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続編映画の配信前にブレイキング・バッドを復習していく シーズン5 & ファイナル編

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シーズン5は全16話。アメリカでは8話ずつ前半と後半に別れて放送されました。前半は2012年、後半は1年後の2013年に放送。前半がシーズン5、後半がファイナルシーズンと呼ばれることが多い印象です。

前半の1〜8話。ウォルターの帝王化

前シーズンのガスの殺害に成功したウォルターのキャラクターが明確に変化します。まるで悪の王かのように振る舞い、1話のスカイラーの告白を許す様子は、どうしたってゴッドファーザーを意識してしまいます。実際8話ではゴッドファーザーさながらの、ガスの関係者10人が次々殺されていくシークエンスもあります。かと思えばマイク殺害の際の幼稚さ、身勝手さが表れる(銃は盗んでいたので計画的な面もある)感情的な行動に、キャラクターの複雑さも垣間見せます。撃ったあとに、殺す必要がなかったと気づくウォルターに、なんだよそれ、とこちらは唖然としてしまう。シーズン1の頃の共感できるキャラクターの姿は、もうありません。

新キャラのリディアとトッド

さすがにソウルやガスほどのインパクトはないですが、シーズン5からの新キャラもいい味出してます。常に小型犬のようビクビクと保身に走るあまり、気軽に人を殺しがちのリディア、健気な後輩キャラかと思いきや、殺人へのためらいが皆無という、何考えているのかが不気味な面もあるトッド。地味ですが、この二人のキャラクター造形はかなり秀でていると思います。

5話が最高

ブレイキング・バッドの魅力の一つが悪事の作戦を立てて実行する、ケイパーものの要素だと思うのですが、そのケイパー路線の中でも最も秀逸なのは5話の列車からのメチルアミン強奪の回ではないでしょうか。まず物語前半、絶対裏切ってると思われていたリディアが実はそうではなかった、というシナリオ面での優れた裏切りを見せつけ、列車からの強奪、というクラシックなモチーフに、メチルアミンを吸い出し、水を代わりに注入するという内容の独自さがワクワクさせてくれます。メチルアミンと水では重さが違うので、違う量の水を注入する、というウォルター先生のウンチクが楽しい。間に合うか間に合わないか、という定番のハラハラもきっちりこなし、無事やり遂げた、と思わせて最後の残酷な展開。そうだ。これはブレイキング・バッドだ、と改めて思います。この少年の描写が秀逸なのは、ドラマ冒頭、バイクで駆け抜ける少年のシーンの最後、かすかに列車の音が聞こえる点です。映像としてではなく、音だけでのちの展開への伏線を張っています。ここで列車を映してしまうと、のちの強奪シーンで、あ、ここであの少年が出てくるのだなとバレてしまう。そうはならない、でも確実につながっている、あとから思い返すとそういう意味だったのかとわかる、秀逸な描写です。 

後半8話。あとは楽しむだけ

ここまでくるとあとはこのドラマの終わりを見届けるだけです。存分に楽しませてくれます。ウォルターのビデオへの告白の録画は、1話と対にすることで、キャラクターの変化を見せていき、ジェシーとの対立も、もはやお家芸の域に達しています。そしてここにきてついにハンクにウォルターの正体が明かされる瞬間は、シーズン5分の長く時間をかけてきた甲斐がある見ごたえがあります。ハンクの死のシーンも、ジェシー殺害を一度は諦めたのに凄惨な結果になってしまうという、意思とは反して予想とは違う運命に巻き込まれる、というこのドラマで何度も出てくる印象的な展開です。ジェシーがネオナチ集団に拉致され、鎖に繋がれてメスを作らせられ続ける、というちょっとどうなんだという描写もありますが、最後は「ロボット」な殺害方法で派手に物語を閉じてくれます。この時は続きがなんてあるなんて思いもしなかったけど、どうなるんでしょうか。楽しみです。


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