プロ・スイスリーガーに僕はなる。

僕がスイスに来る前のこと。


僕はドイツで2年間のドイツサッカー留学をしてきました。
この2年でドイツのプロ(ドイツ4部以上)になれれば、大学を辞めて、
ドイツに残ると決めていて、色々もがきましたが、目標達成できず。
泣く泣く日本へ帰国し、大学に復学しました。

当時は、日本に帰りたくないと思っていましたが、いざ一度日本に帰ってくると、家族もいるし、同じノリの通じる友達もいるし、ご飯美味しいし、サービス良いし、本当に住みやすいと感じるので、ああやっぱ日本もいいなと感じてました。

ただ僕は、日本に帰国する際に心の中で決めていたことがありました。

それは、

「俺は、ドイツに必ず戻る」


ということです。

海外留学した人の中は、僕のように考えた人も少なくないと思います。


大学に復学してからは、講義、語学勉強、トレーニング、バイトの日々。

大学の長期休暇の時には、僕が所属していたドイツのチームに戻り、リーグ戦に出てました。
しかも飛行機代はクラブが出してくれました。本当にありがたかったです。

そんなこんなで、ドイツと日本を行き来しながら、大学生活を送っていました。ある日、

日本にいる外国人のフットサルの集まりに参加していた時に

スイス人と出会いました。


スイスは、公用語が4カ国語ありますが、ドイツ語で話される地域もあり、彼とはドイツ語で話をしていました。

そして彼が僕に言ったのが、
「何で君はプロサッカー選手を目指さないんだ!君ならスイスで良いところまでいけると思うよ。」

正直、それまでドイツに戻るつもりでしたが、彼の言葉を聞いて何か腑に落ちるものがありました。


「スイスにチャンスがあるかもしれない。」


僕は、すぐさま帰り道の電車で、スイスのサッカー事情について調べました。
全然日本語での情報がない…

現在スイスでサッカーをしている日本人は皆無。

昔、中田浩二や柿谷がスイスでプレーしていましたが、それ以来、プロ・アマ両方でスイスでサッカーをしている日本人の情報は全く無し。
よって、スイスでチームを紹介しれくれそうな日本人もいなそうだなと思った僕は、とにかく日本から手当たり次第チームのホームページからメールを書きました。
しかし、どのチームも、今僕が東京にいることを伝えると「じゃあスイスに来たらまた連絡をしてくれ」と言われました。
取り敢えず、この件は保留にしとく事に。

そしてドイツまたはスイスに行くために日本で毎日のようにアルバイトして、お金を貯めました。
節約するために、4畳一間のボロアパートで生活してました。
食卓もなくて、山賊のように床に皿を置いて、ご飯を食べてました。約8ヶ月間、他のライバル達が必死で練習している中、アルバイトと大学でチームに所属するどころかボールもろくに蹴れない毎日に焦りを感じ、

何度もサッカーをやめて、日本で就職しようかなとも考えました。

だけどアルバイトの仕事上、目の前で現役で活躍するスポーツ選手たちを目の当たりにして彼らが輝いて見えましたし、感動させてもらいました。
スポーツだけに限ったことでは無いですが、人が何かに挑戦する姿には人を元気にする力があると思います。

その時に、

「スイスでプロサッカー選手を目指す」


という新たな旗を自分の中で掲げました。

お金を貯めて、スイスでツテも情報も何もないところから、取り敢えず、スイスへ旅立って、何十チームにもメール、電話で連絡を取りました。
時には、とあるチームのGMの会社に直接行って、一階の受付にいる凄い仕事できそうな女の人にまず話したら、名刺だけ渡されて丁重に追い返されたり。

どのチームに電話で聞いても、大体、すごいダルそうな感じで対応されたり。

やっぱ厳しいなぁと思いながらも、話を聞いてくれるチームは何チームかあって、スイスの5部リーグ所属FC Bassersdorf(エフツェー バッサースドルフ)というチームは、監督と電話での面接をして、なんとか、練習参加までこぎつけました。

