見出し画像

ウルトラマンブレーザー第六話「侵略のオーロラ」が染みる

 またnoteから「連続投稿が途切れますよ」と言われた。無論、そんなことはこちらも百も承知だ。しかし、僕にはこの暑さで世間に公開する為の文章を考えたら脳が茹だって死ぬという確信がある。故にこのために死んでもいいと思えるほどのテーマがなければ書かないと決めていた。
 しかし、八月も終わりに差し掛かったこの時期に、僕にも理解ある彼くんことウルトラマンブレーザーが現れたわけだ。

 今回取り扱うのはウルトラマンブレーザー第六話「侵略のオーロラ」という話だ。
 ざっくりとあらすじを書くと、カナン星人のオーロラ光線により負の感情を刺激された機械が人類に牙を剥く話だ。
 このオーロラ光線、どうやら機械が人間に持つ負の感情を刺激して意のままに操るものらしいが、劇中の描写だと機械に自由意志を与える光線のようにも見える。割と大事にしてくれた人間には情のようなものが湧いている描写もあるし。
 ここでのポイントは決して機械の反乱を主題とした話ではないということだ。
 機械が人類に負の感情抱いているというのもカナン星人達の見解であり根拠はない。そもそも侵略を目的とする宇宙人が操っている時点で、それが機械の感情に拠るものなのかも怪しい。
 作中の描写としても操られた機械による被害の描写が少ない。というかカナン星人の侵略作戦はあくまで未遂で終わり、作中で操ったのは冒頭に出てきた乗用車とセスナ、コインランドリーの乾燥機クルルと、今作の科特隊ポジション「SKaRD」が持つ怪獣型の巨大ロボットアースガロンだけだ。
 機械の反乱が主題ならば、侵略宇宙人ではなく地球由来のテクノロジーにより機械が暴走して、被害が拡大していく様子を描くだろう。

 ではこの話は何を描いているのか。ここからはこの話のテーマを僕なりに考えていこうと思う。
 まず、第六話「侵略のオーロラ」(以下、この話)の主役について。ウルトラマンブレーザーの主人公はSKaRD隊長のヒルマゲント(以下、ゲント隊長)だが、第四話「エミ、かく戦えり」以降はSKaRD隊員一人一人にフォーカスして話作りをしている。この話ではSKaRDのメカニック担当バンドウヤスノブ(以下、ヤスノブ)が事実上の主役である。
 次に、ヤスノブの性格について。この話で描かれているが、彼はあだ名を付けて友人のように接するほど、機械に対する思い入れが強い。先述のコインランドリーの乾燥機もクルルと呼んでいた。
 また、頼まれた仕事を基本的に断らず、この話では抱え込みすぎて体調を崩している。しかし、それに対して不満がある様子はなく、不調だというゲント隊長のPCの修理を自分から申し出ている。
 この話ではヤスノブのこの機械への愛着と優しさがカナン星人の侵略を防ぐ鍵になる。
 最後に、カナン星人とヤスノブの会話について。カナン星人はヤスノブにオーロラ光線の効果と侵略計画について説明する際に、アースガロンの整備担当としてヘッドハントしようとする。当然ヤスノブは断るが、この時カナン星人は自分の体色と同じ柄の洋服を差し出し「僕と一緒に来なよ(着なよ)」とオヤジギャグを織り交ぜている。
 現実にも負担の大きいタスクを要求する割にノリが軽すぎる人というのは居る。本人なりに柔らかく頼んでいるつもりなのだろうが、オヤジギャグなんか言われた日にはドス黒い感情が湧く。
 なお、このシーンはヤスノブが唯一頼みごとを断ったシーンでもある。
 また、このあとのシーンで操られているはずのクルルがヤスノブの頼みを聞いているが、それは彼が真摯に向き合ったからだろう。

 ヤスノブを誘う時のカナン星人の態度、そしてヤスノブがクルルに頼む時の態度からこの話のテーマの一つに「相手に対するリスペクト」があると思われる。
 そしてもう一つ、操られたクルル、アースガロンが両方ともヤスノブの想いで正気(?)に戻っていることから「信頼」というテーマも読み取れる。

 「リスペクト」と「信頼」というのは作品のテーマとしては決して珍しいものではない。中には陳腐だと感じる人も居るだろう。
 僕もキャラクターがセリフとして「リスペクト」やら「信頼」と言っていたら説教臭くて受け付けなかったと思う。
 しかし、地球人同士ではなく宇宙人や機械を相手にすることで一種の寓話になっている。だからこそ、この話のテーマは胸に染みるのだ。
 ウルトラシリーズの名作エピソードといえば社会風刺がきいていて、世相に深く切り込み、子供たちのトラウマになりかねないほどビターなエンディングのものが多かった。
 「侵略のオーロラ」は人類が生み出した兵器が侵略に利用されるという展開はあれど、最後は人の想いが届き、爽やかに締められている。番組スタッフが「リスペクト」と「信頼」というテーマを描くならば前向きなエンディングの方がいいと考えたからなのかは分からない。そもそもこのテーマ自体僕が勝手に想像したものだし。僕以外の人にとっては単なる一エピソードかもしれない。
 それでも僕は「侵略のオーロラ」をウルトラシリーズの名エピソードと言いたい。暗く苦しい時代だからこそウルトラシリーズには前向きなテーマを描いて欲しいし、僕もそれを肯定していきたいと思う。

 まだ見ていないという方は是非公式You Tubeで見て欲しい。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?