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【読書コント】このご時世だから天使と悪魔もいろいろ思うことあるよね。

道を歩いている途中で500円を拾った。

歩いている途中でお金を拾ったことは人生で初めてだった。

こういった時、警察に届けるのが普通だろうなーと思った。拾ったお金を使うと罪に問われるというのも知っている。

ただ、今私の貯金は底をつき、アルバイトも出来ていない状況の私にとって500円は大切だった。カップラーメンだったら安いので4つ~5つ買える。少なくとも1日の食費がまかなえるのだ。

そんなことを考えながら少し汚れた500円を見つめているとうっすら女性の声が聞こえてきた。

女性の声:警察に届けた方が良いわよー。

私はあたりを見渡した。ここは平日の公園のベンチ。周りには2組の家族連れが遊具で遊んでいるだけでいるだけで、私に話しかけているような人は誰もいなかった。キョロキョロしている私を見ているかのように女性の声が話しかけて来た。

女性の声:私はあなたの心の中の天使。よろしくね。

陽気に話しかけている自称天使に対して最初は何かの冗談かと思った。改めて周囲を見渡しても誰もこちらに話しかけているような人もいない。

心の中の天使:すぐに500円を交番に届けましょう。落としている人が困っているはずですよ。

ずっと無視をしてしまっている自称天使に対して返事をしようと思った。なぜこの声が聞こえて来たかはこの際置いておいて、いったん、目の前の500円をどうするかすぐに決めたかったからだ。

私:そうですよね。やっぱり500円届けた方が良いですよね。

心の中の天使:あっ。声大きすぎです。もう少し小さい声で大丈夫です。

遊んでいる家族たちがチラチラこっちを見ている気がした。いきなり一人で座っている男性が大きな声を出したらそうなるか・・・。少し下を向きながらブツブツ話すことにした。

私:けど、この500円あれば久しぶりにご飯食べられるんだよね・・・

心の中の天使:その500円は他の人の物!他の人の物は使っちゃだめだよ!

私:それもそうか・・・。よし。決めた。警察に今から届けに行こう。

すると、今度はどこからか男性の声が聞こえてきた。

男性の声:俺はあなたの心の中の悪魔。よろしく。それで本当に良いのか?

今度は悪魔が現れたようだ。よく人の心には天使と悪魔がいて何かに迷ったら両方出てきて話し合うというケースを見たことがあるが、それが実際に今、私に起こっている。

心の中の悪魔:その500円を警察に持って行ったとして、今日のご飯どうするんだよ。何も食わなかったらどうなるかわかるよな?俺も消えてなくなってしまうんだよ!頼むから何か食べてくれよ!

私:たしかに・・・。もう丸1日何も食べてないしな・・・。

心の中の天使:ダメダメ!人の物に手を出しちゃダメ!

私:たしかに、法律違反はだめだよな・・・。

心の中の悪魔:丸2日ご飯食べなくてお前は我慢できるのか?

私:いや・・・もう無理かもしれない。よし買って来よう!

心の中の天使:ダメよ!

心の中の悪魔:いや、急いでくれ!

心の中の天使:絶対ダメ!目を覚まして!

心の中の悪魔:早くー!なんでもいいから食べてくれー。

私:うるせーんだよ!!!

心の中の天使と悪魔の声の大きさと熱の強さにキレてしまい、私は大声で叫んだ。

私:おい!天使よ。500円を警察に届けるとして、俺の食事はどうすんだよ

心の中の天使:あっ。おちついて・・・。声が大きいよ・・・。

私:うるせーよ。周りなんて関係ねーんだよ。

遊んでいた2組の家族がこっちをチラチラ見ながら急いで帰っていくのがうっすら見えたが今は関係なかった。

私:どうすんだよ。お腹すき過ぎて飢えたらどうすんだよ。天使であるお前は何か出来るのかよ。責任とれるのかよ。

心の中の天使:責任・・・。そんなの言われたことないよ。

私:俺のことはどうでも良いってことなのか?

