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SIG-AUDIO #20 「室内/野外マイク収録・整音および効果音制作」が開催されました

IGDA Japan SIG-Audioのブログポストをnoteに移管しております。過去の活動については、以下のサイトをご覧ください。

講演情報

2023年06月23日(金)に開催された「室内/野外マイク収録・整音および効果音制作」へ、ご参加いただいた皆様、ありがとうございました。公開可能な範囲での講演スライド・映像を共有いたします。
ご講演いただきました、佐藤 豪 様、OGAWA SOUND代表 小川 哲弘 様に改めて御礼申し上げます。

スライド(室内・野外でのマイク収録と整音)

動画

アンケート結果

参加者によるアンケート結果の一部を掲載させていただきます。

参加登録:110名
アンケート回答:34名

ご講演へのコメントより抜粋
(室内・野外でのマイク収録と整音)

  • 本日は、ありがとうございました。普段気になっていたことが知れました。

  • 普段はゲームのボイス調整・実装を行っていますが、効果音の制作にも興味があり参加しました。貴重なお話を伺えて大変勉強になりました。ありがとうございました。

  • 実際にその道のプロが使用されている道具やノウハウが知れたのは大変為になりました。

  • 今回の講演は2回目の参加でしたがとても勉強になりました。これから就活作品でフォーリーの録音をしようと考えていたので今回学んだ録り方の向きなどいろいろ試行錯誤してみたいと思いました。

ご講演へのコメントより抜粋
~効果音を作ってみよう!~
著書『効果音の作り方バイブル』の内容を実践解説

  • 効果音の作り方バイブル、読みたくなりました。とても面白いセミナーでした。

  • とても分かりやすい動画でした。効果音の作り方バイブルは今回のセミナー中に買いました!

  • ありがとうございました。論理的に音を考えるという言葉を聞いて腑に落ちました。普段聴いている何気のない音達は、みんな理由があって聞こえているということを意識させてくれるようなセミナーでした。効果音の作り方バイブル買おうかなと思います。

  • 今回の講演とても自分の効果音制作の参考になりました。効果音バイブルを実際に自分は買わせていただいて読ませていただいたのですが今回実際にその内容を実践していただいて、さらにわかりやすかったですし、改めてすごいと感じました。

オンライン形式のセミナーについてのコメントより抜粋

  • 気軽に参加できるのでとても良いと思っています。

  • オンラインは助かります。リアルも混ぜれるとなお良さそうです。

  • オンラインだとセミナーはとても見やすいですが、懇親会に参加し難いと思っています。

  • 仕事が遅くなっても参加できるため非常に助かります。

講演者より質問の回答(佐藤 豪 様)

  • ゲームの世界観に合うUIの効果音制作方法など

A:ゲームの世界観、イメージを象徴するキーワードを考えてみてください。格闘ゲームなら「強そう」「カッコいい」「打撃」となると思いますが、SE素材は「強そうと感じるもの」「カッコいいと感じるもの」「打撃系の素材」をベースにすると世界観に合います。

スプラッターなホラーゲームなら「血」「刃物」が大体出てくるので、SE素材は「血を連想させるもの」「刃物を連想させる金属系の音」をベースに組み立てると世界観に合わせられると思います。

  • おすすめのサウンドブラウザはありますか?

A:実はそれほど重要視してなくて、sonicwire.comでSE素材を購入すると付属されるMUTANTを使ってます。
ただMUTANTは96kHz迄しか対応してないので、購入した素材が192kHz以上だとちゃんと再生されないのであまりお勧めしません。
使ったことないですが、業界的にInamon氏が制作して無償で配布している「Sound Browser」を使ってる方が多いのでこちらをご紹介します。http://inamons.com/software/soundbrowser/

  • クリーチャーボイス制作の際に声や動物の声などを加工して組み合わせるということがありますが、その音以外にも何か付け加えるということが過去にありましたらご教示いただければ幸いです。

A:もっと派手さが欲しい、規模間の大きなものにしたいという意図で爆発音か火炎系の音を足すことがあります。

ただし万能ではなく、トラやライオンなど元々低音含んだ素材で構成されてるものに付加するのは有効ですが(うまく低音を補強できる)、鳥が鳴く声の様な高音中心で構成されてるものに付加しても、音が分離して聴こえるだけになります。

  • 金属系の重い音を収録するにはどのような素材を使えば良いでしょうか?

