男にも純潔の自由を。

■プロローグ 

アメリカ英語のスラングでは
「まだ童貞」を
I still have the V-card.
と言うらしい(V is for VIRGINITY)。


こないだ知人(女性)とお酒を飲んでいた際、
ある共通の知人男性(30代)について
童貞ではないかという疑惑が持ち上がった。
(真実は知らん。知り様がない。)

「あれ童貞じゃないですか?」
と言われ、私も酔っ払った勢いもあり、
反射的に「童貞キモー!」と叫んだのだが
酔いが覚めると、ちょっと反省したのである。

「それってサベツなんじゃないか」と思ったからだ(あと童貞即ちキモイという考えも短絡的だった)。


■処女は良くて童貞はダメ?

少なくとも日本のある年齢以上の男性におかれましては
「処女」はいまだにある種の聖性をもって、
あがめられていらっしゃることと思う(ご愁傷様です)。

しかし「童貞」と聞いて
「尊い」「大事に守ってるんだな」と思う人は、
男女ともに少ないと思う。

この差は何なのだろう。

処女=男を知らない=純潔
ならば
童貞=女を知らない=純潔
となってもいいはずである。

なのに、なぜ童貞のイメージは処女に比べて良くないのだろうか。


■童貞のイメージ

私の個人的な童貞のイメージは以下のような感じである。

・厨房、ガキっぽい(年齢問わず、自意識過剰、あるいは自己を客観視できない振る舞いをする)
・不潔、身なりを構わない
・女性に対して過剰な性的妄想を抱いている
・おどおどしている、挙動不審
・自信がない、自己を卑下する気持ちが強い
・女性の気持ちや扱いに慣れていない
・とにかく女性を不快にさせる

出てくるわ出てくるわ……(笑)
反対に良いイメージは以下の通り。

・真面目
・知らないからこそ女性の望みをちゃんと聞いてくれそう、
 理解しようとしてくれそう
・初心(ウブ)
※私個人は初心が常に良いとは思わないが、まあ、初心は良いイメージに入るでしょう。
※だいたい男の初心が良いのは寺田心くんくらいの年齢までである。女もそうです。

良いイメージの方はすべて「処女」にもあてはまりそうである。

でも「悪いイメージ」の方は「童貞オンリー」である。
処女が「男性に対して過剰な性的妄想を抱いている」というのはやや当てはまるかもしれないけど(すぐなくなりますが)、、、


うーん! 根が深そう!


■それは男性への偏見?

多くの人は(男女ともに)
相手が、自分にとって不快な言動もしくは
理解を超えた言動をしたときに
「こいつ童貞じゃね?」と思うんじゃないだろうか。

優柔不断な、あるいはガキっぽい男性を見て
苛々した時に、人は
「あいつ童貞くさいよな」と
言ったりするんじゃないだろうか。

ちょっと困った女性がいたとしても
「あの子処女だよね」とはならない。処女は悪口で使われることはあまりないが(唯一、思春期の女子同士の喧嘩ではあるかもしれない)、童貞はほぼ悪口で使われる。

で、つらつら考えたのだが、
童貞を馬鹿にする風潮は
男性への偏見の裏返しではないかと思ったのである。

男のくせに〇〇もできないの?
男は涙を見せるな
男は女を守らなくてはならない
男は女よりタフでなくてはならない
…etc.

これらはすべて根拠のない偏見である。
上記が良しとされた時代があったことはわかるし
その時代はその時代で良かったのかもしれないが、、
時代によって変わるならそれは真理ではない。

なのに女性も含めた私たちの心の中には、まだ、
「男たるもの童貞などさっさと捨てろ」
という考えがあるんじゃないだろうか。

だって、もしここに「まだ処女なんです」と悩んでいる女性がいたら
ほとんどの人はその女性に対して
「何歳でもいいから、大事に思える人が見つかった時に卒業しなよ」
と言ってあげるのではないだろうか?
「処女なんてさっさと捨てた方がいいよ、守るだけ無駄!」
「誰としたって、男なんかほぼ同じようなもんだから!」と
言う人はとても少ないと思う。

それが男性に対しては、
ある年齢を超えたら
「えー! あいつまだ童貞なの?! 道理で……」
になるんだったら、それは「性差別」である。

「男たるもの童貞などさっさと捨てろ」
が正しいと考えるということは、
「男はさっさと童貞を捨てた後、沢山の女をモノにしてなんぼ(そして女もそういう男が好き)」
という女性蔑視的な価値観を認めることになる。

神話とか伝説とかで、
そういう男性が英雄視されるのもわかるし、
スパイムービーの007(womanizer!)などは大好きですが、
それは物語の中の話、フィクションだからである。
21世紀の時代に、女をUFOキャッチャーの景品みたいに扱う男がいたら、私はどん引きです。。。


■内なる偏見と向き合ってみる

男のくせに〇〇もできないの?
└男だから女だからは関係ない。
 誰かができないことはできる人が手伝いましょう。

男は涙を見せるな
└時と場合による。
 誰だって辛い時、悲しい時は泣いていいが、
 ビジネスシーンで涙を武器にするのは男女ともに卑怯である。

男は女を守らなくてはならない
└時と場合と人による。
 我々女性も、必要なときは大切な人を守る用意がある。
 多くの男性は体格や体力では優位だが、
 精神力なら女性も負けない。

男は女よりタフでなくてはならない
└タフでありたい人がタフであれば良い。
 私はタフでありたいが、
 それが女を捨てることだとは思っていない。
 

■なんでも童貞のせいにしない…(シンプルな結論!!)

先に挙げた童貞の悪いイメージについても
童貞であろうが非童貞であろうが、
「それは改めてほしい!」と思うことばかりである。

自己は客観視できていてほしいし、
女性に対して過剰な妄想は捨ててほしい。
ある程度の謙譲は美徳だが、卑屈になってはならない(自分自身に失礼)。
正しい性知識を身に付けないといけないし、
必要なときは毅然とした対応をとれるようになってほしい。

逆にビジネスシーンで強く主張ができないのが「童貞だから」では理由にならん。
童貞だろうが処女だろうがタフに交渉して良し!
そんなごくごくプライベートなんて関係ないと思う。

もし、その人が本気で
「童貞(処女)だから仕事に自信がもてない」と思うなら
それはもう仕事のために、
合法かつ倫理的な方法で、
即刻捨ててきていただきたい。

居酒屋で話していた女性も
その男性のことを
「もっと、しゃきっとしてほしいんだけどな」
という気持ちが「童貞っぽい」という発言に
つながったんじゃないだろうかと思う。

ただ、その「しゃきっとしてないこと」と「童貞」は
本来関係ない。
「しゃきっとしなくてはならない」
のは、彼が「男性だから」ではなく、
管理職という立場にあるからである。


■エピローグ

せめてセクハラの屈辱を耐えてきた我々女性は、
童貞を馬鹿にする風潮に乗ってはならないな、と改めて思ったことでした。

余談だが「30歳まで童貞だと魔法使いになれる」
という都市伝説が結構好きで、
(自虐からのポジティブ転換してるとこが好き)そうなると、彼はもしかしたら魔法使いなのだろうか?
・・・
・・・
・・・
それならそれでいいような気もする。

これからも書き(描き)続けます。見守ってくださいm(__)m