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駅弁はエクスペクトパトローナム

普段は東京在住の私ですが、本日は大阪に来ています。
馴染みのない土地に来ると、なんだか言葉遣いまでちょっとよそよそしくなりますね。
普段は断定的な文章も、今日はちょっとよそよそしい文体で書かせていただきます。

今日は仕事の出張で来ていまして、出張の時くらい別にこんな風にnoteに文章なんか載せなくてもいいかな、なんて思ったりしたのですが、よく紀行文とかあるじゃないですか、深夜特急的な。
物は考えようで出張なんてのも一つの紀行なもんだなと思い、朝の出かけにノートパソコンを急いでカバンの中に忍ばせた次第でございます。

とは行っても東京から大阪なんて新幹線に乗ってしまえば普段の通勤電車よりも特筆すべきことはないわけで、いざこうして1日を終えようとしてみるとこれといって何にもなかったなと思ってしまいます。
まぁでも何にもなかったか、なんかしらあったかんてのは物の捉えような訳で、なんにもなかった1日をいかにもなんかあった風に、なんか思いにふけった風に書くのがエッセイであり随筆なわけですよね。
英語を日本語にして並べると文字数が稼げていいですね。

そんなわけで今日一番の思い出はなんだったかなーと思い返してみると、やはり紀行の醍醐味の駅弁に焦点が定まります。醍醐味かは知りませんが…

東京から西に、日本の大動脈新幹線に乗って新横浜から京都に向かいます。途中は東海道のカナメ名古屋を通り、そこからぼうっと外を眺めて飽きてくる頃には古都京都。八ツ橋の匂いが鼻孔をつきます。
(最近落語の道中付(旅人が長く歩き旅をする道中をリズミカルにダイジェストする話法)というのをやってみたかったのです。唐突な感じすみません。)

そんなわけで新横浜から新幹線に乗ったんですが、横浜の駅弁といったらもう言わずもがな崎陽軒のシュウマイ弁当なわけです。シュウマイなんて冷凍で出されようが、世界一のシュウマイを出されようがきっと分からないんですが、新幹線で食べる崎陽軒のシュウマイはまぁやっぱり格別なんですよ。これはうまいとかまずいとかそういうわけではないのですが、まぁなんかこう格別なわけです。わかりますかねこの感じ?わかりますよね。はい、ありがとうございます。
格別だなんていっておきながら、実は崎陽軒のシュウマイ弁当を食べるのは実は人生初だったんですね。
感想はというと、もちろん美味しかったんですが、弁当箱にご飯がめちゃくちゃくっついてね、少しストレスがたまる感じもありましね。
でもまぁ先般述べた通り、新幹線で食べる崎陽軒のシュウマイ弁当というのは格別なわけです。何が格別かって言うと、「開けるまで」なんですね。
駅弁ってのは魔法がかかった箱みたいなものんで、あの独特の紙でできた紐みたいなのを解く瞬間、蓋を開ける瞬間、ものすごい小さい醤油ボトルをチュッチュと絞り、箸を割り、口の中に食べ物を入れるその瞬間、その瞬間までが駅弁にかかる魔法の甘美なひと時に浸れるのです。
そんなほんの一分に満たない時間がエクスペクトパトローナムな駅弁体験なわけです。
一度口に入れてしまえばたかが弁当。美味いには美味いですが、もうそこから先は駅弁ではなく単なる弁当です。
(いや、本当に美味しいですよ崎陽軒のシュウマイ弁当。意外ボリュームも満点です。そなわってる竹の子の煮付けみたいなのも美味しいです。)

崎陽軒のシュウマイ弁当は800円くらいします。出張帰りにご褒美的に食べるのもいいですが、これから向かう幾多の困難のために食べるのもまた一興。そのまま出張なんかぶっちぎって博多まで突き進むのも、もしかしたらいいかもしれません。

駅弁の魔法が解けずに、いつかはそんな冒険ができたらなぁ
そんなしがない会社員の1日でした。
駅弁はそんなしがない社会人をここまで思いに馳せさせる、そんな夢が詰まった魔法の箱なわけなんです。

紀行文てこんなんじゃないですよね。

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