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野生のレッサーパンダはどんな所に住んでいる? ぱーと2

以前、noteにて、野生下のレッサーパンダの生息地の「植生」「標高」「気温」を紹介しました。

生息地の環境を知ることは、野生下のレッサーパンダを保護するための重要な要素となります。簡単に説明すると、レッサーパンダが見つかった場所と似た環境持つ他の地域でも、レッサーパンダの生息が期待できることから、似た環境を持つ地域をまるごと保全することで、野生下のレッサーパンダを守ることができるようになります。
また、レッサーパンダが生息している痕跡(採餌痕跡や糞)が見つかる面積を計測すれば、潜在的生息地の面積をもとに、レッサーパンダの個体数を推定することも可能となります。

この野生下のレッサーパンダの保全をより効果的にするために、また生息数をより正確に推定するために、生息地の環境をより詳しく知る必要が生じてきます。
以前のnoteで記した「植生」「標高」「気温」が同じであれば、レッサーパンダが生息するのかと問えば、答えは否となります。

たとえば、上記の「Red panda fine‐scale habitat selection along a Central Himalayan longitudinal gradient(中央ヒマラヤに生息するレッサーパンダの生息状況と生息環境)」を調査した研究論文では、以下の様に「竹の密度」「樹冠被覆率」「樹木種」が生息状況に影響を与えると結論づけています。

Although the study showed that bamboo abundance had a major influence, habitat selection was different across longitudinal zones. Both canopy cover and species richness were unimportant in eastern Nepal, but their influence increased progressively toward the west. Conversely, tree height showed a decreasing influence on habitat selection from Eastern to Western Nepal. (要約:生息状況は、標高によるが、竹の密度が影響を与える、樹冠被覆率と樹木種の豊富さは、東ネパールでは影響が少ないが、西ネパールに近づくほど影響があり、樹高は逆に東ほど影響が高い)

また、この「Distribution and habitat use of red panda in the Chitwan-Annapurna Landscape of Nepal:(ネパールのChitwan-Annapurna地域におけるレッサーパンダの分布と生息地利用について)」によると、以下の様に「標高」「傾斜」「方位」「水源の近さ」「竹の量と高さと被覆率」「季節的な降水量」が生息状況に影響を与えると結論づけています。

Based on the habitat use analysis, altogether eight variables including elevation, slope, aspect, proximity to water sources, bamboo abundance, height, cover, and seasonal precipitation were observed to have significant roles in the distribution of red pandas. (要約:標高、傾斜、方位、水源への近さ、竹の量、高さ、被覆率、季節的な降水量が、レッサーパンダの分布に重要な役割を果たしている)

このように、レッサーパンダの生息可能な環境は、いくつもの条件が必要なため、いままで生息可能と思われていた地域が、じつはレッサーパンダの生存に適していないと判ることがあります。これは、レッサーパンダの生息地の環境保全活動にも影響を与えると思われます。

とくに「水源の近さ」に関しては、以下の様な記述があります。

None of the signs were observed beyond 300m from water sources, indicating the import of proximity to water sources for red panda distribution. (要約:水源から300m 離れるとレッサーパンダの痕跡がなくなるため、水源の近さは重要です)

これは、標高、植生、樹冠被覆率などがレッサーパンダに適した環境であっても、水源が近くになければ、レッサーパンダは生息できないことを示していると思われます。

このような調査結果が報告されているからか、レッサーパンダとその生息地の保全を行なっているRed panda Networkは、密猟に対するパトロールや植樹などの他に、水源の確保も行なっています。

レッサーパンダのために水源を作ることは、他の野生動物にとっても水源を提供しますので、生態系全体に対して恩恵を与えることになります。
実は、Red panda networkは、レッサーパンダの生息地近辺で暮らす、地域住民や地域住民が飼育する家畜用の水源も作っています。

この、地域住民や家畜用の水源を作ることにより、彼らが清潔な水を求めて移動する時間を削減し、さらに感染症リスクが低減します。そして、レッサーパンダの生息地を乱す(例えば彼らの飼犬による偶発的事故や、家畜が野生動物の食料を奪うなど)ことがなくなります。

最後に紹介するのは、Red Panda Networkが作り続けていた水源は、昨年末から今年(2020年11月〜2021年1月?)に発生した大規模森林火災に際して、一部地域の燃焼を食い止めることに活用されたそうです。水源だけでなく、森林火災に対抗するための資材や訓練も提供しています。

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