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11.紗幕と鉄塔

ぼんやりと俯いたままで三声の歌が聞こえる
紗幕に映る私たちの影は
これからはどこにいるべきなのかな

「忘れないため」と言って向けたカメラの
その四角には何が写るの? 

いつか過去として見るそれらは誰として
私を写すのだろう

重なる足音がいつか居た海鳴りのようね
光と影の層 宛先不明のセリフは
響く本の音 なれなかった自分を書いた場所
それじゃあバス停のシーンから 3.2.1

ままならない歩き方も誕生日も
名前も忘れずいられるよ
未草が咲く土も夜の陽も夏の雪も
ある場所へ行ける

「どこまで続くの?」窓に手をつき
その四角から思う 鉄塔の向こう

終わりを自覚して見るそれらは
何として目に映るんだろう

もつれた矛盾ではいつからか歩けなくなって
わからないこともわからず
消息不明の姿を飛び越えてきたんだね
行き当たれば形に気づいたんだ
これは脚本にないセリフ


差し込む照明が夜に見た灯台のようね
光と五色の層 過不足のないセリフは
告げる白い色 なれなかった自分を照らした場所

吸い込み一息で言い切れば
ここから最後のシーンまで 3.2.1





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