国際競争を生き抜いていく

ニュースや新聞で耳にしたことある人も多いと思いますが、多くの難民が、今だにドイツに流れ込んで来てます。

僕の住んでいたメンディヒというドイツの田舎の小さな町でさえ、
多くの難民の受け入れが義務づけされていたため、

シリアの人やアフガニスタンの人などをしばしば町で見かけました。

一度、アフガニスタン人の難民の友達に夕食に招かれたことがあり、お家にお邪魔させて頂いたのですが、

一人暮らしで、3LDK。
広いリビングに4つのコンロがある広いキッチン。
おまけにソファなどの家具付き。
家賃と光熱費などは、国からの支援によって支えてもらっているとのこと。
一人で暮らすには申し分ない環境で暮らしてました。

加えて、生活費のために月に7万円近くもらっていると言っていました。
そのせいか会うたびに新しい靴を購入していて、「もはや難民の人の方が僕よりもいい生活を送ってる…」と少し寂しい気持ちになりました。

しかし、ここで僕が話したいのは難民の人が羨ましかったいう話ではなく、

僕が語学学校で出会ったシリアから難民としてドイツに移り住んで来たクラスメイトについて話したいと思います。

僕がまだドイツのメンディヒに来てから間もない頃で、まだ右も左もわからない時に電車で片道1時間以上かけてドイツ語の語学学校に通っていました。

僕のクラスは、国際色豊かで
10人以上クラスメイトがいたのですが、珍しく皆んな各々違う国籍の人たちでした。日本、スペイン、ハンガリー、ロシア、ブラジル、イタリア、モロッコ、ウクライナ、コロンビア、インド、アイルランド、シリア などなど。

そんな環境下なので授業中はいつも賑やかでした。まだ、日本からドイツに来て間もなかった僕はクラスメイト達の我の強さと積極性に完全に押されて、消極的になっていました。
また、授業で教えてもらう文法に関しては日本の大学ですでに勉強した内容だったり、夜まで練習があって、朝早くに起きなければならなかったり、ドイツに滞在するためのビザの申請に行かなきゃいけないなどなど
正直に言うと、色々理由を付けては、たまに授業をサボってしまったこともありました。

そして、たまに授業をサボってしまう僕に対して、ある日シリア人のクラスメイトが

「何で昨日学校に来なかったの?」

と聞いてきました。

「昨日ちょっと用事があったから」

と答えると、彼は僕に

「君は学校来ないことあるけど、そんなんでドイツで働けるのか?」

と言ってきたので、

「なんだよ!お節介な奴だな!むしろ文法はお前より喋れるわ!」
と思いながらも…

「サッカーチームから少しお金をもらっていて、チームから仕事も紹介してもらえるから大丈夫!」

と伝えると

「そうか…お前は、恵まれてるな」

と一言。

「なんだよ、嫉妬かよ!」
と思っていると、続けて、彼は言いました。

「俺は、シリアから9カ国の国境を越えて、歩いてきた。」

「そして俺は今、職を探すために、そして生きるために、ドイツ語を勉強してる」

僕は金槌で頭を叩かれたような衝撃で言葉を失いました。

何という言葉を返したらいいのかわからない…
僕が今まで辛いと思ったこととか、
嫌だなぁと思っていたことが申し訳なく思いました。

そして、何よりそれを聞いて

自分の 弱さと甘さを痛感させられました。

僕は、生きるか死ぬかの環境から抜け出すために9カ国もの国を歩いて越えていくことは、これから先を考えても、ないかもしれません。

だから、僕らが弱いとかそういうことじゃなくて、理由はどうであれ

ドイツ語を勉強するという点において
気持ちの部分で、彼に完敗だったなと思いました。
「何としてもドイツ語を取得してやる!」
という強い向上心が、彼の方が遥かに僕より優っていました。

本当に僕は自分に甘かったなと…
自分の好きな事以外にも、情熱を注げる力が僕に足りませんでした。
「確かに、彼らに比べれば、これまで恵まれた環境で育ってきたかもしれない。でもそんなことは、全く一切関係なく、
飽くなき向上心を持って、ドイツ語を勉強しよう!
そして、好きな事以外にも情熱を注げるような人間になろう!」

そう強く思いました。

僕はまだまだ未熟ですが、どこにいても生きていける強い彼らに、少しでも追いつけるように頑張ろうと強く思いました。

競争に負けないように。

それから、自分のドイツ語がどれくらい成長したかは、自分ではわかりませんが、理由はどうであれ、それ以来語学学校をサボることは無くなりました。

まず文法だけ叩き込んで、語学学校に乗り込んでいた僕は、普段あまり喋らないのに、ドイツ語の文法だけはわかるので、先生、クラスメイトに、少し不気味がられましたが、積極的に参加しました。

そして、これからもこの気持ちは忘れずにやっていきます。

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