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帰ってきたウルトラマン主題歌「テイチクカバー盤」の謎 【enta】

「帰ってきたウルトラマン」は昭和46年4月から1年間放映され、第二次特撮・怪獣ブームを牽引したテレビドラマでした。
主演の故 団時朗(当時は次郎)さんが唄うテーマソングは、テレビに「ウルトラマンが帰ってきた」という映像文化史の明るい話題を象徴する伸びやかさに今でも感動します。

団さんは同作出演前に歌手として日本コロムビアからレコードを出していたことから、オリジナル盤はコロムビアからリリースされました。
以前のウルトラマン、ウルトラセブンは放映局のTBSの関連会社「日音」が楽曲管理をしてレコード発売を希望する会社に完成音源を提供していましたので、帰ってきたウルトラマンではコロムビア以外の各社は独自に歌手を立ててリリースすることになります。

そのカバー盤の数は把握しきれないほどです。

「買ってもらったけれど、テレビと違ってガッカリした」

という当時のファンの言葉はよく聞きます。私もそうでしたから。

きくち英一氏にサインを入れてもらいました

私が買ってもらったのはテイチクレコードのものでした。嬉しかったのは間違いないのですが、やはりテレビと違ったことでウルトラマンやセブンほどは聴いていなかったと思います。

やがて時が過ぎウルトラマンシリーズが歴史を重ねるにつれ、資料的視点発売されるCDで各社の音源を聴き比べるのも容易になりました。
しかし、このテイチク盤がCD収録されることがなかったのでプレーヤーにかけてみたところ、子供の頃には気づかなかったことが。

伴奏(オケ)はコロムビアのオリジナルと同じだ!

通常カバー盤は歌手だけでなく伴奏も独自のものです(例外はコロムビア自社カバーに存在します)。テイチク盤は歌手が違うだけで伴奏はまったく同じです。
1990年代末まで日本コロムビアは他社企画のCDに「帰ってきたウルトラマン」の自社音源を貸し出すことは稀でした。まして放映当時に音源貸し出しをするとは考えにくいのです。

そこでテイチク盤のジャケットを観察してみると

「伴奏 テイチクオーケストラ」との記載が!

当時は気にも留めていませんでした。伴奏を聴く限り、テイチクが編成から何から完全コピーしたとするのも不自然でしょう。
理由はどうあれ、テイチクオーケストラが日本コロムビアの「帰ってきたウルトラマン」主題歌レコード制作に参加していたのは間違いありません。

公式に主題歌フルサイズのオリジナルカラオケが他社企画に貸与されたのは1995年。

円谷プロの世界 ウルトラ★アンソロジー(ファンハウス)

ライナーノーツには日本コロムビアからの提供との記載はありませんが、カラオケだけテイチクが権利保有するのもまた不自然です。
いかな理由があれ「帰ってきたウルトラマン」の主題歌演奏にテイチクオーケストラが参加し、日本コロムビアから演奏料受領に合わせてテイチクから権利譲渡が行われたと考えるのが自然でしょう。


私の保有するテイチク盤には、「帰ってきたウルトラマン」でウルトラマンを演じた きくち英一氏にサインを入れていただいています。

『いつか団ちゃんがサインするための場所を空けておくよ』

とのきくちさんの気遣いもかなわずとなってしまいました。改めて団時朗さんのご冥福を心よりお祈り申し上げます。

★本稿の内容に関し、当時の日本コロムビアとテイチクレコードの対応についてご存知の方、また言及書籍などがありましたらご一報ください。

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