「競技スポーツ」至上主義

 オリンピックを長年かけて調べている。
 IOCは、ヨーロッパの没落貴族のサロンだったと思う。創始者クーベルタンも、普仏戦争などで負け続けるフランス軍を見て、「何とかならんのか」とイギリスのアイビーリーグなどを知り、団体スポーツが軍隊強化に有効だと思い、オリンピックを言い出すキッカケになっている。
 第1回のアテネ大会など、13か国程度の「運動会」に過ぎない。アメリカの参加で少しは盛り上がったが、アメリカ選手団は大学のスポーツ選手が殆どだった。
 ただ、思い付きでやってみたマラソンが、ギリシアの羊飼いが優勝したことで大いにウケた。

 その後しばらくは万国博の付帯事業に過ぎず、開催期間も「いつ始まって」「いつ終わった」かも良く分からない。
 その存在感を告げたのは1936年のベルリン大会で、「ヒットラー・オリンピック」とも言われている。聖火リレーが始まったのもこの大会で、アテネからバルカン半島を通ってベルリンに至るルートは、その後ヒットラーが進撃するルートになった。
 当時は地図が整備されておらず、実際に走ってみるのが最も有効な事前調査だった。

 第二次大戦後では、やはり1964年東京大会だろう。アジア初のオリンピック開催で、戦争に大惨敗した二ホンが国際復帰を印象付ける大会となり、テレビ中継で世界に配信される先鞭もつけた。
 近代オリンピック史上、もっとも成功した大会と言われている。その後は政治とテロと資金難に振り回され、開催候補地ゼロという危機に見舞われた。

 1980年にIOC会長に就任したサマランチの時代に、ピーター・ユベロスが主導したロサンゼルス大会で息を吹き返し、IOCの金権体質が強化された。
 そしてサッカーをオリンピックに取り込むために、FIFA(国債サッカー連盟)を迎えたことで、IOCはマフィアの巣窟になってしまった。
 彼らは「世界一集客力のあるスポーツイベントの興行師」として、ヨーロッパ以外の開催国から上納金を吸い上げている。

 2020東京大会の施設建設費など、ロンドン大会の3倍ほどに高騰している。その上納金部分は、すでにマフィアの手に渡っているはずだ。

 こんなオリンピックを日本人は無邪気に信奉している。オリンピック選手団を持ち上げ過ぎている。JOCの現役理事である、もと柔道選手の山口香が辛辣な意見を述べていた。

 スポーツは、ごく僅かな人数のプロ選手や「競技スポーツ」選手だけのモノではない。
 国民全体の健康増進、体力づくりの為にこそ有効である。オリンピック選手団の強化費用などは、フィットネスクラブや格闘技教室、ダンス教室などの「やるスポーツ」の支援に回すべきだと思う。
 コロナ対策の観点からしても、これらの「日常的スポーツ体験業界」の方が、感染予防に寄与している。

 競技スポーツなど、やりたい人間に任せれば良い。その世界だけで十分に客が呼べるし、スポンサーも確保できる。

 本来、国がやるべき施策は「日常的なスポーツの奨励と援助」である。その影響は国民すべてに渡るほど、すそ野が広い。コロナ対策の為に「休業要請」などしていたら、経済が絞め殺されてしまう。「健康増進」が最大のコロナ対策である。

 日本の、特に自民党の政治家は、土建屋的事業の利権確保にしか興味が無い。戦略特区でのカジノ誘致も、大阪万博もカネにまみれている。

 現在の日本政府がやっていることは、すべて間違っている。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?