練習参加に行く前の僕のインスタグラム。

今もレベルアップ目指して頑張ってます。ふしぎなアメめっちゃ欲しいですが。

話を戻します。

チームは5部ですが、サッカーグランドが天然芝と人工芝が2面あり
練習着も全て支給。洗濯までスタッフがしてくれて、各々、ロッカーもあって
環境としては、申し分ないチームでした。

あと、何回かのトライアウトを経験していくうちに、実際に共にプレーをしなくても、選手の雰囲気と
練習前のローカールームでの様子を観察することで、誰が上手いか、誰がチームの中心選手か、そして、チームの全体的なレベルも分かるようになるという謎の能力を身につけました。

ここまで様々なチームを受けてきましたが、このチームの全体の雰囲気は、割とはり詰めた感じで
レベルが高そうでした。この日は監督が来なかったので、ヘッドコーチが僕らの練習を視察。
ちなみにこのヘッドコーチの見た目は、肌がこんがり焼けた、

若かりし頃のアニマル浜口。

ブラジル人ハーフのスイス人でした。

練習の初めは、大体どのチームも同じようにボール回しをします。これは、FCバッサースドルフもそうでした。ボール回しは、まだまだ緩い雰囲気。ヘッドコーチの僕への視線を常に感じていましたが…

ヘッドコーチの合図でボール回しが終わり、彼が全員を集めて
その日の練習メニューやその週の試合のことなどを話した後、練習生である僕の
紹介に差しかかると思いきや、アニマル浜口似のこのコーチが僕に

「今のボール回しで何回ミスをした?」

と聞いてきたので

正直に、

「1回ミスしました」

と答えると、

「3回ミスしてたら、即退場だったが、1回ならOKだ」


と言われて、緩い周りの雰囲気に呑まれて、僕も気が緩まなくて良かったと
思いつつ、自分はこのチャンスをモノにするんだと兜の緒を締め直しました。
その後も心拍数を上げる走りの練習を行い、週末の試合に向けた戦術的な練習を行っていき、最後は8人対8人のゲーム形式の練習。

僕は、サイドハーフを任されて、とにかく得点に絡むことと、他の選手との運動量の違いを示すことを意識してプレーしました。
しかし、僕のサイドで対戦する選手が中々、素早くて、強くて粘りのあるディフェンスをしてくる。
厄介だな…と思いながら手こずりましたが、奇跡的な3ゴールと運動量で僕のチームの勝利に貢献。

後で、聞いてみるとその選手は、2018年W杯欧州予選で、

リヒテンシュタイン代表

としてスペイン代表やイタリア代表などを相手に奮闘した選手。
どうりで良い選手なわけだ…

ちなみにここで、リヒテンシュタインについて少し補足。
リヒテンシュタインは人口約3万7千人(ウィキペディア参照)の国で、
スイス、オーストリアの間に位置するかなり小さな国です。

ちなみに気になるリヒテンシュタイン代表の2018W杯予選の成績は、
グループG、6チーム中6位。
ホーム5試合、アウェー5試合の10試合中勝ち点0。
予選での総得点1点、予選での総失点38点。

頑張れ!リヒテンシュタイン!

話を戻すと

そのリヒテンシュタイン代表選手とマッチアップしました。
あまり長い時間試合を出来なかったので、もっと試合をしてアピールをしたかったですが、この日の練習は終了。
練習が終わった後、コーチに呼ばれてグラウンドで2人きりで、話をされたのですがヘッドコーチが話す言葉は、もちろん全てスイスドイツ語。
これまでドイツでほぼ問題のなかった言葉の問題に直面。
同じドイツ語なのにまるで別の言語。スイス人自身も、スイスドイツ語は方言ではなくて
自国の言語だと言う人もいるぐらい違います。

