見出し画像

野生のレッサーパンダの捕まえ方

びっくりするタイトルの研究論文を見つけました。

Improved Trapping and Handling of an Arboreal, Montane Mammal: Red Panda Ailurus fulgens(和訳:樹上生活の高山性哺乳類の捕獲とハンドリングの改善:レッサーパンダ)

野生のレッサーパンダの捕獲方法と、かなり刺激的なタイトルですが、狩猟や密猟のための調査研究ではありません。野生下のレッサーパンダの生態など調査研究のために、パンダに危害を加えることなく、安全に捕獲するための手法紹介です。

一昨年、野生のレッサーパンダ10頭にGPS付き首輪を装着し長期モニタリング(2019年9月〜)を行ったことがニュースとなりました。このGPS付き首輪をつける際に、レッサーパンダに与えるストレスを最低限にしつつ、パンダと調査員の安全を確保するための捕獲手法を紹介する論文となります。

ネパール等で野生のレッサーパンダの保全活動を行っているレッドパンダネットワークの記事によると、この長期モニタリングに先立って、GPS付き首輪がレッサーパンダの行動を阻害しないかを、ロッテルダム動物園でテストし首輪が行動を妨げないと、以下の様に記しています。

Prior to RPN’s collar study, the GPS collars were tested with two captive red pandas at the Rotterdam Zoo to evaluate their effectiveness and any possible disruption of the animal’s movement or behavior. The collar devices were found to be effective with no disruption. (要約:ロッテルダム動物園で飼育されている2頭のレッサーパンダを使ってGPS首輪のテストし、行動を妨げることはないことを確認した。)

レッサーパンダの捕獲方法

詳細は、論文を確認ください。簡単に説明すると、痕跡(糞や雪上の足跡)を見つけ、追跡し、樹上のパンダを発見。逃げない様に人を近くの樹も含めて人を配置、樹の根元に専用の罠(フェンス)を設置し、パンダが罠に入るのを待つ。罠にパンダが入れば、ネットで捕獲、麻酔投与、体重など測定、首輪装着し、解毒剤投与、放獣、麻酔効果が残っていることを想定し、捕食されない様しばらく追跡と監視といった手順で行われました。また、レッドパンダネットワークに所属するフォレストガーディアンが追跡/捕獲に協力していることが、捕獲成功率と捕獲時間短縮に大きく貢献していると記載されていました。

GPS付き首輪は、自動脱落機能があり、首輪を外すための捕獲は行っていないと思われます。自動脱落は60週とのことです。

GPS付き首輪を用いたレッサーパンダの行動調査結果記載されていませんが、行動内容については別の論文が発表されると思います。
本論文では、レッサーパンダの捕獲方法、パンダの測定および、測定結果が報告されています。また、60週間の行動調査の簡単なさわりとして、調査対象のパンダ(成体のオス3頭、メス4頭、亜成体のメス2頭、オス1頭)全てが9ヶ月後も生存しており、メス3頭は繁殖が確認され、亜成体の3頭は、新たな生息場所に分散したとのことです。これは装着した首輪が、レッサーパンダの行動を阻害しないことを表していると思って良いでしょう。

【2021-7-28:追記】野生のレッサーパンダの捕獲を紹介した動画を見つけました。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?