A:オタマなど調理器具系金属をピッチを下げても重い金属音にはならず、元々重い金属である素材が必要です。
ガスボンベ、鍛冶屋の金床、筋トレのバーベル等など。手に入れにくく保管もし辛いとは思いますが・・・・

  • 録った素材について管理方法をどのように行っているか(管理ソフトなど)伺いたいと思いました。

A:基本、sonicwire.comで素材を買うと無償で使えるMUTANTを使用してます。しかしMUTANTは96kHz迄しか対応してないので、あまりお勧めしません・・・
Inamon氏が制作して無償で配布している「Sound Browser」を使ってる方が多いのですが、一度使ってみてはいかがでしょうか?http://inamons.com/software/soundbrowser/
個人的にもそのうち移行しようと思ってます。

  • 発注書がない場合の効果音を付ける場所、つけない場所の判断方法が知りたい。

A:まずは考えられる限りのSEをリストアップするようにしてください。なんならそれらを全て作って実装してみる。
そうすると無駄に効果音が多いと感じる箇所が見えてくるので、そこの優先順位の低いSEを除去することになります。
この優先順位が低くて不要になる法則的なものはほとんどなく、その時々の効果音の内容によって変わってきます。
基本、爆発音など大きなSEと、衣擦れなど小さな音なSEが重なる場合は小さい方は聴こえないので、不要になることが多いですが、
爆発音が鳴ってる中であえて衣擦れの音を聴かせたい事もあったりします。
なので、経験則的に不要なものが見えてくるまで思いつく限り作り続けてください。

  • レコーダーではなくスマホで録音した効果音も制作で使ったことはあるのでしょうか。

A:あります。ただし、スマホならではの良さというのはなく、たまたま欲しい音と出会った時にレコーダーを持ち合わせてなかったため、「取らないよりはマシ」と考えてレコーダーで録ってます。レコーダーで録れるならレコーダーで録っておいた方が良いです。

  • 最近効果音制作というものを知ったのですが、最初にやった方がいいことってあるんでしょうか。

A:アニメと映画を沢山視聴して、ゲームも沢山プレイしてください。
勿論ただ楽しむのではなく、どんな音が付いているかを気にしながら視聴やプレイをします。
特にアニメや映画は同じものを4,5回は視聴することをお勧めします。
また、未経験の学生さんという事で、恐らく機材環境もないと思うので、最低限の機材を揃えてください。DTMをやる機材やソフトを揃えれば十分です。
最初はフリーの効果音素材を加工するところから始めればよいと思います。
マイクを使った効果音制作は中級以上になるので、暫くは考えなくて大丈夫です。

  • 使用しているプラグインなど

A:私はNuendo12を使ってるので、Nuendoと表記してるものは付属のエフェクトです。
・WAVES Enigma モジュレータ
・Nuendo     リングモジュレータ
・Nuendo     ステレオディレイ
・Eventide H3000 Factory モジュレータ 
・Eventide H910 Harmonizer ハーモナイザー
・Sound particles Doppler ドップラー
・Sound particles Air 距離感シミュレーター

