大規模集合住宅を散歩するのが好きです。特に、少し郊外にあって外界と隔絶されたような場所にある集合住宅は、独自の閉ざされた文化が生成されていたりして、ちょっとしたアミューズメントパークを訪れたような気分になれます。

そんなアミューズメントパーク感覚で散歩するのに適した横浜の大規模団地、マンションを３つ紹介します。

・ブリリアシティ磯子
横浜プリンスホテルの跡地に出来たマンション。高台にあるため、プリンスホテル時代の駅からのアクセスは「麓にあるマンションの最上階まで上がり、そこからホテル敷地に繋がる橋がかかっているのを渡る」という斬新なルートでした。
現在はどうなっているかというと、麓から専用のエレベーターでマンション敷地まで上がれるようになっています。このエレベーター、住民以外は有料で、Suicaをタッチすると１００円取られる仕組みになっています。Suica決済の有料エレベーターってかなりレアですよね。贅沢言えばコモアしおつみたいに斜め式エレベーターであって欲しかったのですが、残念ながら普通のです。

敷地内には、元々は伯爵別邸でプリンスホテル時代には貴賓室として使われていた建物をそのまま利用した懐石料理屋、「中村孝明貴賓館」もあり、わざわざ「観光」に行く価値あると思います。

・レイディアントシティ横濱
トンネルを抜けるとそこは異世界。ヤシの木が生い茂り、敷地内のいたるところにギリシャ風彫刻がちりばめられており、中心にはオベリスク。なんだか目がくらくらしてきます。「棟」を「カルティエ」と呼ぶ独特のセンス（カルティエ１、カルティエ２…と続く）も相まって、ちょっと他にない世界観です。
地図上で見ると、金沢八景駅から徒歩６、７分くらいで来れそうな距離なのですが、なんとこの本来の最寄り駅ルート、お城のように立派な「開かずの門」で固く閉ざされていて、使用することが出来ません。門の外が隣接する工場の私道のためだそうです。そのため住民はバスを使ってわざわざ隣の金沢文庫駅を利用しています。
そんな隔絶された敷地の中には、食べログ上位のケーキ屋さん「オ・プティ・マタン」があるので、観光で来た際はぜひ立ち寄ってみてください。モンブランが絶品です。

・若葉台団地
どの駅からもバスでしかアクセスできない地域をバブル時代に大規模開発するも、途中でバブルが弾けてしまい、今でも法律上は「未完成」の団地です。大幅値下げ販売したため、先に定価で買ってしまった住民が訴訟を起こしたことでも有名です。
未完成とはいえ、最盛期は２万人以上、今でも１万５千人が住んでおり、生活に必要な店はだいたいそろっていますし、ビルが何十棟も立ち並ぶ様子は壮観です。敷地を余すところなく散歩しようとしたら半日以上かかると思います。写真の独特なグラデーションのデザイン、建設当時は憧れの最先端だったのでしょうか。

・洋光台団地
駅前なので「外界と隔絶されている」という条件は満たしていませんが、洋光台駅自体が微妙に通勤に不便な場所にあるんですよね。建設当時は入居倍率５０００倍を誇る超人気のニュータウンでした。ベランダのかわりに狭い「室外機置き場」がずらーっと外側に並んだマンションの作りは、当時の感覚ではモダンだったのかもしれません。
私のおすすめ店は「駅そば」。駅の立ち食い蕎麦ではなく、団地内にある蕎麦屋の店名です。昔は団地から東京や横浜に通勤するお父さんがたちが朝食を食べたり、飲んだ後に〆の１杯を食べてから帰宅していたのでしょうが、住民が高齢化した今、すっかり老人たちに「だらだら昼飲みスポット」と化しています。美味しいかと言われると……ですけど雰囲気は最高です。

・コットンハーバー
ベイサイドにタワマンが５棟が建っている最先端エリア、のはずなんですけど、なぜだか非常に牧歌的なんです。駅から遠いし、周りには寂れた工場以外に何もないし、唯一のスーパーはBGMで延々と演歌が流れてるし。
エリア内の公園には、かつて勝海舟が設計した砲台こと「神奈川台場」の遺構が残っているので、歴史好きの人なら興味深いかもしれません。＜S＞単に石がちょっと積んであるだけなんだけど。＜／S＞
その神奈川台場の資料が展示されていた喫茶店は最近潰れ、現在残っている飲食店といえばエリア内の三本コーヒー流通倉庫に併設されたカフェくらい。
このカフェもあくまで流通倉庫のついでに運営されているだけなので、店員がいないことが多くて、大声で呼ぶと奥から倉庫の社員が出てきてコーヒーを淹れてくれます。コーヒー業者だけあって美味いのですが、なんか本来業務を中断させてしまって申し訳なくなります。
こんな牧歌的なタワマンなのですが、隣接する運河を三井が埋め立てて跡地にトリプルタワーを建てる計画が進んでいるので、寂れた雰囲気を楽しめるのは今だけかもしれません。