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全国デビューをめざさない四万十のミュージシャンに学んだ、自意識バイアスのムダさ加減


カゼから生まれた深い安堵

こんにちは。東京から高知へ単身移住したライターの小野好美です。

先日、久々にカゼをひいてしまいました。カゼは辛い。しかしながら、私は感じたのです。安心して休めることのヨロコビを!

東京でフリーで仕事をして、なおかつ一人暮らしをしていた時は、


カゼをひく

仕事ができなくなる

お金がなくなる

家賃が払えなくなる

死。


本気でそう思ってました。


でも

「風邪を引くとたいてい体が整うのです」

「風邪を引くと、鈍い体が一応弾力を快復するのです」

と野口整体の創始者・野口晴哉氏の名著『風邪の効用』にあるように、カゼは体にとって大事な行事。季節の変わり目等には体の毒素を出したり偏りを均したりするためにも、薬で抑えこまずに、そのプロセスをまっとうしたいのが本当のところです。


高知・四万十に暮らす今は、家賃のために働くところから脱却したので(だって一軒家なのに家賃4ケタという破格ぶりだから)安心して休み、スリランカの葛根湯と呼ばれる〈サマハン〉など飲んで体を温めつつ、なりゆきに任せました。そして、完治した今、また新しい時候に応じた体にシフトした感があります。

このように、安心して生きていると、自分という存在の根がどっしりしてきて、輪郭がくっきりしてくるように思いますし、何より心が解き放たれます。ふー。そうして今思うに、東京にいた時は、根っこをしっかりさせることなしに、立ち位置ばかり考えていたな、と思うのです。

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高知の人たちの“気にしない力”

例えば、私は音楽が好きで、自然な欲求として何か楽器をやってみたい気持ちがあったのですが、その気持ちに応えることはしてきませんでした。なぜか。それは、ヘタだから。

あの、初心者というのはほとんどの場合、ヘタで当たり前ですよね。でも「ヘタなのにやっている」って格好悪いじゃないですか。

ストリート・ミュージシャンで、技術がまだ稚拙なのにアンプを通して大きな音を鳴らしている人などみると「センスもないのにやってるよ」「実力ないのに夢追ってるよ」と痛い人扱いしていました。だからこそ、絶対に自分がその矢面に立つことはしないようにしていたのです(本当に痛いのはもちろん私)。

その結果、どうなるか。始めないから永遠にヘタなまま(ヘタ以前の問題ですが…)。当然すぎる帰結です。

音楽が好きな自分は、ヘタな自分を容認できない。だったら完全に聞くサイドでいい。…ってあれ? 楽器をやってみたいという当初の気持ちはどこへやっちゃったの??? 

なんというか「今スグやれよ、誰も聞いてないから」としか言いようがないのですが、一事が万事こんな調子で、どうしたら格好がつくか、そのスタンスとかバランスにばかり腐心していたように思うのです。


一方、高知の人って、私がかつて苛まれていたような自意識のバイアスが少なくて、大人だろうが素人だろうが好きなことにポンと飛び込める、そんな風通しの良さがあるような気がします。

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