えれば、現金が足りなくなり、資金繰りが苦しくなる。

それを知るためには、2つの数字が必要である。

・製品商品
まずは、棚卸資産の中に「製品商品」。帝国データバンク、東京商工リサーチともに、貸借対照表(資産の部)の「棚卸資産」の項目の中にある。

画像1

この「製品商品」の中に、販売用不動産が含まれるのである。

「製品商品」には、営業過程において販売するために保有するものも含まれるため、土地や建売以外も含まれていることがある。ただし、金額では土地や建売が圧倒的に大きいため、ここでは一緒にして考えることにする。

・売上高
そして、売上高。帝国データバンク、東京商工リサーチともに、損益計算書に記載されている。

それらの数字を元に、棚卸資産回転期間(日)を導き出し、3期分の変化を把握してみよう。

棚卸資産回転期間(日)=製品商品÷(売上高÷365)

不動産会社(上場企業)の棚卸資産回転期間(2018年度)の平均値は200日程度。

この数字が高いと、土地や仕入れても、建売を建てても、売れるまでに日数が掛かると予測される。1年(365日)を超えてたり、毎年大幅に増えているようだと、注意が必要だ。

 2)未完成の住宅

もう一つの方は、注文住宅にも大きく関わる部分になる。それが「未完工事支出金」だ。一般会計では「仕掛品」と呼ばれており、原料を仕入れてから、まだ完成していない製品を指す。注文住宅では、着工はしたけど、まだ引き渡していない案件を指す。

・未成工事支出金
棚卸資産の中の「未成工事支出金」。帝国データバンク、東京商工リサーチともに、貸借対照表(資産の部)の「棚卸資産」の項目の中にある。

画像2

こちらも同じ計算式になる。

棚卸資産回転期間(日)=未完成工事支出金÷(売上高÷365)

建設業の場合は、棚卸資産回転期間の平均は30~40日とされている。

この数字が高いと、引き渡すまでに時間が掛かっていることになる。2ヶ月を超えるようだと注意が必要だ。


7.本業が好調かどうかを調べる。

上記の「棚卸資産」にも関係する内容だが、棚卸資産が増えれば、現金が足りなくなり、資金繰りが苦しくなる。その辺りの現金を様子を可視化してくれる指標が、「営業キャッシュフロー」である。営業キャッシュフロー(営業活動によるキャッシュフロー)とは、本業によって現金がどれくらい増えたか・減ったかを示す項目なので、本業が好調かどうかの目安にもなる。

営業キャッシュフローを正確に導くには、小難しい話になるので、ここでは要約した内容でお届けしたい。(極力簡素化するために、純利益をベースにするなどの計算式にしている。)

賃借対照表2期分(前期・当期)、損益計算書(当期)を用意し、下記の要素を合計してみよう。2期分の比較した時、増加分は減算になる項目もあるので注意してほしい。

営業キャッシュフロー

・純利益(当期の数字)
・減価償却費(当期の数字)

・売掛債権の増減額(2期分の差)
(2期分の差を比較し、増加した分は減算、減少した分は加算
  ・完成工事未収金(工事未収入金)
  ・受取手形
  ・売掛金

・棚卸資産の増減額(2期分の差)
(2期分の差を比較し、増加した分は減算、減少した分は加算

・仕入債務の増減額(2期分の差)
(2期分の差を比較し、増加した分は加算、減少した分は減算)
  ・支払手形
  ・買掛金
  ・工事未払金
  ・未払金

・受入金の増減額(2期分の差)
(2期分の差を比較し、増加した分は加算、減少した分は減算)
  ・未成工事受入金

以上の項目の合計がプラスであれば、本業が好調な証拠である。3期分の決算書からは、2期分しか導き出せないが、変化を把握してみよう。

マイナスの場合は、商売活動において支出が収入を上回っていること示し、現金不足といえる。なので、何をするにも借入金に頼らざるをえなくなる。なので、黒字(当期純利益がプラス)でも、この項目のマイナスが続いていれば「黒字倒産」するリスクがある。

 1)どのくらい好調ならいいか?

では、プラスの場合、どのくらいプラスならいいのか?その指標になるのが、「営業キャッシュフローマージン」だ。以下のように導き出せる。

営業キャッシュフローマージン(%)=営業キャッシュフロー÷売上高×100

この数値の目安としては、一般的には15%以上だと競争優位性が高いと言われている。だが、著名な経営コンサルタント・小宮一慶氏によると、「7%以上」という見方もしているので、ここでは7%を基準に考えたい。


さいごに

まとめると、財務状況を調べるステップは下記のようになる。

1.企業横断検索で企業名を検索して、企業財務情報に掲載されているか調べる
2.最新の企業財務情報があるか調べる
3.決算書から、当期利益と純資産を調べる
4.決算書から、経営傾向を調べる。
4.決算書から、現金残高を調べる
5.決算書から、借入れを調べる
6.決算書から、棚卸資産を調べる
7.決算書から、営業キャッシュフローを調べる

繰り返しになるが、「決算書で確認すべきポイント」は、会計用語なども出てくるので、少し小難しいかもしれない。その辺りまで含めて書いていると、複雑になりすぎてしまうと思い、省略した。不明な用語は、グーグルなどでご自身で調べてほしい。

もちろん、100%安全がわかるものではないが、まずは、niftyのサービスに無料会員登録してみて、気になる建築会社を検索してみよう。自身で決算書が読めなければ、詳しい人に頼んでみるのもいい。何より、4000円~8000円程度で契約先の財務状況を知れるのだから、予防接種と割り切って活用してほしい。

診断方法は、細かいことを挙げればきりがないのだが、すでに倒産した建築会社の決算書から、上記の方法をベースにして検証した結果の記事(有料)を公開しているのだが、基本的にはこの方法で十分だと判断している。

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イーウチ@工務店経営学部

noteでは、注文住宅を手掛ける建築会社の倒産について決算書から読み取れる傾向を書いています。また、上場企業の住宅会社の決算書から読みとれることを、中小の工務店経営者の参考になるような内容で書いています。Twitterでは注文住宅を中心に住関連の情報を発信。

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とても参考になりました!私がコンサルしている施主の方も興味があると思いますので、シェアさせていただきます!
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