台本冒頭「会議は踊る」

こちらは2022年上演、妖精大図鑑「会議は踊る」上演台本の冒頭です。

「会議は踊る」はウィーン会議での話がまとまらず社交ダンスばっか踊ってる様子を批判した一言「会議は踊るされど進まず」から取ったタイトルです。話し合っても何も決まらない虚無の時間をテーマに、妖精たちが通う妖精学園達の不毛で、でもどこか愉快な学級会議を描きます。修学旅行の行き先を決めるのってなんであんなにワクワクしてまとまらないんだろう。


妖精大図鑑
「会議は踊る」

明転。死屍累々の教室。

ナレーション:そして、会議開始から七十二時間が経過したのであった。
字幕:「完」
(オープニングダンス)

【修学旅行の行き先なんて永遠に決まらない】

サボさん:弱りましたねえ…ここは妖精学園、B-104組。秋の修学旅行に向けて、話し合いを始めたものの、一向に意見がまとまらず、見事に煮詰まっているというわけですが。
ピン:説明ありがとう!サボさん!
ブルー:どうしましょうかねぇ…
ゴルディロックス:班長はどこがいい?
ブルー:いや~…どれも捨てがたいですねえ…
ピン:え、班長はどこに行きたいの?なんも意見出してないじゃないですか。
ブルー:あー…皆さんの意見をまとめるのが班長の役割なので…
サボさん:いや~でもですよ。四人の班で、三人ばらばらの案出してて、誰一人折れてないってことはですよ?もう残りの一人がどこに賛同するかで話が決まるわけですよ。どうなんです?ぶっちゃけ班長はどの案がいいなって思ってるんです?
ブルー:いや~…その…どこも素敵な場所ですよねぇ…
ピン:班長~~~
ゴルディロックス:ほんとに無いの?行きたい場所
ピン:そうそうそうそう。だって修学旅行ですよ?班長にだって、ホントは行きたい場所の一つや二つあるでしょ?
サボサン:どの山なんです?
ピン:山とは限らないでしょ!
ブルー:ええと…ええとぉ……
ゴルディロックス:シミュレーションしましょう。
サボさん:シュミレーション?
ゴルディロックス:シミュレーション…。一回、それぞれの修学旅行に行ってみるんです。机の上で。そうしたら、班長もどこに行きたいかが決めやすくなる。はず。
ピン:なるほど…それでシミュレーション。やってみましょうか。
サボさん:やってみましょう。
ゴルディロックス:ではこちらをご覧ください。(指をくるくるまわしながら)今から私が三つ数えると、皆さんは修学旅行に行きます。3・2・1

サンバの音楽。全員吸い込まれるようにはけていく。入れ違いでロボット掃除機サンバがやってくる。

全員:うわ~~~~~~~~

【サンバカーニバル①】
ロボット掃除機サンバが掃除をしている。

天の声:…サンバ…サンバ…聞こえますかサンバ…そう…あなたの中に今…心が…芽生え始めているのです…あなたは、毎日毎日掃除してくれましたね…見ておりましたよ…あなたが一生懸命掃除をしているのを…結構な勢いで壁にぶつかっているのを…ちょっとした段差に引っかかって永遠に動けなくなってしまったのを…そのまま充電がななって力尽きてしまったのも…見ておりましたよ……聞いてますか…サンバ?……うんサンバ…伊勢に行くのです…サンバ……伊勢に…向かうのです…さあ、おゆきなさいサンバ…少しの間、ここの人間に見つからないようにしましたからね……サンバ……サンバ…そっちじゃない…サンバ違う。そこは壁です…うんサンバうん…サンバ?…サンバ…

サンバが去って行く。
良きところでM CI 「森のクマさん」
三匹のクマがやってくる。

【ゴルディロックス】
字幕:「三匹のクマ」

ナレーション:あるところに三匹のクマが暮らしていました。大きいクマと、中くらいのクマ、そして小さいクマ。三匹は仲良く暮らしていました。ある日、三匹のクマは朝ごはんにお粥を作りました。
三匹のクマ:お粥だ~
ナレーション:でも作りたてのおかゆは熱々です。
三匹のクマ:あちち
ナレーション:おかゆを冷ますのも兼ねて、朝のお散歩に行くことにしました。
三匹のクマ:散歩だ散歩だ~!
ナレーション:三匹がお散歩に出かけると、どこからか人間の女の子がやってきました。女の子はクマたちのお家を見て
女の子:ちょうどいいな
ナレーション:と家の中に入りました。家の中にはおかゆの並べられた食卓があり、女の子は
女の子:ちょうどいい
ナレーション:椅子に座り
女の子:ちょうどいい
ナレーション:おかゆを食べました。ちなみにこのとき椅子を壊します。お腹が膨れて眠くなった女の子は
女の子:ちょうどいい
ナレーション:ベッドを選び一眠りすることにしました。三匹のクマが散歩から帰ると、
クマ大:あれ、扉が開いてる?
クマ中:閉めたはずなのにねえ
クマ小:あ~~~!お粥が食べられてる!あ!椅子も壊れてる~!
クマ大:ちょっと待って…誰かいるんじゃない?ハッ!
クマ中:そんな馬鹿な~ハッ!
クマ小:ハッ!……僕のベッドで誰かが寝てる…!
クマ大:え、こわいこわいこわいこわい!
クマ中:え、警察呼ぶ?
クマ小:ひえ~

ゴルディロックスが急に目覚める。間

ゴルディロックス:…………クマだーーーーーーー
クマ達:あーーーーーーーーー!

逃げようとするゴルディロックス。だが最後に振り返って、

ゴルディロックス:クマだーーーーーー!
クマ達:あーーーーーーーーー!
ピン:っていうのが三匹のクマって話なんだけど、
サボさん:え、ほんとに?こんな話なの?
ピン:ピンさんも最初は疑ってたんだけど、調べたらほんとにそうだった。
サボさん:え、ひどくない?この…人間の女の子?
ピン:この女の子がゴルディロックス!
サボさん:ゴルディロックス?
ピン:ゴルディロックス!
サボさん:音の響きがもう強い!
ピン:金髪の女の子
サボさん:ゴルディロックス…
ピン:この子の行動原理は「ちょうど良い」
サボさん:「ちょうど良い」
ピン:ちょうど良い家があったから入り込み、ちょうど良い食卓があったから食らい、ちょうど良いベッドで一眠りした。
サボさん:居直り強盗のそれなのよ。
ピン:ここから取って、ちょうどいいことをゴルディロックスと呼んだりする。
サボさん:ほんとに?
ピン:ゴルディロックス相場・ゴルディロックス効果・ゴルディロックス惑星…
ゴルディロックス:webで検索する?         
サボさん:あー…今はいいや。
N博士:選択肢をたくさん提示してくれるAIはいるけれど、正直、その「選ぶ」っていうのができないんよぉ…優柔不断はお昼ご飯食べる店選んでる間に昼休みが終わるんよぉ。という私みたいなあなたのために、「今日はここに行きたい」を決めてくれる人工知能「ゴルディロックス」君は、今日からゴルディロックスだ!
ゴルディロックス:という経緯で私はゴルディロックス。
サボさん:聞いたことない!
ピン:だがしかし優柔不断な人間にちょうどいいは作れなかった。計画は頓挫し開発中止になったのでした。カカン!



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