だから練習中も頭フル回転で話を聞いて、理解できない部分は選手に聞いていましたが、コーチと一対一で話すと理解できないときに聞ける人がいなかったので、肝心の内容がわからず。
僕があまり理解してないのを察したコーチは何か良い案を思いついたように、ケータイ電話を取り出して、インターネットでGoogle翻訳のサイトを開いてGoogle翻訳にスイスドイツ語を喋りかけて日本語に翻訳してくれました。しかし翻訳された日本語の意味が全然わからない。

残念そうな顔をする監督…そこにたまたま他の選手が来て、通訳を担ってくれて何とか監督の言いたいことを理解しました。
話の内容は、

これから練習に来て欲しいとのことでした。

細かい契約などの話は後ほどしようと言われました。
スイスドイツ語だったらどうしようと心配しましたが…

そして、その同じ週に


FC Red Star Zürich(エフツェー レッドスターチューリヒ)


というスイス4部リーグのチームからも連絡が。

元々そのチームディレクターの人に猛烈に練習参加をしたい熱意を何度も連絡して、結構しつこく、粘ってお願いしてて、結果何とか2軍の練習に一度だけというオプション付きで練習参加にさせてもらえるとの事。
ちなみにメールの雰囲気では、

この時点で僕をチームに加入させる気は0.1パーセントぐらいでした。


練習場に着くとロッカールームが10個以上あって、まずロッカールームの場所が全くわからない問題が発生しましたが、チームの関係者らしき人に聞いて案内してもらい何とかロッカールームを発見。
中に入ると、数人選手達がいて、監督は、もうグランドにいるとのこと。

このチームは、若い選手が多く、皆んな、プロを目指して、サッカーをしてる選手達で凄いギラギラしてました!用意された緑の練習着に着替えてグランドへ行き、グランドにいた監督とアシスタントコーチがいて、挨拶に行くと「今日は楽しんで」の一言。

「何だよ冷たいな」と少し不満に思いましたが、練習になったら関係なし。
いつも通りを意識してプレーしました。
練習は基礎的なパスの練習をして、その後はボールポゼッションの練習。
個々のレベルは、今まで練習参加してきたチームの中で一番高く、「純粋にプレーしてて楽しい!」と感じました。

しかし、ルールが複雑な練習が多くまだまだスイスドイツ語が達者でない僕は、

何度も練習中に間違えてしまい時折ちょっと気まづい感じになりました。

そして、あまり上手くいかないまま、試合形式の練習に。
ギラギラした若手選手達は、皆んな、前線でプレーしたい選手が多かったのでこの日、ディフェンスに回った僕は、この若手集団の相手をすることに。

特にマッチアップしたのは、ブラジル人ハーフの選手で、ドリブルが巧みで、素早い選手でこのチームのキーマンらしき選手。
何とか食らいついていき僕のチームは、無失点で何とか勝利。
こう言うトライアウトは勝つことだけが大事だと思えませんが、僕のディフェンス意識を示すことができたかなと
思います。

すると、練習後に監督から話があり来週から練習にきて欲しいとのことでした。

そして練習から家に着くと、FCバッサースドルフの監督からメッセージが届来ました。


チームに本格的に加入して欲しいとのこと。

まだRed Starチューリヒの練習参加があるのでこれが終わってから決めようと思い保留にしていると、次の日、
Red Starチューリヒの監督からもチームに加入して欲しいというメッセージが来ました。

つまり突然、二つのチームからオファーを貰いました。


本当に有難いことでしたが両方のチームとも、元々僕がしつこくお願いをして、練習参加させてもらったので
かなり断りづらく、どちらかのチームを断らなきゃいけないことに後ろめたい気持ちを持ちながら1日考えた結果、

FC バッサースドルフに入団する事に。

まだ目標は達成されていませんが、このチームでサッカーが出来ていること、そして挑戦させてもらえてることに感謝してます。

そして僕の挑戦を見て、誰かに何か良い影響を与えられたら、それは僕にとって冥利に尽きます。

また海外で生活を考えてる皆様、また海外でサッカーをしたいと考えてる皆様、何度も聞いてきたかもしれませんが、僕もそれを知った上で改めて言います。

言葉は、大事です


スイスドイツ語の勉強も頑張ります。

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