真実にはペンを

年賀状を書いている。
ガキ大将と一緒にいたずらをしたり運動では男勝りにバンバンやるしで女ガキ大将みたいなところがあった。何があっても絶対に泣かないからお前は特別に認めてやる、と男だけの秘密基地や冒険に入れてもらったときは、へぇ女子が泣くのってそんなに嫌なの、と意外だった覚えがある。

その私が初めて教室で泣いたことがあった。びっくりしたのとビビったのとで「嘘泣きだろー」と囃し立てる男子の中を、飛んで抱きしめにきてくれた女の子がいた。「どうしたの絃ちゃん!」とものすごい大声をあげて。「お、おまえ見てたのかよ」と、彼女の6年目にして初めての大声にびっくりする男子に「絃ちゃんが嘘泣きするわけないじゃん!6年間同じクラスなんだもん、それくらい見てなくてもすぐわかるよ!」とキッパリと言い放ってくれた彼女に年賀状を書いている。

彼女はいつも本を読んでいる一番大人しい少女で、ガキ大将は私が仲良しだったことも知らなかったと思うし、彼が彼女と6年間で交わした会話は数える程だったと思う。彼女のあんな大声を聞いたのも、あんなに鋭い目を見たのも、その時限りだ。考えて大声を出すのが苦手な彼女が、反射的に大声が出せる女の子であることを知った。6年目ではじめて。

とにかく、その彼女とは年賀状のやり取りをしている。何回か手紙も書きあったことがあった。でも、LINEは、お互いに送ったことがない。

年賀状迷惑、なんてのが上位検索で出ていたけれど、私は好き。だって、年賀状だから思い遣って繋がり合える優しく暖かい糸があるもの。
小中高の先生とか、喪の席くらいでしか会う機会がないけれどたしかに愛してくれていて愛している親戚とか。Facebookの定期報告のコメント欄で毎回交わされる「○○さん、今度こそ飲み行きましょうよ!」よりも、年賀状の「また会いたいな」の方が真実だと思うの。私にとっては、ね。

1月2日Twitterより

この記事が気に入ったら、サポートをしてみませんか?気軽にクリエイターを支援できます。

33

月坂架 絃 (Ito Tsukisaka)

フィドル奏者、化学者、薬学者、物書きを称する東京大学学徒が、本郷の小さな喫茶店で綴る編著作。WHO WE ARE (https://note.mu/ifname_i/n/n50774dab8065)

薫風日誌

つれづれなるまゝに、日暮らし、硯に向ひて、心に移り行くよしなしごとを、そこはかとなく書きつくれば、怪しうこそものぐるほしけれ。我を知らずして外を知るということわりあるべからず。されば己を知るものを知れる人というべし。ひとり灯のもとに文をひろげて、見ぬ夜の貴君を友とするぞ、こ...
コメントを投稿するには、 ログイン または 会員登録 をする必要があります。