  • ライブラリの選び方、それの使い方、権利関係など

A:
ライブラリーの選び方
 →音質が良いかどうかが先ずは判断基準です。
  後は欲しい音があるかどうかです。
使い方
 →使い方は、例えば「爆発音」を作りたいとしたら、
  ひたすら手持ちの爆発音ネタを聴いて合いそうなものを
  数点ピックアップします。
  そして選んだネタを重ね合わせてより
  イメージに近いものに近づけていきます。
権利関係
 ライブラリーは何かしらのサイトから購入すると思いますが、
 ほぼそのサイト上に権利の詳細が記載されているので、
 「商業利用可能」と明記していることを確認した上で購入、使用します。
 様々な条件下で「商業利用可能」としてるところもあるので
 (クレジット表記必須等)、よく読んで使用する必要があります。

  • 今回のセミナーでは生音もタスカムのX8を使用されていましたが、普段の生録はどの様なマイクやオーディオインターフェイスで録音されていますか

A:普段もX8かZOOM F3を使用しています。X8購入前はZOOM F8が主力でした。
オーディオインターフェイス使用の場合、PCが必須となりますが、PCはファンなどの雑音が発生し、コントロールルームとブースがわかれてるような環境は持ってないので使用してません。
自前のスタジオ持ってれば、ハンディレコーダーではなく何かしらのオーディオインターフェイスを使ってRECする事が主流になると思います。

  • 制作する際に大切にしていること等ありましたらお聞きしたいです。

A:先ずは依頼する人(社内ならプランナー、請負ならクライアント等)が何を求めているのかを徹底的に聞き出して具現化してあげる事。依頼された中で、何が最も大事で「音」でアピールできることが何かを見極める事。 
・格闘ゲームなら剣等で打ち合ってる時の「爽快感」
・パズルゲームなら「連鎖した時の爽快感」
・ストーリー性のある映像だったら何を訴求してる映像なのか等

  • 足音を録る際のマイクの距離感の使い分けを知りたいです!

A:距離感はエフェクトで再現するので収録時は考慮してないですね。
アタック音が「パチパチ」と強く目立って録れてしまう事が多いので(特にコンクリ)、そうならないように立てる位置を考えてます。

  • ファイルの管理方法。一括で同じ処理したり名前変更したり。

A:一括で同じ処理をするのはNuendo、Sound Forgeの機能を使って行ってます。名前の変更はフリーソフト「ファイル名変更君」https://enrai.matrix.jp/rename.html 使う事が多いです。

  • エフェクトプラグインの活用法について

A:広範囲で一言で返答できませんが、モジュレーション系はかなり多用します。フランジャー、フェイザー、リングモジュレータなど。
WAVES Enigmaとかよく使ってます。

  • 今回紹介頂いたもの以外にもマイクの使い分けはどういったものを使われているのでしょうか?

A:今回のセミナーでは初心者向け、様々な方々に幅広く対応できる内容という事で機材選定しましたが、私が実際使ってるマイクは以下の通りです。
■室内
・ゼンハイザー MKH416 モノラル素材で使用
・オーディオテクニカ BP4025 or RODE NT-4 ステレオ素材で使用
■野外
・オーディオテクニカ BP4025 or RODE NT-4 割と範囲の狭いステレオ素材で使用
・EarthWorks QTC-30 ×2          
森の環境音、波など広い範囲のステレオ素材で使用

  • ビリビリやバチバチといった電気や電撃の効果音をどのようにして作るかを教えて欲しいです!もし、作られたことがなければどんな音を組み合わせて作るかなどのアイディアでも大丈夫です!

A:電撃の音は基本素材集に頼ってる部分が大きいです。
作るとしたら素材よりはシンセで作ることが多いです。アナログシンセ系よりはFM音源系のシンセの方がノイジーで倍音の多い音が作れるので、それ系のシンセで作ってます。
電撃の音に関しては小川さんが作り方を公開されてますので、小川さんのサイトなどを参考にされるのもお薦めです!

講演者より質問の回答(小川 哲弘 様)

  • 音を「収録する」のと「再現する」のとでは、それぞれどのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか?
    現場ではどちらのほうがより使われるのでしょうか?