心の中の天使:そんなことはないよ・・・。そんな怒らないで・・・。

心の中の悪魔:まぁまぁ。天使もあなたのためを思って言ったわけで。

私:おい。悪魔も悪魔だぞ。

心の中の悪魔:えっ。俺もですか・・・。

私:拾った500円使った時点で俺は犯罪者になるんだぞ。そうなるように、お前はそそのかしたことになるよな?

心の中の悪魔:いや・・・。そういうわけでなくて。お腹すいたので・・

私:自分の欲望のために犯罪犯すって正真正銘の犯罪者じゃん。俺。

心の中の悪魔:そうですね。。。

私:俺のことを本当に思ってくれているわけではないってことだよね?

心の中の悪魔:いや。そういうわけではなくて・・・。

私:じゃあどういうわけなのかな?

心の中の悪魔:あなたの希望に沿った形で悪い方をそそのかすのがこの形式のフォーマットになっているわけで。

私:フォーマットだからと言って犯罪者にしていいの?

心の中の悪魔:・・・。ダメだと思います。

私:そうだよな。いくら悪魔とはいえ、犯罪者はだめだよな。

心の中の悪魔:すいません。すいません。

私:あとさ。天使と悪魔ともさ。

心の中の天使・悪魔:はい・・・。

私:声だけって何なのかな。人と話すときは大体姿見せて、目を合わせて話すのが普通じゃないかな?

心の中の天使・悪魔:すいません・・・。今から出ます。

うっすらと天使と悪魔が姿を現した。僕がイメージした通りの天使と悪魔だった。そこにもまたイラッとしてしまった。

私:まずさ。2人とも、うっすいよね。目をこらして何とか見えるレベルだからもう少し強めにできない?

心の中の天使:・・・もうこれが限界です・・・

心の中の悪魔:俺はなんとか・・・。もう少しできます。

私:天使。悪魔は出来るって言ってるけど?片方だけ出来ないとかあるの?

心の中の天使:・・・・出来ます。

私:出来るなら1回でやろうよ。時間もったいないよ。

心の中の天使:すいません。濃くします。

だんだんと天使と悪魔が強く見れるようになってきた。

私:あと、ふわふわ飛んでいるのもどうなのかな。失礼じゃない?

心の中の悪魔:いや、我々は通常で飛んでいるので・・・。

私:君たちの通常は関係ないよ。今まじめな話してんだから。正座で聞いて。

心の中の天使・悪魔:はい。。。

天使と悪魔はふんわ~り地面に降り立ち、羽を閉じて正座をした。

私:よし。じゃあ。もう時間ないから話をまとめます。天使と悪魔の言い分はわかりました。この500円どうするか決めました。まず、この500円は交番に届けます。

心の中の悪魔:えっ。そうなると、お腹が・・・

私:最後まで聞きなさいよ。そして届けた後に日払いの仕事に行きます。そしたらお給料も今日中にもらえてご飯も今日中には食べれるから悪魔の希望も叶うよな。これでどう。

心の中の天使・悪魔:はい。それで大丈夫です。

私:今度からは2人でしっかりと話し合って妥協案を考えてから出て来て。お腹がすいたり犯罪者になる選択肢出されるとこっちもイライラしちゃうからさ。両方とももっと出来ると思うから、期待はしてます。

天使と悪魔は正座しながら下を向いている。

私:じゃあ、俺は行くね。じゃあ、またいつか会う時に会いましょう。解散

私は交番に向かった。500円を届けるために。


私が去った公園にて

心の中の天使:あんなうるさい人今までいた?

心の中の悪魔:いや、初めてだよ。

心の中の天使:500円のためにこんな怒られる?

心の中の悪魔:まさか正座までさせられるなんてね・・・。

心の中の天使:ふつうさ、こっちに怒ってくるってないよね?

心の中の悪魔:まぁだいたい、「そうか~」とか「そうだよな~」だけだね

心の中の天使:けどさ。結局、犯罪者にもならなかったし働きにいったから結果オーライって感じかな・・・?

心の中の悪魔:そうだね。まぁ。いい経験になったね。

天使と悪魔の触覚が突然東の方角へ向いた・・・

心の中の天使:またあいつ・・・お金拾ったみたいだよ・・・

心の中の悪魔:まじか~。めんどくせ~。

そう言って天使と悪魔はまた、彼のもとへ向かった。

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