「立夏から大暑へ」展示メモ(2023/8/10,11,12)

2023年8月10日~12日開催の「秘密の写真展Summer」に展示した、幅1.2mに対しておおよそ 幅80cm ほどで構成した組み写真についてのメモです。実際に展示をご覧いただいた方への解説です。
まず初めに、このメモでは実際の展示状況、展示した写真の画像はありません。理由については後程述べます。

「自然な」とは?

自然な写真を撮りたい、ということがスタートです。自然な表情やポーズとは何だろうか、と考えました。「自然な表情」というのは一体何なのか、何が「自然」なのか。

「自然な写真」を撮るにはどうしたらよいか?

人物写真では「誰を撮ったか」「写っている人物は誰なのか」に注目されがちです。被写体が誰であるのか、ご覧になった方(以下、「観客」と書きます)がその被写体を知っている場合、「その被写体の写真」ということがクローズアップされます。それを取り払うにはどうしたらよいでしょうか。私なりの一つの回答として、観客のどなたもご存じない方、モデルとしての活動をしていない、一般の方に被写体を依頼することにしました。
どのような知り合いであるか、どのようにして知り合ったのか、ということ自体が公開できない情報となりますので、一切お知らせすることはできません。事前に取り決めをして、SNSをはじめとするWebへの公開は無しで、展示会場でのみ作品を観ていただくという条件で撮影を開始しました。このメモで実際の写真を例示しない理由でもあります。

衣装とポーズ

最初の撮影の衣装について、お願いしたことは「ポートレート撮影をするとは想定していないような衣装」です。ポートレート撮影で「私服」と表現した場合は、大抵は「特定のキャラクターや、職業や立場を表現するような制服ではない衣装」というような意味となりますが、そうではない "私服"です。2回目、3回目の撮影でもシチュエーションに合わせた最適な衣装で登場していただきました。
次はポーズです。「ポーズ」はとらずに、そしてポーズについて気にしたり勉強したりしないようにお願いしました。しかしながらこれは強制はできないことでもあり、また無意識にポーズをしてしまうこともありますので、ポーズをとらないことを意識しすぎるのもまた自然ではないため、「できればお願いしたい」としました。結果は完璧で、つまり「ポーズ」はとらず、ずっと「自然」でした。

構図、機材、どちらを向いているか?

撮影手法です。自撮り棒にコンデジを付けて、背面液晶のライブビューをできるだけ見ずに撮りました。相当ラフに撮りました。たまにライブビューを「見てしまって」構図がキチンと決まったのも撮れましたが、それはそれで良しとしました。
さて、人物写真で組み写真とする場合に気になるのは人物の顔が向いている方向です。左右の向きの数や強さをある程度揃えて組むとまとまりが出ます。でも今回は「自然な写真」です。二人で並んで歩く場合に、車道側と路地側のどちらが安全であるかによって左右が変わったりするわけですが、見通しの良い管理された場所、例えば人がまばらな安全な公園の広い遊歩道を歩く時はどうでしょうか。どちらかに固定されると思います。つまり、並んで歩きながら撮影した場合、右向きか左向きのどちらかになるはずです。従って「すべて右向き」または「すべて左向き」になります。
しかしながら、展示で本当にすべてどちらかの向きにしてしまうと、写真の中から隣りの展示を見ているような印象になってしまいます。反対向きの写真を撮影するには、並んで座る時には歩く時と逆側に座って撮ればよいということになります。正面から撮ればもちろん左右というものが無いわけで、全体としては左右のバランスが取れました。

展示の方法

今回の展示スペースは 1200mmです。右側は角になっていて壁で、壁側には隣の出展者のスペースです。右側の余白を多めに 200mm として、左側も隣の出展者のスペースとなり、こちらは 150mmの余白としました。1200mmから余白の 200mmと150mmを引いておおよそ 850mm の中に構成しました。B5サイズの額を作成して、その中のマットを窓枠のように切って、1枚もの(A5サイズ)から、B5サイズ内に2枚、3枚、5枚の組み合わせで、最小は 長辺が 数センチで、35mmフィルムのコンタクトに近いサイズのものもありました。
額は木材を切り出して接着して、胡粉ジェッソで下地を塗った上に、写真に存在する色調をパステルカラーで塗り分けました。四辺がそれぞれ異なる色です。例えば、左の辺は髪の色、右の辺は背景の石積みの色、上の辺は木の緑、下の辺はデニムの色といった具合です。写真の色と額の色の共鳴です。

タイトル

タイトルは二十四節気から、「立夏から大暑へ」としました。

終わりに、感想

休日に出掛ける、なんとなくカメラを持って行く。 何かを指さしている、カメを見ている、花を見ている、フラペチーノを飲んでいる。ソフトクリーム。特急に乗って出掛ける。晴れた日の公園。水族館。魚。アザラシ。クマノミ。
ピントが外れていても、ブレていても、水平が斜めになっていても、 背景が真っ白に飛んでしまってもいい。後で見返して、楽しい時間を思い出す。

被写体となっていただいた方に感謝しています。次の展示への方向性を掴みました。ありがとうございます。








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