A:「収録した音」で「再現する」こともあるので、この二つを同列に比較することは難しいのですが、現実音をそのまま使うのか、それとも代替音で再現していくのか、という意味合いでの前提で回答させて頂きます。

現実音をそのまま使用するメリットは、その場の空気感を含め現実音を切り取っているので"本物の臨場感"を表現するのに最も適しています。時間軸も固定されたノンインタラクティブな表現の場合、効果的だと感じています。デメリットは、収録にかかるコストが大きい場合があることと、デフォルメされた非現実音を作りにくいこと、複数の音で構成された音の場合、結合された状態で録音されることです。

再現することのメリットは、そうした収録のコストを下げることと、複数の音で構成された音でも要素ごとに組み立てることができるので、ある要素だけ音を入れ替えたりピッチを変えたりといったようにインタラクティブな表現にも耐えることができることです。また、思わぬ音で再現することで個性的な音が生まれやすいです。あと、再現する対象の構造について知識が深まるのでモノに多少詳しくなれます。

作りたい対象物に対してそのまま音を収録するのか、再現するのかの判断は求められる音がインタラクティブなのかそうでないかで判断することが1つの基準として感じています。

  • プリキュアの変身シーンで耳にする「ピカーン」「キラーン」「キラキラ」のような綺麗な音はどのように作れば良いでしょうか。私がシンセサイザーで作ったものは古臭い音になったり、広域だけの音になったりしてしまいます。

A:キラキラ系の音作りで私が実践している方法としましては、シンセサイザーでピッチエンベロープを使って「キュ」と「ピーン」を分けて表現したり、ベル系の音で鍵盤をなでたりして作ることが多いです。下記の動画や記事でもご紹介しているのでご参考になれば幸いです。

  • 絵に映っているものに対して写実的に具体的な音をそのまま再現するのではなく、絵には映っていないけど印象を与えるような抽象的な効果音を作る際、どのような考え方や方法で効果音を制作しているのでしょうか。
    抽象的な音は正解がないので、どういう音がそのシーンに合うのかいつも苦戦しながら制作することが多いです。

A:最近関わらせて頂いているお仕事で作ったケースでは、企画書やゲームコンセプトから導き出していくことが大事だと感じました。グラフィックでは表現されていないのですが、「切なさ」「儚さ」「壊れそう」といったコンセプトから「ガラス」を使ったり、ゲームコンセプトとしてある動物がメインイメージにあるので、その動物を連想させる音を使って音を仕上げました。おっしゃるとおり正解がないので、どうしても苦戦することになる音だと思います!

  • 今回は解説込なので効果音を作るのに30-40分かけていましたが、普段は1つの効果音をしあげるのにどれくらいの時間をかけていらっしゃるのでしょうか?

A:私の場合、キャラクターの各アクション(必殺技やスキルなど)を個別に切り分けしたものを動画で頂いて音を作っていくパターンが多いので、効果音1つというよりかは1アクション当たりで回答させて頂きます。しっかりした必殺技アクション1つに対してだいたい1時間~2時間くらいかけることが多いと思います。

  • 小川さんの刀の音が好きです。普段Foley録音時に使用されているマイクを教えて頂きたいです。
    動画の中でzoomのH5かH6?がちらっと見えました。
    刀などの金物系もzoomのH5かH6で録音されているのでしょうか?宜しくお願い致します。

A:嬉しいご感想ありがとうございます。KATANAについてはZOOMのH6で収録をしていました。今は、フォーリー系にはSENNHEISERのMKE600を主力に使っております。(テレビの音響さんから教えてもらったのがきっかけです)

  • Harmorシンセを効果音に使うやり方が非常に興味深く勉強になりました。他に仕事でよく使われるシンセサイザーはどんなものがありますか?

A:FLstudio付属の「3xOsc」、「Sytrus」、Arturiaの「Pigment」をよく使っています。他には、最近Krotosの「Concept」を購入したので、これから使っていきたいと考えています。

以上となります。